オンライン広告の広告主たちは、クリック課金型広告に対する請求の14.6%が不正クリックによるもので、2005年の損害は総額で8億ドルに上ると見積もっている。そんな調査結果が米国時間6月29日に発表された。
「損害額13億ドルにおよぶクリック詐欺が『問うなかれ、語るなかれ』時代に幕を引く」と題されたこの調査は、情報産業における調査分析を手がけるOutsellによって実施された。同社はレポートの中で「Google、Yahoo、MSNの各社は・・・クリック詐欺対策を怠り、自社および他社に損害を招いている」と述べている。
検索サイトを運営する各企業は、検索連動型広告におけるクリック詐欺の損害額を公表することを拒んでいる。クリック詐欺に多く見られる手口は、自分のサイトに貼り付けた広告を自分でクリックして収入を増やすというものだ。
クリック詐欺問題に取り組むClick Fraud Networkによる最近の調査では、クリック詐欺の割合は14%とされている。一方、クリック詐欺を探知、防止するサービスを提供している企業は、その割合は20%ないし30%になると見積もっている。検索各社はクリック詐欺の割合はもっと低く、きちんと制御できていると主張する。
Outsellがレポートの中で挙げている13億ドルという損害の総額は、広告主が不正クリックに対して請求された料金を8億ドル、広告主がクリック課金型広告への出稿を取りやめることで生じた損失を5億ドルと見ている。クリック課金型広告はGoogleにとっては売り上げの主要な柱であり、Yahooにとっても大きく貢献する存在となっている。
調査に協力した407社の広告主のうち、広告量を減らしたりやめたりしたと回答した割合は27%に上り、そのうち16%はクリック課金型広告から完全に撤退したと答えている。
また、これらの広告主の75%がクリック詐欺を経験したことがあると回答している。損害に対して払い戻しを請求したことのある広告主は7%で、払い戻しの平均額は9507ドルだ。
電子メールでの取材に対し、Googleは次のような回答を寄せてきた。「われわれはこの問題を非常に真剣に受け止めており、大いに注力してきた。管理はきわめてうまくいっており、大きな問題にはなっていないと考えている」
また、Yahooは「クリック詐欺は、重大ではあるが制御可能な問題だと考えている。実際、われわれが1998年にクリック課金型広告のビジネスモデルを考案した際に、最初に認識した問題の1つがクリック詐欺だった。きわめて早い時期から、強固な不正クリック防止システムを独自に構築したのはそのためだ」と述べた。
Yahooによると、同社の不正クリック防止システムはクリック詐欺や不正行為などを識別し、そこから生じる数十億クリック分については広告主に請求していないという。
「われわれは、このシステムが不正クリックを防止できると大きな自信を持っている。だが、特にYahooや他の検索エンジンがここ数年間に関与した訴訟のせいで、当社の顧客および業界全体がクリック詐欺に対して多くの疑念や不安を抱いていることも理解している」と、Yahooは述べた。
Microsoftからの発表は次のとおりだ。「われわれは、『クリック詐欺』と呼ばれるものも含め、不正なクリックがクリック課金型広告にとって重大な問題であると認識している」
GoogleとYahoo両社は、クリック詐欺に関して提訴されていたが、ともに和解へと進んでいる。
YahooとCheckmate Strategic Groupとの和解案は6月28日、ロサンゼルス連邦地方裁判所で予備承認された。この和解にしたがい、Yahooは訴訟費用として約500万ドルを支払い、広告主が主張するクリック詐欺被害について2004年1月に遡って精査する。
Googleは2006年3月、クリック詐欺に関する集団訴訟の和解案として、広告の購入に利用できるクレジットの形で総額9000万ドルを支払うと発表した。この総額には弁護士費用も含まれる。
Googleの支払う賠償額が少なすぎるとする広告主たちは、この和解案による決着を阻止するために改めて訴訟を起こしている。
専門家の中には、この問題を解決するにはクリック詐欺を監視する第三者機関を設置するしかないという意見もある。
検索エンジンマーケティングプロフェッショナルズ協会(Search Engine Marketing Professionals Organization:SEMPO)は、クレジットカード詐欺の調査を手がけるFair Isaacsと協力して、クリック詐欺の実態と検索エンジン広告に与える影響の評価に着手している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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