野田氏:私は創業時の状態を知らないので、これまでの経緯を聞き、想像しながら3カ月間、会社を見ることに注力しました。
そのときに感じたのは、創業者のパワーの強さです。どこの会社でもそうですが、特にネットサービスの会社は自分達の手を実際に動かして作っているので、誰よりもサービスに詳しく、想像力が豊かです。これは津田だけでなく、創業時のスタッフ全員に当てはまります。
7人なら背中を見せればついてこれたことでも、20〜30人の規模の組織になれば、もっと明確な説明が必要になります。頭の中で描く構想を伝えるために、紙ベースに落とす、というのが最初のミッションでした。
津田氏:野田にコーチングを受けて、頭の中に描いたものをドキュメントにするようになりました。社員と共有する役割を野田がやってくれるので、これまで以上に「サービスを作れる組織」を作りたいという気持ちが大きくなりました。
フォートラベルは、「旅行記」を中心としたクチコミサイトだと思われている感が強いのですが、本来は旅行者にとって利便性の高い全般的なサービスを提供していきたいというコンセプトが軸にあります。
旅行者だけでなく、旅行関連商品を供給するサプライヤー側にもニーズを満たすサービスを蓄積し、旅行者とサプライヤー、航空会社や旅行代理店、すべてを結びつけるプラットフォームを作りたい。これが会社設立当時からの目標でした。
規模が大きくなってこれを忘れていた時期もあったのですが、野田のコーチングで何がやりたいのかを明確にし、引き出してもらうことができました。
現在はユーザーが作るコンテンツ、いわゆるCGCが99%を占めています。ソリューションを満たすためには、現地の地図、通貨、現地の店舗情報など、客観的な情報をフォートラベルが提供していく必要があります。また、旅行商品の情報や現地のレストランのメニューなどは、サプライヤーから提供してもらうことが可能です。
主観情報、客観情報、商品情報──このすべてを網羅し、旅行のデータベースを作っていくのが今後の目標です。
津田氏:なぜ情報を集めるのかというと、検索技術があまり発達していないからなんです。旅行関連情報を網羅した見せ方は、現時点のグーグルを持ってしても無理です。将来、検索技術が発達したら、中に取り込んで集める必要はなくなるかもしれません。ただ、あと5年、10年はお話した方法で進める方が適切だと思います。
野田氏:データベースに依存するのではなく、ニーズを満たすことが重要です。ニーズを満たせるなら手段は問わないというわけです。最先端の技術を積極的に使っていないので、当社のサービスは地味に映りますよね(笑)。ただ、世の中の技術に飛びつかないことは大事だと思います。静観していられる余裕を持ち、取り扱える技術になったところで取り入れていけばいいんです。
津田氏:たとえば、Web2.0では「情報発信の仕組みはwiki」などの発想にこだわってしまいそうですが、利便性の面でwikiでは集めにくい情報というのもあります。重要なのは、はじめに技術ありきではなく、「技術が旅行と組み合わさったら、どう役に立つのか」という発想なんです。ニーズがあってこそのサービスで、技術ありきではないんです。
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