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電子出版の実績を強調するアドビ--紙とデジタルを同時発行する事例も

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 アドビシステムズは5月25日、デジタルパブリッシング向けソリューション「Adobe Digital Publishing Suite」(ADPS)を利用して、大日本印刷と山と渓谷社が共同で電子雑誌の配信を開始したと発表した。

 ADPSは、「Adobe InDesign CS5/5.5」と連携して、制作したコンテンツを簡単に電子書籍として発行できるソリューションを提供する。今回、大日本印刷と山と渓谷社は、女性向けアウトドア季刊誌「Hutte」(ヒュッテ)の最新号の紙版とデジタル版を発行。紙版とデジタル版の同時発行は、国内出版社では初めての事例になるという。

 両社は、紙版と同時進行でデジタル版を制作する。編集会議の段階からデジタル版を想定した台割りを組み、デジタル版でのコンテンツも踏まえて取材し、同時進行で制作を進め、今回Hutte最新号のVol.3で紙版とデジタル版の両方をほぼ同時に発行した。デジタル版はiOS向けにAppleのApp Storeで配信されている。

 ADPSは、InDesignと連携することで、紙媒体と並行した制作フローでデジタル版を制作でき、InDesignのOverlay Creatorを活用して動画や音声、インタラクティブ性、ネットとの連携などの電子書籍ならではの機能を追加できる。制作は従来通りInDesignを使い、InDesign内からそのままそのデータをクラウドのADPSに保存すると、自動的に中間ファイルが生成される。編集部だけでなく、広告、外部デザイナーなどがそれぞれInDesignで制作した中間ファイルを組み合わせ、最終的にはiOS用やAndroid用の電子書籍アプリを自動的に生成できる。外部のデザイナーなど、ADPSのアカウントがない場合は無償のクラウドサービス「Acrobat.com」経由で中間ファイルを入稿できる。

ADPSとInDesignを使った制作フロー※クリックで拡大画像を表示 ADPSとInDesignを使った制作フロー※クリックで拡大画像を表示

 生成される電子書籍アプリは、App StoreおよびAndroid Marketで配信可能で、アプリ内課金やサブスクリプションにも対応。アプリ内で毎月コンテンツを更新するような定期購読としても利用できる。海外ではWired誌などでも使われており、すでに324媒体が発行されているという。日本でもゴルフトゥデイ社の「GolfToday」、amanainteractiveの「Milk Japon」などで利用されているそうだ。

ADPSを使って発行される日本の雑誌※クリックで拡大画像を表示 ADPSを使って発行される日本の雑誌※クリックで拡大画像を表示

 ADPSのエディションによってはカスタムストアにも対応し、自社ストアなどでの配信でも利用できる。カスタムストアでは、米Barnes & NobleのNook向けストアにも活用されているという。

 利用には出版社がADPSのプロフェッショナル版、エンタープライズ版のいずれかを選択する。プロフェッショナル版は、インタラクティブな機能の提供、アプリの制作、App Storeでの課金システムの利用、効果測定の利用、別サービスの「Adobe SiteCatalyst」との統合といった機能を提供し、中小から大手の出版社、カタログやマニュアル製作を手がける企業などでの利用を想定する。

 エンタープライズ版では、プロフェッショナルに加えてビューワのカスタマイズ、カスタムストアとの統合のためのAPI、出版社独自の購読管理システムなどとの接続など、より大規模なストア提供などを想定して機能の大幅なカスタマイズに対応する。

 また、印刷会社や制作会社、広告代理店など、自社でコンテンツをもたず、制作を請け負うような場合に利用できるエージェンシー版の提供も検討しているという。

 プロフェッショナル版の場合、プラットフォーム利用費として年間60万円の価格で、単体のアプリを配信する場合の提供数は無制限。基本的に定期刊行の電子書籍アプリの配信は、App Storeでの配信は難しく、アプリ内課金での配信になるため、そうしたアプリ内に定期的にコンテンツを配信する場合には、ダウンロード数に応じてサービス費用が別途必要になる。

 プラットフォーム利用費には5000ダウンロード分の料金が含まれており、さらに2万5000ダウンロードまでは年間62万5000円、25万ダウンロードまでは425万円、50万ダウンロードまでは700万円のサービス費用が必要。1ダウンロードあたりに換算すると、それぞれ25円、17円、14円となる。

 単独アプリであれば作り放題のため、例えば出版社として臨時号、増刊号、創刊準備号など、独立したアプリを配信する場合は追加料金は必要ない。そのため、まずは単独アプリとして発行してADPSの試用し、読者数を大まかに把握。本誌発行分からアプリ内課金で発行するといった利用が可能。その場合、コンテンツはアドビのサーバから配信されるため、自社でサーバを設置する必要もない。

 エンタープライズ版の場合、さまざまにカスタマイズできるため、料金はそれに応じて変動する。

 サービス提供は7月下旬から。InDesign CS5/5.5があれば、「Acrobat.com」を使って中間ファイルを制作できるため、無償での試用が可能。InDesign CS5.5の体験版も提供しており、制作したアプリをiPadで確認することができ、利用前に十分内容を確認できるようになっている。

 Hutteの制作でADPSを利用した大日本印刷と山と渓谷社では、「デジタル化することで、読者が得られる体験の幅が広がる」(大日本印刷)と強調。コンテンツ自体は紙版とデジタル版では同等だが、デジタル版では頂上からの風景をパノラマで閲覧できるようにしたり、登山服の紹介でモデルが360度回転するようにしたり、紙版とサイズが違うiPadの画面サイズで見やすいようにレイアウトするなど、さまざまな工夫を盛り込んだ。

 さらに、インタラクティブでリッチな広告配信が可能になる点もメリットで、「広告主に新しい価値のメディアを提供できる」(アドビ)としており、実際に広告主からは好評を得ているという。山と渓谷社では、「雑誌は広告の落ち込みが大きい」と指摘し、デジタル化によって広告収入を確保したい考えを示している。

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