「このような創造的資本主義によって、ビジネスにおける専門知識と発展途上世界のニーズとをマッチさせ、すでに存在しているにもかかわらず未開拓のままになっている市場を見いだせる」とGates氏は話す。「ときに企業が途上国で十分力を発揮できない事態が生じるのは、需要がないとか、ましてや資金不足のためとかではなく、その市場が何を必要としているかの理解に十分な時間をかけていないからだ」
途上国のためのこうした仕事は、最終的には企業や個人に金銭的利益をもたらすかもしれないが、このような仕事から得られる第一の報酬は、評価と喜びという形でもたらされるものだ。
では、どのようなメリットがあるのだろうか。何よりもまず、北米、欧州、および一部のアジア地域に蓄積された才能が新興地域に向けられることで、極度の貧困に陥っている何十億という人々の生活改善に役立つ可能性がある。今さらという感じもなくはないが、これがメリットなのは明らかだ。
さらに、個人としてのメリットもある。私がこれまでに出会った、アフリカやラテンアメリカで働いた経験のある数十人の人たちから判断するなら、さまざまな問題を改善する方法を見つけ出す仕事は、たとえば、ハンドヘルド機のマーケティングキャンペーンの活性化に6カ月間取り組むような仕事よりも、はるかにやりがいがあって面白い。自分の人生を振り返ってみてほしい。もっとも鮮やかに記憶しているのは、短期間であっても、普段とは違う状況のなかで、何か途方もないことに取り組んでいたときのことではないだろうか。
それに、利潤だけを求めたいと思っても、西欧諸国にはあまり選択の余地がなくなりつつある。出生率は、先進国では伸びがなくなっているのに対し、新興地域では依然上昇している。食料不足、地球温暖化、長期的な干ばつ、それに経済的機会の問題で、現在すでに北アフリカからヨーロッパへ、そしてラテンアメリカから米国への人々の流入が拡大している。この状況を変えない限り、伝染病や社会不安といった向こうの世界のことだと思われている問題が、われわれのもとに戻ってくることになるだろう。
寄付をしたり従業員が慈善活動に取り組む機会を与えたりすることは、たとえ将来的には採算が取れるとしても、会社設立の趣旨に違反することになると批判する意見もある。企業は株主の利益を最大化する必要がある。つまり、利益率の高いプロジェクトに取り組み、利益は配当に回す必要があるというわけだ。
しかし、企業の役員に課せられる受託者としての義務は幅広い。余剰金は1セントでも利益拡大のために費やさなければならないという決まりは現在にも過去にも存在しない(そんな決まりがあれば、企業のロビーに絵が飾られたり、ピカピカの応接エリアが作られたりすることはない。ミカン箱が置かれ、天井から裸電球が吊されることになるだろう)。この点で、自由市場絶対主義者たちは完全に間違っている。
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