“iPod旋風”の極意は心に深く突き刺さる前刀流マーケティングにあり:後編 - (page 4)

別井 貴志 (編集部) 、構成:島田昇(編集部)2006年12月29日 08時00分

小池:では最後に、次にやることは基本的には短期にというよりも、末永くずっと続けたいような、そんなやりたいことに打ち込むということですか。しかも自分の会社で。

前刀:そうね。だから、きちっとした先に向けての成長シナリオがあって常に普遍的な価値を提供していく、それこそもし上場したならばその株価というのは、バブリーな跳ね上がりはしなくてもきちっとバリューを上げていくことができる、そういう取り組みをしたいよね。

小池:ちなみに、いつごろだったらそれが分かったりするんですか(笑)。

前刀:いや、そうだね〜(笑)。ある意味で外に向けて前刀がこんなことをやっているって見えてくるのは、ざっくり言って来年の春ぐらいかな。まあ、考えているビジネスをどこから手を着けていくのかというのは非常に重要だし、今、模索中。本当に成立するかどうかすらまだわからないことですから。

 自分自身はいまだかつていわゆるベンチャーでのキャピタルゲインを得たわけでもなんでもないので、ちょっと立ち上げ方が地道かもしれないね(笑)。でも、それはそれでいいかと思っている。

アントレプレナーへの言葉--小池聡

 投資家から資金を調達すること、銀行からお金を借りること、従業員を雇うこと、顧客に商品やサービスを提供すること――。それぞれにとても大きな意味と責任があることを、経営者は改めて認識しなければならない。

 ベンチャーの場合、起業家・創業者が経営者である場合がほとんどだからこそ、起業家は成功した時のドリームだけを夢見るのでなく、万が一の場合に責任を取る相当の覚悟を持つことが必要だ。

 前刀さんが創業したライブドア社は、米国ワールドコム事件の余波を受けて民事再生に至ったが、その後の彼の身の処し方は実に見事だった。前刀さんとはライブドアを創業する前からの付き合いだが、民事再生後、ソニー、ベイン、ウォルトディズニー、AOL――と華麗な経歴を歩んできた国際派ビジネスマンからは想像もできない地道な後処理を、コツコツと誠実に行っていた。

 民事再生手続きから1年間、もちろん無報酬で株主の損出を少しでも減らすために東京地裁に何度も通い、営業譲渡を平行して進め、当時のオン・ザ・エッヂ(現ライブドア)への売却の話もまとめた。また、民事再生という後ろ向きな作業を手伝ってくれた従業員の再就職も、最後の1人まで世話をした。私も彼のその姿に感銘を受け、同じ起業家として大いに見習わなければならないと思った。

 前刀さんが創業したライブドアは、営業を譲渡した先のオン・ザ・エッヂが自らの社名をライブドアに変え、その後、日本中を騒がす事件に発展したことから、ライブドアの創業者であるということをあまり表に出したくないかもしれない。しかし、その後、アップルコンピュータ代表取締役に転進し、iPodで大成功を収めた彼だから許されると思うが、創業時に投資してくれた投資家、最後までついてきた従業員などの為にも、ライブドアを創業してチャレンジしたという過去を、大いに誇りに思って欲しい。

 米国にはこんなすばらしい言葉がある。

 「Right to Challenge. Freedom to fail」〜チャレンジする自由と失敗する自由〜

 起業家は失敗を恐れず、失敗を糧にして、チャレンジし続けることが大切だ。

 今、前刀さんはアップルコンピュータの代表取締役を退任し、新たな起業・チャレンジに向けて準備中である。今度は、ITに限らない社会的に意義のある事業を興そうとしている。私も心から応援したい。

 しかし、彼のこれまでの経験や見識を日本のIT業界で使わないのはもったいない。ということで、当社、ネットエイジグループの社外取締役としても手伝ってもらうことをお願いした。日本のベンチャー発展のためにも寄与してもらえるはずだ。

小池 聡

iSi電通アメリカ副社長としてGEおよび電通の各種IT、マルチメディア、インターネット・プロジェクトに従事。1997年にiSi電通ホールディングスCFO兼ネットイヤーグループCEOに就任。シリコンアレー、シリコンバレーを中心にネットビジネスのインキュベーションおよびコンサルティング事業を展開。1998年にネットイヤーグループをMBOし独立。1999年に日本法人ネットイヤーグループおよびネットイヤー・ナレッジキャピタル・パートナーズを設立。現在、ネットエイジグループ代表取締役、ネットエイジキャピタルパートナーズ代表取締役社長などを務める。日米IT・投資業界での20年以上の経験を生かしベンチャーの育成に注力。

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