「iPhone」ブランドをめぐるシスコシステムズとの戦い、アップルの勝機は? - (page 2)

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:大熊あつ子、佐藤卓、小林理子、編集部2007年01月17日 00時06分

 たとえば、ソニーが「i.Link」と名付けているテクノロジは、同社製品に実装された「FireWire」あるいは「IEEE1394」の接続方式を指す言葉だ。また、インターネットでボートやボート用品を販売する「iBoat Store」という名のオンラインショップを運営している企業もある。iPodのアクセサリメーカーの中には、Soundcast Systemsの「iCast」やKlipsch Audio Technologiesの「iGroove」のように、自社の製品名に小文字の「i」を使用している企業もあるとMende氏も指摘する。

 さらに、Appleは、自社の使用権が明白ではない名称を付けた製品をすでに販売してしまったことによって、自社とiPhoneという製品名との連想を確立した。このように、1つの企業が他社に権利のある商標を使用し、後から市場に参入したにもかかわらずその企業の製品の方が大きな注目を集めることを「逆混同」(reverse confusion)という。iPhoneの話題が大きく取り上げられ、一般消費者のなかでの知名度においてCiscoよりAppleの方が勝っているとすれば、消費者はCiscoが自社のVoIP電話シリーズにAppleのiPhoneの名称を勝手に使っていると思うかもしれないとRadack氏は言う。

 こういった戦術で裁判官や陪審員を納得させることができなかったとしても、Appleは、Ciscoが自社が所有するiPhoneという商標を守ってきていないと主張することもできるだろうと、Stanton氏は述べる。CiscoがiPhoneの商標を取得したのは、同社がInfoGear Technologyを買収した2000年のことだ。それ以降、TeledexやOrateなどさまざまな企業が、CiscoのInfogear製品ラインと直接競合する製品にiPhoneという名称を付けて発売している。

 さらにCiscoは、AppleがiPhoneを発表する数週間前まではiPhoneという名称を積極的に使用していなかったようにさえ見える。Ciscoによれば、2000年にInfogearを買収してから、iPhoneの商標の下で製品を発売し、2006年初頭以降は同社のネットワーク部門LinksysのVoIP電話を、iPhoneという名称で発売しているという。しかし、CiscoとLinksysが、iPhoneの情報をそれぞれのウェブサイトに掲載するようになったのは、LinksysがVoIP電話をiPhoneシリーズとして発売するようになった12月からのことだった。

 Stanton氏は、Ciscoが2006年に新しいiPhoneシリーズを発表するまで、iPhoneの商標を守ってきていなかったとAppleが立証できれば、CiscoがiPhoneの商標を放棄したと裁判官に納得させることもできるかもしれないと述べる。Ciscoは2006年初頭に発売されたVoIP電話シリーズにiPhoneの商標を使用したと述べ、そのため同社はその商標を積極的に守り続けてきたと主張する。「商標法のもと、われわれは商標の有効性を証明する要件すべてを満たすために必要な活動はなんでも実施してきた」とCiscoの広報担当者は語る。

 弁護士らによると、AppleがCiscoの商標登録に勝利するため必要となる論証の負担を考慮すると、この争いは和解することで最終的に決着がつきそうだという。「大企業であっても非常に疲弊する法律問題だ」(Radack氏)

 しかし、Ciscoは、Appleと協力して両社の製品間の相互運用性を確保するという同社の要求を巡り話し合いが決裂したと述べている。Appleが他社の製品と相互運用することを望んでいるとは思えないので、Ciscoが納得するだけの金額を準備することができないようであれば、両社の衝突は避けられないだろう。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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