技術と企画力の両輪でモバイル業界を支える--エイチアイの次の一手 - (page 3)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:加藤さこ
2007年06月14日 14時45分

ライセンス収入だけに頼らない経営へ

――創業当初は受託開発が中心だったようですが、現在は。

 現在は、MascotCapsuleのライセンス販売が主力ビジネスになっています。MascotCapsuleを搭載している携帯電話端末の出荷台数に応じたライセンス料を得るというモデルです。その他に、コンテンツプロバイダーと共同で3Dを使ったコンテンツやサービスを開発したり、機器にMascotCapsuleを搭載する際にコンサルティングをしたりして収益を得ています。

 このように、エイチアイは3D技術だけでなく、コンテンツ開発をはじめとしたサービスに対しても真剣に取り組んでいます。技術だけでは、それを使ってどんなサービスが展開できるかを描ききれなくなる可能性があります。しかし、エイチアイはゲーム会社から単に開発を受託するだけでなく、エイチアイの技術を使ってどんなことができるか、売上を伸ばすにはどういうビジネスモデルが良いかという提案までをしています。これは技術とサービスの両方をわかっているからできることなんです。

 現状、売上の内訳はライセンス販売が7割、アプリケーション開発が3割と、圧倒的にライセンス販売が多いのですが、今後はアプリケーション開発での売上を伸ばしていく予定です。

――現在はライセンス販売のミドルウェアの会社という印象が強いです。

 携帯電話の買い替えサイクルは、今後長期化していくでしょう。買い替えサイクルがだんだん長くなって新しい端末が売れなくなれば、ライセンス料を得られなくなってきてしまいます。この問題を解決するためにも、アプリケーション開発からの収入は、非常に重要になってくるわけです。

 たとえば、ある技術を用いてエイチアイが提案した「仕掛け」が広告のリーチ率を高めた場合、広告売上の一部を得るのは可能だと思います。このように、アプリケーション開発についても収入源を多様化させていきたいと思っています。

 上場後、サービス事業者からの問い合わせが非常に増えています。サービス事業者はエンジニアリングのプロではないので、技術者との連携は不可欠です。サービスにも明るく、ビジネスモデルを含めた提案ができる、これがエイチアイの強みになります。

――今後の事業戦略は。

 まずは海外の業績を伸ばすこと。すでに売上の25%は海外から得ていますが、今後、携帯電話の高機能化により、さらにコンテンツ市場は急速に拡大していくでしょう。海外展開においては、いかにコンテンツ市場を盛り上げていくかが鍵になります。海外のゲーム会社と連携して3Dコンテンツ市場を確立することでMascotCapsuleの浸透を図っていきます。

 競合となる企業は国内にはありませんが、海外では現在、2社あります。しかし、いずれも処理速度の高い端末でなければ満足に動きません。エイチアイは高機能でない端末でも動くエンジンを持っているので、それが他社との差をつける強い力になります。

 もうひとつの大きな戦略としては、ビジュアルエージェントの世界を作っていくことが挙げられます。一般的にはコンシェルジュといった方が分かりやすいですね。現在は、たとえば電話がかかってくると3Dのマスコットが表示されるといったものですが、これをさらに進化させて、マスコットが情報を伝えてくれたり、自分の代わりに何かやってくれるというものにしていきます。

 ビジュアルエージェントの世界を「缶コーヒーの買い方」を例にして説明してみましょう。これまでは、缶コーヒーを買うためには自分でお金を持って自動販売機のところに行き、お金を投入して銘柄を選ぶ必要がありました。これがエージェントの世界になると、自販機がどこにあるか知らなくてもよくなり、好みを伝えれば銘柄指定も必要ありません。お勧め品を買ってこさせることも可能です。つまり、PCや携帯電話でアプリケーションの存在や使い方を知らなくても、目的が明確であれば実行できるようになるわけです。

 携帯電話の世界では、ディー・エヌ・エーの「モバゲータウン」のように、一般サイトがポータル化して市場を牽引する時代が来ています。サービスに強い技術会社のエイチアイは、そういった企業に技術を提供し、サービスの高度化に貢献していくことができます。OSなどの大がかりななものを作ることは、現在のところ考えていません。便利に使えて面白いものに目を向け、今までなかったものを生み出すべく、さまざまなプロトタイプを作ってきます。小さく生んで、大きく育てていく方針です。

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