決算書だけでは会社の実態は掴めない--経営管理ツールとしての会計の接し方 - (page 2)

 石黒氏が粉飾決算の手順として紹介したのは、繰越欠損金の例。たとえば未払いや未入金分を次年度に繰り越すことにより、損益決算書や貸借対照表の利益は簡単に歪めることができる。それ以外にも、固定資産の減価償却費を計上しなかったり、借入金や利息を経費として計上するか否かによって、数字は微妙に変化し、利益をよく見せることができる。

 しかし、同じ条件で手直ししても、収支に相違が見られないのがキャッシュフロー計算書だ。企業会計においては、損益と現金の収支は必ずしも一致するわけではなく、現金の流れで企業の経営状況を示すのがキャッシュフロー計算書の役割だ。「利益と現金は異なる。会計は、損益決算書や貸借対照表だけでなく、その背後にある事実に目を向けることが重要。決算書だけに騙されては企業の経営の実態が見えてこない」と石黒氏。

会計にも重要な「PDCAサイクル」

 また、一般に経営に重要とされている「PDCAサイクル」。これは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認・検証)、Act(改善活動)のサイクルにのっとり、経営活動を永続的に循環させていくという考え方だ。石黒氏は会計についてもこのPDCAサイクルに沿うことが必要だと話す。具体的には、予算書の作成から月次決算書をまとめ、それを分析、次の予算書へとつなげていくという一連の流れを意識することにより、会計を経営に活かすことが可能になる。

 さらに、石黒氏は日ごろから予算管理をデータベースで管理することを勧めている。「決算書を作成する前では遅い。データベースで普段から管理しておけば、無駄がある部分を即座に把握できるメリットもある」。

 最後に、会計との付き合い方の心得として「過小評価したり、過大評価したりせずに、“経営ビジョン”を達成するためのツールとして役立てることが重要。ただし、ツールを使うことが目的とならないようにしてほしい」と注意を促した。

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