「コードを見せて、もっと良くなるよ」と言える子どもが生まれる--Sugar Labsが描く未来 - (page 2)

「学習ソフトはフリーであるべき」

 Sugerには文章を編集する「Write」や絵を描く「Paint」周囲にあるコンピュータを示す「Neighborhood」、表の中から対になるものを探すゲーム「Memorize」、活動を記録する「Journal」といった機能がある。

 例えばある課題についてエッセイを書くという宿題を与えられた子どもは、ブラウザを使ってWikipediaなどでその課題について調べ、Writeでエッセイを書く。その過程で、Neighborhoodでオンラインの友人を見つけてコラボレーションし、Paintを使って絵やデッサンで表現したり、Memorizeでそのテーマについてゲームを作ることで理解を深めたりできる。Journalにはすべての活動が記録されているので、生徒は自分のSugar環境をUSBメモリに保存して持ち運び、学校、家庭など場所を問わずに学習を続けられる。Sugarではアプリケーションを「Activity」と称しており、Activityライブラリには学生向けから教師向けまで200以上のアプリケーションがある。

 Sugarが特に注力しているのがUIデザインだ。「学習に主眼を置いたデザインを目指しているが、シンプルにするというわけではない」とBender氏は述べる。UIデザインというとシンプルがよしとされることが多いが、これは必ずしも適切なアプローチではないという。「UIデザインは複雑性を排除できる。同時に、UIデザインにより複雑なことに到達するのを支援することもできる」とBender氏は語る。

 Sugarでの経験からBender氏は、色を積極的に使うことや、アイコンに一貫性を持たせることなどは良い例だと話す。逆に、右クリックやダブルクリック、ウィンドウを重ねて表示するといった「スイスアーミー的なアプローチ」(GUIの一部にアプリケーションの複数の機能を詰め込むこと)は良くない例とした。

  • Sugarにはコードを見られるソースコード表示ボタンがついている

 Sugarは誰もが自由に利用できる。Bender氏は「学習ソフトウェアはフリーソフトウェアであるべきだ。これは、フリーが大切というだけではなく、学習ソフトウェアは人間にとって基本的なものであると考えるからだ」と話す。「子どもは興味と好奇心のかたまりだ。興味は学習のきっかけになる。学習するときにはコンテンツを消費し、作成し、自分の作品を共有する。(制約のない)フリーなライセンスは必須だ」

 学習は1つのアプリケーションにとどまらない。数学と歴史が関連することもある。さまざまな要素を材料として入れるにあたって、制約のあるライセンスは足かせとなる。

 Bender氏らSugarチームがOLPCを離脱した背景の1つとして、OLPCがフリーソフトウェアという当初の方針を変えて「Windows XP」を採用したことが関係あるといわれている(Sugarチームの離脱は、MicrosoftがOLPCに参加したのと同じ時期だ)。Bender氏は当時、OLPCが学習のためのプロジェクトではなく、低価格ノートPCプロジェクトに変わってしまったことを理由に挙げていた。

 この日、Bender氏は、プロプライエタリである「Windows OS」について、フリーという必須要件を満たさないだけでなく、「1970年代のオフィスワークに合わせて開発、設計されたのがWindowsだ。いまの子どもたちが大人になったとき、オフィス環境はまったく違うものになっている」とコメントした。

 「Sugarは開発ツールのパワーと品質を実証し、フリーソフトウェアのプロセスを示した」とBender氏は語る。開発ツールを使って生まれたさまざまなアプリケーションが教育を変えようとしており、フリーライセンスのため、プログラムをコンスタントに改善するというプロセスも生まれているというのだ。実際、ある先生が作成した物理のアプリケーションを、ソースコードを見て学生や他の先生が改変する、などの例が出てきているという。「将来の世代は、与えられたコードをそのまま使うのではなく、『コードを見せて。もっと良くなるよ』と言える。批判して改善できる世代が生まれる」――Bender氏はそう信じている。

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