SlingBoxの場合は、ダイナミックDNSに近いIDを発行することにより、自宅外からのアクセスを可能にしていた。一方、本製品の場合は、中間サーバを利用することにより、IPアドレスが固定でなくても、自宅への中継が容易に行えるようになっている。中間サーバが仲介するという意味においては、仕組みはほぼ同じだと言える。
ダイナミックDNSと違うのは、サーバPCと中間サーバ、およびクライアントPC間の通信が完全にブラックボックス化されており、接続先が明示されないことだ。クライアントソフトを立ち上げ、IDとパスワードを入力して「OK」を押せば、いつの間にか視聴できるようになっていたという印象だ。サーバの存在を意識させずにワンクリックで接続できるのは悪くはないが、逆にトラブルシューティングはしにくい。ネットワークに慣れたユーザーほど戸惑いを感じそうだ。
なお、本製品は将来的にはUPnPに対応することが予告されているが、現状ではルータのポートフォワーディング設定を自力で行う必要がある。UPnPに対応したSlingBoxや、Skypeが用いるポートをそのまま利用する「どこでもTV for Skype」と比べると、ネットワークに関する専門的な知識が必要となる。
また、ポートフォワーディングの対象となるローカルIPアドレスを指定する必要があることから、サーバPCのIPアドレスは固定しておく必要がある。このあたりは、初心者にとってはややハードルが高い仕様だ。
現在、メーカー製の多くのデスクトップPCはチューナを搭載しており、それらを用いてロケフリ環境を構築できる本製品は非常にユニークだ。チューナを買い足さなくて済むぶん、初期投資が抑えられるのはありがたい。
ただ、現実的には、市場にはハードウェアエンコードのチューナー製品が多数あり、本製品が保障するソフトウェアエンコードの製品のシェアは高くない。今秋にはUSBキャプチャボックスを同梱したパッケージ版が発売されるそうだが、むしろハードウェアエンコード製品への対応確認をきちんと取っていくのが先決ではなかろうか。
それでも、自宅の内外を問わず、家庭のテレビを視聴できるという利便性はなかなかのものだ。今秋以降には、無線LANを搭載したWindows Mobile用の視聴用クライアントソフトのリリースも予定されているので、むしろこちらが本製品の起爆剤になる可能性もある。
サーバPCのセットアップ、クライアントPCのセットアップ、ウェブでのユーザー登録(中間サーバのセットアップ)、ルータのポートフォワーディングの設定、さらにサーバPCのIPアドレスの固定と、設定しなければいけない項目は多岐に渡るが、最初にきちんと設定をしてしまえば快適に使え、コストパフォーマンスも高い。Slingboxが初級〜中級者向けだとすれば、本製品は中級〜上級者にオススメできる製品だと言えそうだ。
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