マイクロソフト、企業向けセキュリティ市場参入と待ち受ける課題 - (page 2)

文:Joris Evers(CNET News.com) 翻訳校正:河部恭紀(編集部)2006年07月04日 21時34分

追い上げなるか

 Microsoftが新製品を出せばすぐに興味を示す企業がいくつかあるに違いないが、それだけではセキュリティ分野で主要プレーヤーになることはできない。とりわけ、企業向けのクライアントセキュリティ製品となると市場シェアの確保は難しい、とアナリストたちは見ている。

 「Microsoftというだけで市場シェアの一部は獲得できるだろう」とBurton GroupのアナリストDan Blum氏は言う。「しかし、主要プレーヤーとしての地位を確保するには、McAfeeやSymantecなどと同等か、非常に近い機能を持つ製品を市場に定着させる必要がある。それには、2008年か2009年くらいまではかかるだろう」(Blum氏)。

 Symantec は、企業のネットワークやシステムのセキュリティ保護を実現する広範な製品を提供している。同社は米国時間6月20日、Microsoftの参入に対抗する準備はできている、とのコメントを発表した。

 「セキュリティ市場のすべてのベンダーは、平等な競争条件のもとで、企業ニーズに最も適合する製品を目指し、マインドシェアの獲得にしのぎを削っている。Symantec はウイルスやその他悪意のあるプログラムからの効果的なセキュリティ保護を実現するトップベンダーとして 15 年以上もその地位を維持してきた」と Symantecの担当者は語った。

 Microsoftにとって最大の障害は顧客の不信感だ。「これまでWindowsのセキュリティで悪しき実績を重ねているため、Microsoftを信用していない顧客が確実にいる」とYankee GroupのJaquith氏は言う。

 Microsoftはここ数年、セキュリティに多額の投資を行ってきた。にもかかわらず、ほとんどの悪意あるソフトウェアはMicrosoft製品をターゲットにしており、同社は多数のセキュリティホールの対応に追われている。たとえば、Microsoftは先週、12のセキュリティ情報を発行したが、そこには21の脆弱性に対応する修正プログラムが含まれていた。これは月例パッチに含まれる件数としてはこれまでで最多だ。

 「Microsoft製品に対する企業の態度は2分されている」とJaquith氏は指摘する。つまり、「Microsoftの忠実な顧客で同社を応援しているか、Microsoftにはさんざん痛い目にあわせられたので同社をまったく信用していないか、のどちらか」(Jaquith氏)である。

 Microsoftはセキュリティ市場に参入することで、自社製品のセキュリティの不備を逆手にとって利益をあげようとしているのでは、という批判的な見方もある。

 「Microsoftがウイルス対策ソフトウェアを開発するなど、詐欺同然だ」とニュージャージー州オールドブリッジのFrank Seichal氏は言う。同氏はある金融機関のIT部門に勤務している。「Microsoft製OSの脆弱性に対処するために、どうしてMicrosoftのソフトウェアを購入しなければならないのか。そんなことが許されるとは到底思えない」(Seichal氏)。

 2つめの障害は、既存のセキュリティベンダーが販売し、既に市場に普及している高品質のセキュリティ製品だ。例えば、McAfeeの集中型セキュリティ管理ツールePolicy Orchestratorはユーザーから高い評価を得ている。

 「Microsoftは信頼性、安定性、予測性を証明する必要がある。とにかくユーザーに受け入れられる高品質の製品を開発し、セキュリティベンダーとして成功しなければならない」とJaquith氏は指摘する。「Windowsとの統合性が高いとか、Windowsを開発しているのは自分たちであると主張しても、何の効果もない」(Jaquith氏)

 Forefrontのマニュアルには、「各製品は協調性が高く、既存のITシステムにも問題なく組み込める。またインストールも容易で、集中管理も可能だ」と書かれている。しかし、Forefrontシリーズの製品はMicrosoft製のソフトウェアだけを保護し、LinuxサーバやSAPアプリケーションなどには対応していない。

 「それがMicrosoft製セキュリティ製品最大の欠点だ」とBlum氏は言う。「自社製のOSを基盤に、いささか近視眼的なその場しのぎのソリューションを開発し、その他の製品はWindows上で動作するものであっても無視している」(Blum氏)

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