デザインから見るデジタルプロダクツ--第7回:NTTドコモ「P703iμ」(パナソニック) - (page 2)

インタビュー・文:木村早苗2007年05月17日 12時44分

カラバリではない素材バリエーションを実現した塗装技術


--3種類すべて異なる素材感ですが、塗装はどのように行われたんですか?

リー 本体の素材にはステンレスを用いているのですが、実はステンレスって特質的に安っぽい色になってしまうので、塗装に向かないんですよ。でもそこを技術で乗り越えたんです。黒は車の塗装用技術を応用した特殊印刷技術だし、シルバーもステンレスの鏡面研磨加工に特殊技術を使っています。漆っぽい深い赤は、従来では出せなかった色合いですね。

 ちなみにバーガンディレッドは、一見すると赤と黒の配色なんですが、黒く見える部分は実は濃赤なんです。太陽光で見ると赤みや混ぜてある金属粒子が見えます。そういった色味のバランスも、現場で立ち会いながら調整しました。

 何よりステンレス素材の携帯電話自体が初めてですから、チャレンジばかりで大変でした。でもきちんとデザインしてあげないと、製品にはなるけれど商品にはならないので……。ちなみに、カーボンも漆も実物を買ってきて「本物を表現したい」ってところからのスタートしたんです。たくさんのデザイン案と技術のノウハウによって初めて、この質感が生み出せたと言えます。

カラーバリエーション 左から「グラファイトブラック」「クロムシルバー」「バーガンディレッド」の3色展開。塗装が難しいとされるステンレス素材を使用したにも関わらず、素材感のある美しい仕上がりとなった

社内議論は最終目的地にたどり着くための過程


--コンセプト作りから完成まで、デザイン全体でどのくらいの期間をかけられたんですか?

リー 開発期間は企業秘密です(笑)。最も難しいのは方向性の絞り込みと、質感表現の目標を設定するところまででした。

--スリムボディといい、質感の異なる塗装といい、チャレンジの多いデザインですが、技術側とのすり合わせが大変だったのでは?

リー すごく揉めました(笑)。従来にない素材や表現ばかりでしたから、実現性の面ではリスクが大きくなりますからね。 でも議論するのはいいことですよ。専門領域があるからこそ議論が出来るんだと思いますし、最終目的地に辿り着くための欠かせない過程なんだなと。

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