佐俣:次はみなさんが今後何をしていきたいのかについて聞いていきたいと思います。
碇氏:近いうちにWebサービスを開発している人たちと、ビジネスの縛りを考えずにみんなで楽しいことを作ろうという話で盛り上がっています。
コミュニケーションに軸を置いて、さまざまな分野の人達が連動して仕事をするような場所ができれば面白いと思ってます。アマチュア同士、プロ同士、またはアマチュアとプロが組んで新しい何かが生まれてくる。そこから日本のWebをもっと面白くしていきたいです。
渡邊氏:最近、ITの変化が激しいと感じているので、人間を軸とした100年後にも通用するものを作っていきたいと思います。人間の感覚に通じるようなシステムということですね。
田尻:ITリテラシーの話が出ましたが、IT化するだけでビジネスが成り立つものもあります。リテラシーのレベルが一般的に足並みそろう日も遠くないと思います。その時代が来たとき、価値が出せるような自分になっていたい。ITのインフラがある世界で世の中に何ができるか、やはり楽しいことを常に提供できる立場でいたいです。
渡邊:僕らが生き残れる世界をどうしたら作れるかも課題ですね(笑)
田尻:自分が楽しいと感じるビジネスを追及しても、それが経済活動とリンクしづらいという問題には取り組んでいかなければならいですよね。
今はITを活用したWebサービス関連の経済波及効果は経済全体の規模から比べると低いのに、メディアがそれらを大々的に取り上げてくれていますよね。でも、市場規模が大きいところで ITが、 うまいこと活用され始めたら、ITによる経済波及効果は桁が1つも2つも変わってくる。
ITの生み出す価値が全く異なる見方をされる日はそう遠くない未来にやってくるでしょうから、そうした現実的なビジネスの側面からITを見ていくことが重要になってくるでしょう。
碇氏:わたし自身としても、Webサービスをどのようにマネタイズすればいいのかというのは今後の課題です。サービスの提供のみで食べていくことは難しいですから。でも、そこが将来、IT業界が成長する否かのカギとなるのでしょうね。
田尻氏:そうですね。それにはもっと大きなディールでITを考えなければならないでしょう。
日本は産業構造が縦割りで、ITも縦割りで括られている。だから横の連携がなく、業界同士のリレーションがない。ただ一つの業界だけにとらわれていると、本当に面白いものを作って価値の最大化を図るのはなかなか難しく、小金を稼ぐため、という感じになってしまいますが、これでは面白くないですよね。そうならないためにも、世の中全体で変わっていかなければという志が日本全体で必要になるでしょう。
佐俣:ベンチャーキャピタルも面白いものを追及する人が少なくなったと言われています。業界全体としても閉塞感があり、模索している状態なんです。投資側は「面白いものつくるヤツいないよね」と呟き、投資される側も「まともな投資家いないよね」と不満を言う状態。
双方が文句を言うようなデフレスパイラルのままではいけないと思っているんですよ。しかも、双方が「いい技術」「海外志向」と口をそろえ、自分たちを否定することにもつながる環境の中で働いていて、本当に楽しいのかなと。起業することの本当の喜びはそんな環境の中にはないんじゃないかな。
渡邊氏:ベンチャーキャピタルもいい起業家や技術者を探そうとしてないんじゃないかな。会社がないと投資ができないというけど、最近ではWebサイトに投資するという話も聞きます。これからは個人に投資するという時代が来るかもしれませんね。
佐俣:日本はその仕組みづくりができていないのが現状なんですよ。シリコンバレーにはスーパーエンジニアとかすごい目利きのできる投資家など優秀な人材がたくさんいて、それらが自然と結びついていくような仕組みがあるのですが、それが日本にはない。
碇氏:わたしも独立してまでビジネスをやりたいと思わないのは、シリコンバレーのようなビッグドリームがないからかも。もっと日本でもシリコンバレーのようなビックドリームにつながるような仕組みがあると実感できれば考えも変わると思うんですけど。
佐俣:でも、ネットからプロの歌手が生まれてくるように、市場とネットがもっとつながって、ネットを通じて優秀な人材が排出されることの社会的価値がもっと高くなるといいですよね。社会的に価値のあることに対してお金が付かないのは、どう考えてもおかしい。
日本における起業家を支える基盤が脆弱なのは、さまざまな問題に起因しているので、一言でどうこう言うことはできないでしょう。でも、「ライブドアショック」の反省からIT業界が技術に固執しすぎる傾向が薄まり、より多くの人が「人に近づいてきた技術」を技術としてしか捉えるのではなく、もっと広い「人間の限界を超えるための存在」としてITに接するようになってくれば、業界の人たちが何となく持っている閉塞感から脱出するための一歩になるのかもしれませんよね。
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