コラボレーションからリソース提供まで、クラウド事業を本格展開するオートデスク - (page 2)

藤本京子(編集部)2010年09月06日 20時31分

 Project NeonとProject Photoflyは6月に公開した新しい無料のサービスだが、Autodeskではこの分野において「Green Building Studio」というビル内のエネルギー分析ソフトも2009年6月にクラウドサービスとして発表している。このサービスを使えば、ビルを建築する前に壁などの材質からビル内の電力消費量が分析できるという。

コンシューマー向けサービスも提供

 Autodeskのクラウドに向けた3点目の取り組みは、コンシューマー向けのサービスだ。「これまでのわれわれの製品は、プロの建築家やデザイナーに向けたものばかりだった。クラウドでは幅広いユーザー層にAutodeskの技術を体験してもらいたいと考えている」とHanspal氏は言う。

 コンシューマー向けのサービスとしてAutodeskが公開したのは、自宅内のデザインやインテリアの配置をクラウド上にてドラッグ&ドロップで実行できる「Autodesk Homestyler」だ。4月に正式リリースし、すでに100万人のユーザーがいるという。

 Hanspal氏によると、Autodeskがコンシューマー分野の製品を手がけたのは初めてではないというが、「今はウェブやモバイルデバイスが発展したおかげで、一般ユーザーにアプローチしやすくなった。つまり、コンシューマー分野に“本気で”参入するのは今回が初めてだといえる」としている。ただし、「この分野で利益を出すことにフォーカスしているわけではない」としており、Homestylerも現在のところ有料化の予定はないという。

 その他、Autodeskでは多くのクラウドサービスをベータ版として無料で提供している。これらのサービスの今後の収益モデルについてHanspal氏に聞くと、「収益を考えるよりも前に、まずは多くのユーザーにサービスを使ってもらい、利用価値の高いものだと感じてもらうことが先だ。価格について検討するのは、サービスを気に入ってもらってからだ」と述べた。

デスクトップ対クラウド

 さまざまなサービスをクラウド上で提供するAutodeskだが、同社の主力製品は現在もデスクトップ上で利用するソフトウェア製品だ。両者の違いはどこにあるのか。Hanspal氏は次のように説明した。

 「クラウドでできることは限られている。Salesforce.comが提供するサービスも、Siebelでできることの約20%程度しかできないだろう。それでもわれわれはSalesforceもSiebelも使っている。それは両者の役目が違うからだ。AutodeskのクラウドサービスButterflyでも、AutoCADの機能の約15%程度しか実現できない。本格的な3Dモデリングなどをサポートする環境がクラウドにはまだ整っていないのだ。しかし、クラウドの強みはアクセスの良さだ。3Dモデリングの実作業はできなくとも、誰とでもデータを共有できる」

 一方でHanspal氏は、このようなデスクトップ製品とクラウドサービスの違いも、「将来的には差がなくなるかもしれない」と述べる。「iPadがウェブ端末なのかコンピュータ端末なのかわからないのと同じで、今後デスクトップとクラウドも混在していくだろう。両者の良さが交わったハイブリッドな環境が生まれるに違いない」とHanspal氏は述べた。

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