ケータイと人の未来は「日本文化の中にある」--ケータイ国際フォーラムで識者が語る - (page 2)

岩本有平(編集部)2010年03月26日 08時00分

 月尾氏が携帯電話によって生まれた文化について語る一方、竹村氏は、これから携帯電話が生み出す文化をどう設計するかについて語る。同氏は漢字を例に挙げて「世界で唯一表意性を払しょくしていない文字。成り立ちを考えると、大変な(価値のある)ビジュアルランゲージの基盤でもある」とし、こういった文化資源を持っているからこそ考えられる携帯電話のあり方があると説く。「ケータイカルチャーを豊かにするためには、周辺部で僕らがどんなメディア空間に生きていきたいか(考えることが)が重要」(竹村氏)

 中村氏は最後に、ケータイをはじめとするICTが発達し、ユビキタスなネットワークが広がることで、リアルとバーチャルはどう結びつくのか、またどのような世界が待っているのかを尋ねた。

 月尾氏は、政府の主導するICT施策についての懸念を語る。「2001年に森内閣でe-Japan戦略を打ち立て、2003年に予定より早くブロードバンド化の目標を達成した。しかし何が変わったかというとあまり変わっていない。また電子自治体を利用するための住民基本台帳カードも、使われているのは1%ほど」(月尾氏)。

 つまり、インフラを作る、モノを配るといったことをするだけではなく、ICTを使った社会をどうデザインするかこそが重要だということだ。鳩山内閣でも原口一博総務大臣がICT戦略として打ち出した「原口ビジョン」(PDF)の中で、2015年にすべての小中学校に電子教科書を配布するとうたっているが、これについても「ケータイをはじめとするICTで、どう社会を作るかもあわせて発表するべき」(月尾氏)

 中村氏は今の日本の環境を自動車に例え、「自動車の場合、メーカーがある一方で、車を愛する文化がある。(日本の)ICTは車や道路を作るところで終わっていて、カルチャーを作ることまでやっていない」と課題を挙げる。

 またICTだけでなく、日本のアニメカルチャーも同様の状況だとし、「『生活空間にどう落とし込むか』が抜けている。押井(守)さんや宮崎(駿)さんのような限られた才能に依存するのでなく、情報空間や感性のインフラにどう落とし込むかをやっていくべき。それをやれば、2300年前のアレクサンドリア図書館、(約560年前の)グーテンベルクの活版印刷に匹敵する、情報文化の革命が起こる」とした。

 ケータイ国際フォーラムは2002年から開催されているイベント。京都府知事の山田啓二氏が代表を務めるケータイ国際フォーラム推進会議が主催し、京都府や京都市、京都商工会議所らで組織するケータイ国際フォーラム実行委員会が実施している。

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