第1回:環境研究の手法--景気後退期に重要な3キーワード - (page 2)

田中猪夫(FatWire)2009年05月08日 09時00分

 私にはどう考えても2008年は経済が好景気であるとは思いにくかったため、景気の後退に合わせた対策、もしくは景気回復時に競争力をつけるための施策が必要と思われた。そこで、FatWireなりに景気後退期の3つのニーズを2008年2月に発売された「WebStrategy」にまとめて掲載した。以下はキーワードごとにその内容を転載したもの。

[グローバルウェブサイト]

『 キーワードを3つ挙げたいと思います。まずは「グローバルウェブサイト」。米国の金融工学からの資本主義の陰りを受け、景気のリセッションが始まり、2〜3年は続くでしょう。日本のグローバル企業は米国の経済動向に影響を受けるケースが多いですが、そのリスクを少なくするために、EU、中東、BRICSなどの顧客を少しでも開拓する必要があります。世界経済のリセッションが完了するまでに、自社のWebサイトの多国籍化(多言語化)に取り組んだ企業は、その後に同業他社との差別化が世界各地で可能となります。その手段のひとつとしてグローバルWebサイトがあります。』

[CMSによるワンソースマルチユース]

『 ふたつ目に「CMSによるワンソースマルチユース」。景気のリセッションにより、コスト削減圧力がWebサイトを構築する側に出てきます。単に更新ツールととらえ、自分の仕事が楽になるという発想からのCMS活用では企業のコスト削減圧力に対応できません。CMSにより、Webに掲載するコンテンツを印刷媒体および携帯にもワンソースマルチユースで利用でき、コスト削減が可能です。そのような投資を行うことで、日本でのリセッション完了後に同業他社との差別化が図れる基盤を手に入れることができます。』

[Webサイトのペルソナ利用]

『 最後に「Webサイトのペルソナ利用」。景気のリセッションにより商品開発からマーケティングなどのイノベーションの必要性が高まり、Webサイトも「リード・ジェネレーション/Lead Generation」という目的を明確に打ち出すイノベーションを必要としてきます。』

 [グローバルWebサイト]を構築すると、ひとつの商品のログの分析を多国籍で行なうことが可能となり、同一商品の各国の動向、キャンペーンなどの成果も世界軸で捉えることが経営者のデスクのパソコン上で可能となる。[CMSによるワンソースマルチユース]を構築すると、印刷会社に管理されていた画像なども管理することが可能になるため、将来的に今までの印刷会社でない新規の会社とも取引できることになる。これは印刷サプライチェーンにコスト競争をもたらし、コストが激減する。あるいはRIAと連携し印刷そのものをやめることもできる。

 この連載のテーマでもある[Webサイトのペルソナ利用]を行うことで、ウェブサイトのひとつの目的である「リード・ジェネレーション」の改善を行える。

景気後退期には従来手法でのリード・ジェネレーションより、ROIの高い既存顧客へのクロスセル・アップセルにマーケティングがシフトするが、ペルソナにより絞り込まれたリード・ジェネレーションはROIが高い。

※リード・ジェネレーション(Lead Generation)とはリード(見込み客)を獲得するための活動や行動。

 FatWireユーザーでは、日本で最大級の[グローバルWebサイト]を構築されたクラリオン、[CMSによるワンソースマルチユース]で大幅な改善を行ったリラックス・コミュニケーションズなどの実績はあるが、[Webサイトのペルソナ利用]は日本では実績が少ないためFatWire日本法人が自ら投資を行い実証実験を行っている。このプロセスと結果が「実践 ペルソナマーケティング」の連載である。

 次回は従来のマーケティングとペルソナマーケティングの根本的な違いについて実例でまとめる。

FatWire株式会社代表取締役田中猪夫

1959年岐阜県生まれ。1983年、米国ソフトウェアをベースにしたVAR(Value-added reseller)を設立。1990年代、イスラエル製ソフトウェアの日本市場へのマーケットエントリー、および日本からのイスラエルハイテクベンチャー企業への投資事業に尽力。2002年からコンテンツマネジメントの分野へシフト。divine日本法人を経て、2003年、CMSベンダーFatWire Software(Mineola, NY)の日本法人FatWire株式会社の代表取締役に就任。「B to B ECが会社を変える」(技術評論社)など18冊の著書あり。システム工学を専門とする。

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