当コラムでも、約半年前の2007年3月6日付で「苦難続きのソニー、株価上昇の背景に金融会社上場のうわさ」として報じたソニーの金融子会社、ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)の上場承認が正式発表された。サブプライム・ショックによる株価低迷が尾を引く東京株式市場に今年最大の大型のIPO(新規公開)の浮上ということで、市場関係者の注目を集めている。
“虎の子”ともいえる有力子会社の新規上場は、ソニーにとって、あるいは東京市場にとって、果たして吉と出るのか凶となってしまうのか。
東証は4日、ソニーの100%出資子会社のSFHの株式上場を承認したと発表した。SFHはソニー生命保険、ソニー損害保険、ソニー銀行の金融3社を傘下に抱える持ち株会社。
上場市場は現時点で未定だが、上場後の想定時価総額の大きさなどから常識的に考えて、東証1部上場となる見通しだ。上場予定日は10月11日。
公開価格は10月1日に正式発表されるが、今回の新規上場に伴う公募・売り出しによる資金調達額は、想定発行価格の41万5000円で試算すると3610億円程度に達する。内訳は、公募7万5000株、売り出し72万5000株。さらに、需要の状況に応じてオーバーアロットメントによる追加売り出しを上限7万株の規模で実施するケースもある。上場による市場からの資金吸収額は2006年11月14日に東証1部に新規上場したあおぞら銀行の3799億円に次ぐ大規模な上場となる。主幹事証券は野村証券、JPモルガン証券。
ソニーでは、新株発行で得た資金は、ソニー生命などのシステム構築の投資に充てると同時に、経営の機動性を高めることも狙っている。また、売り出しで調達した資金は、エレクトロニクス部門の投資に振り向ける方針だ。
ソニーの収益構造は、構造改革の継続に伴って、従来のゲーム部門依存から、主力のエレクトロニクス部門で利益をあげる体質へと徐々に改善が進んでおり、今後はデジタルカメラや、ソニーが次世代テレビとして開発を進め、年内に小型サイズ(12インチ程度)の商品化を目指している有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の事業育成などに資金が充当されることになると思われる。
SFHの2007年3月期の連結業績は、営業収益7592億8000万円(前期比0.1%増)、経常利益183億5400万円(同27.7%減)、純利益100億2100万円(同13.1%減)となっている。ソニーの業績が苦しかった時期に、当時の金融部門の利益が全体の連結業績に大きく貢献した時期もあった。
今回この時期にソニーが金融子会社の株式上場に踏み切った背景について外国証券のアナリストは「長期間継続してきた構造改革がひと区切りついて、本業のエレクトロニクス部門に資金を充当して本格的な立て直しを図ろうという意図が感じられる。ただ、純粋に金融会社の上場という視点から考えれば、金利や株価の動向から判断して必ずしも適切とはいえない」としている。
想定売り出し価格と上場後の発行株式数を掛けると、時価総額は9344億円となる。また、上場後にもし、株価が上昇すれば、時価総額が1兆円を大きく超える可能性もある。上場後もソニーのSFHに対する持ち株比率は60%を超えるため、上場による保有株式の含み資産は膨大なものとなる。
ただ、サブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した世界的な金融市場の収縮懸念に伴う世界同時株安が進行するなかでの、巨額な市場資金の吸い上げを伴う上場については、全体相場へのマイナス影響を懸念する見方も出ていることは確かだ。
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