発売30周年を迎えた「IBM Personal Computer 5150」--業界を形作ったPCを振り返る - (page 2)

Jay Greene (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2011年08月18日 07時30分

 5150の偉大なる事実、つまり、愛好家向けのガジェットにとどまっていた先行のコンピュータと違って5150がそれほど大きな変化をもたらした理由は、その作られ方にある。「Apple II」がコンピューティングの分野で進化していることに特に不安を抱いていたIBMは、競争のために急いで代替案を考え出そうとした。時間的なプレッシャーの中で、IBMはIBM製以外のコンポーネントを使って新しいマシンを構築する道を選択した。閉鎖的な企業だったIBMにとって、それはなじみのない概念だった。ただ、それにより、IBMのチームは当時の同社の歴史で最短記録となる、12カ月という期間で5150を開発することができた。

 在庫部品でコンピュータを作るという発想によって、業界は束縛から解放された。IBMはIntelの「8088」プロセッサを使用した。OSについては、IBMは当初、Digital Research Inc.(DRI)の「CP/M」のライセンス使用を求めて、DRIに話を持ちかけた。しかしここで、テクノロジ業界で伝説となっている物語が生まれた。DRIは二の足を踏み、新興企業であるMicrosoftの前に、部分的にCP/MをベースにしたOS「PC-DOS」を代わりに提供する道が開けたのだ。

 IBMのテレコミュニケーションリサーチ担当最高技術責任者(CTO)であるPaul Bloom氏は、「パラダイムに変化をもたらすには、あのような革新の口火が必要だった。それによって市場が大幅に拡大した」と述べている。

 IBMは、その後もPC業界に普及し続けているモデルを生み出した。自社のテクノロジ向け部品の構築を他社に依存するという考えは、当時では過激なものだった。IBMは時間的なプレッシャーによって、その戦略をとることを余儀なくされた。しかし結果的に、これによってニッチなコンポーネントメーカーとソフトウェア開発者が自らの専門技術の向上にお金とエネルギーをつぎ込むようになり、急速な革新が引き起こされた。

 このモデルは、IBMを組み立ての監督者へと変えた。この役割は、他社も容易にまねできることであり、ライバルたちはまさにそれを行った。それから2年以内にCompaq Computerは全く同じアーキテクチャを使って最初のIBM PCクローンを製造した。IBMは他社が互換性のあるソフトウェアや周辺機器を簡単に製造できるように、アーキテクチャを公開していた。わずか数年以内に、市場はクローンであふれかえり、IntelとMicrosoftがコンピューティング業界の中心に自らの居場所を確保した。いくぶん皮肉なことに、IBMの役割は小さくなり、市場シェアも縮小した。

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