そんな環境で開発された同社の検索エンジンの特徴は、通常のキーワード検索や絞り込み検索とともに、類似ワードを検索できる点にある。このサービスは、山内氏が大学院で開発した技術が下敷きになっている。現在、同社は、この特性が活かせるECサイトにターゲットを絞って、突破口を探している。
「コトハコ商品検索エンジンは、ウィンドウショッピングに近い感覚で商品を探せます。予算や、メーカー、色、サイズ、ブランドなどの属性で絞り込んだり、類似商品の検索ができるんです。なおかつ、レコメンデーションもパッケージ化されています。日立製作所と国立情報検索学研究所がGETA(汎用連想計算エンジン)という似たコンセプトの検索エンジンを開発しましたが、アマゾンや楽天、ヤフーにはない機能です。実績としては1000万件、理論的には、40億件クラスのデータを処理できます」
2006年までは、検索機能の開発を中心にやってきたが、今年からより表に出て、アプリケーションの開発にも踏みこんでいきたいと山内氏は語る。フロント部分を他の企業に任せると、決定権がどうしても弱くなってしまうからだ。
すでに、コトハコのASP型検索エンジンは、スポーツ専門ECサイト「サポトマ」やアウトドアECサイト「ナチュラム」が導入している。ECサイト側からすれば、商品情報のデータベースから検索語などの保守管理に手間とコストをかけるよりも、商品情報を渡すだけで商品検索に関するあらゆるサービスを提供してくれるコトハコは魅力的だという。
さらに今後は検索に留まらず商品を露出していく商品版アドセンスも試みる予定だという。
「1〜2年かけて、検索エンジンを開発できたので、これからは、よりサービスとして導入してもらえるように営業していきたいと思っています。
ウェブページやブログサイト、RSSとのマッチングもできるので、たとえば、それぞれのブログに最適な商品を自動的に勧めてくれるブログパーツをつくることもできます。
ECは商品の検索結果の表示でカスタマイズが必要になるので、それを打ち出していきたいと思いますね。
ヤフーや楽天との違いは、例えるなら、向こうは大名がいてそこに各店舗が上納しているようなイメージとすると、私どもは農協です。クライアントさんは、あくまでも自分の土地、すなわち独自ドメインで自分のお店として運営できる。でも実は農協って、すごく儲かっているわけですよね(笑)」
さらに、類似検索の技術を生かして、ECサイトの商品検索機能をすべてASPとして提供できるような共通プラットフォームも模索中だ。
「ECサイトを運営する各社が持つ商品情報をデータセンターとして持ち、その中に検索エンジンを入れておけば、ECサイトの運営者がデータをAPI的に引き出せるのではないかと。構内配線でいけるので、高速通信環境ができる。データセンターは、いままでは単なる場所貸しという感じでしたが、徐々にアプリケーション機能が導入されて、ホスト結合でつながっていけばデータセンターのなかがグリッドコンピューティングの世界になっていくはずです。そのへんが面白いんじゃないかなと考えてますね。ほかにも、いろいろ話したいこともあるんですが、乞うご期待ということで」
実際にコトハコの商品検索エンジンを導入しているECサイトに話を聞くと「新製品を仕入れても、検索に引っかからない。商品検索エンジンのメンテナンスを自社でやるのは大変なんです」との声。山内氏は学問として検索エンジンに取り組んでいたが、利用者のニーズをきちんと拾い上げて事業を興した。「検索エンジンはコアのアルゴリズムも重要ですが、ビジネスモデルも大事」という言葉が印象的だった。
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