すべてがネットにつながり、多様なコンテンツが溢れる今の世界では、製品を消費者に届ける方法は1つとは限らない。その事実をコミック業界も受け入れるべきだと考えるのは、Saffel氏だけではない。
Flying Labs Softwareの最高経営責任者(CEO)であるRussell Williams氏は、「コミック愛好家には2つのタイプがある。コレクターと、純粋にコミックを読むことを楽しむ人たちだ」と語る。Flying Labs Softwareは、今後発売予定のオンライン対戦型RPG「Pirates of the Burning Sea」のベータ版を持ち込み、デモを披露していた。Williams氏は、懐かしい「スパイダーマン」のコミック数百冊分のデジタル版を収めたMarvel Enterprises製DVDの展示を指さして、このDVDのおかげで、飛行機に乗るときも2500冊のコミックを持っていけるようになった、と誇らしげに話していた。
Williams氏によると、デジタル時代の到来は、コミック業界の前にまったく新しい可能性の扉を開いたという。コミック本のコレクションを維持管理する場所や「時間がない人についても、市場が対応できるほどに、テクノロジが進歩した」とのことだ。さらにWilliams氏は、コミックのデジタル化が、これまでは書庫にしまっておくしかなかった古い作品に触れる機会を愛好家たちに与えてくれるだろうと指摘している。Williams氏の予測が正しければ、これによって、コミック愛好家市場の新しい側面が開かれることになるはずだ。
一方で、Williams氏は、新メディアの登場で紙に印刷されたコミック本を扱う商売がなくなるとは思っていない。「何がどうなっても、収集家は存在し続けるはずだ」(Williams氏)
ソフトウェア企業のCEOという立場を考えれば、Williams氏が、テクノロジがコミックに及ぼす影響について肯定的なことを言うのも当然と言える。だが、Williams氏以外の人は、状況はもう少し不確定だととらえているようだ。Metropolis CollectiblesのVincent Zurzolo氏に、テクノロジがコミック業界に及ぼす影響について尋ねたところ、「コミックの売り上げについては、小さいが確実に影響があるだろう」との答えが返ってきた。ただしそれが大きな脅威になるとは思わない、とのことだ。
「すべての作品が再版されるわけではないので、古本市場はなくならないだろう」とZurzolo氏は言う。
Zurzolo氏の指摘は的を射ている。悲しい話とも言えるが、従来型のコミック単行本が生き残る道は、その金銭的価値にあるのかもしれない。こればかりはオンラインメディアやソフトウェアの世界にはまねできないからだ。「(古本市場には)投資という要素がある。将来、金儲けをしようと思ってコミックを集めるなら、電子化されたメディアでは用をなさない」(Zurzolo氏)
Saffel氏も同意見で「コミック収集の投資的側面は、かなりの高度化を遂げている」と語っている。
それでもZurzolo氏は、金銭的要素を考慮に入れなくても、コミック本にはこのデジタル革命を生き延びるだけの力があると信じている。「手にコミックを持つと、何かを感じる。その手触りや、コミック本を所有すること自体に、何か心惹かれるものがある」とZurzolo氏。
そして、こうした感触こそ、ソフトウェアでは提供できない体験だ--少なくとも、テクノロジがわれわれの想像をはるかに超える、飛躍的な大進歩を遂げるまでは。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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