「8カ月間無給で仕事した」--サーチテリア起業から今後の戦略までを聞く - (page 2)

 「月に100回来る検索があるとして、80回は広告を返せる。そのうち10%がクリックされれば、クリック金額で売上の見込み計算ができます。こうして3年先まで、手探りのまま事業計画を立てました。振り返ってみるとずさんな点もありましたが、最初に作ったものがいまだに通用しています」

 こうして2004年1月、創業メンバー3名が1万円ずつ出し、資本金3万円でサーチテリアとしてスタートした。創業メンバーはサービス開始の8月まで無給で仕事をしていたという。資本金3万円では給料も出ない。オフィスもレンタルオフィスを利用して、机1席いくらという形で3席借りることにした。

 「サービス開始後、ビジネスがうまくまわり始めたのは良かったのですが、システム投資が増えていきました。すぐに借入の必要がありましたが、これが難しかった。『債務超過でしょう、担保あるの?』と、必ず聞かれました。信用がないので金利も高い。国民金融公庫で数百万、システム投資のために商工中金から数千万円を調達しました」

 1つの借入をまとめるのに数カ月かかり、借入金の負担も無視できない。永続的な起業を目指しているのに、管理体制の向上にコストをかけられないジレンマが生じた。売上に直結することしかお金をかけられない状態が続き、これを解決するには上場を目指して体力を付けたほうがいいと判断し、直接金融へと方向転換することになった。

 「創業当初から、ベンチャーキャピタル20〜30社から提案を受けていました。そこから話し合いで信頼できそうなNIF-SMBC、ネットエイジキャピタルの2社に絞り、増資を求めました。上場して市場で資金調達を目指すことにして、その結果、資本金も増えて借金も返済し、管理部門にコストをかけられるようになっていきました」

 現在は資本金増強により、借金は完済している。金利負担が減って、利益に貢献できている。管理部門にコストがかけられるようになったため、会社の基礎となる管理体制を整えることができた。上場準備のプロセスで会社組織がしかるべき体制に向かって整えられていくのを実感できると中橋氏はいう。

 「開発などの投資案件も、これまでは実施まで数カ月と長期になっていたのが、即座に対応できるようになりました。資本金が3億になってからは、取引開始時や採用時などに、メリットを感じられます」(中橋氏)。

蓄積したノウハウを活かし、モバイルSEMを海外に

 サーチテリアのコアコンピタンスは、ジャンル別モバイル広告のデータベースにある。モバイルリスティングのノウハウも溜まってきている。今後の課題はマッチングの多様化だと中橋氏は語る。

 「ページの内容に合わせたコンテンツを表示し、さらに人、行動、場所、時間に合った広告を配信していくことも可能になります。ニーズがあれば、テーマを持つサイトに合った広告を掲載していくことも考えています。また、課金方法や露出形態についても、ニーズがあれば多様化していきたい。これまで蓄積してきたノウハウを元に、モバイルSEMを海外に広げていくことも視野に入れています」

 中橋氏は、モバイル広告市場の規模を2006年で8%。2007年では16%になり、2008年には32%に上ると予測。今後の市場拡大を十分に期待できるという。「トップシェアを取っていくことが今後の課題」だと結んだ。

経営者の仕事は資金調達ではなく利益を生むこと

ネットエイジキャピタルパートナーズ取締役の金子陽三氏 ネットエイジキャピタルパートナーズ取締役の金子陽三氏

 続いて、ネットエイジキャピタルパートナーズの金子氏が登壇した。ネットエイジは、ベンチャーキャピタルをベースとして、企業の成長を総合的に支援する事業を行っており、サーチテリアが創業当時に利用したレンタルオフィスも、ネットエイジの事業ドメインの1つである「クロスコープ」が運営しているものだ。

 「ネットエイジは、ベンチャー起業が大好きな人間の集まり。お金だけを出す会社ではなく、経営リソース、人材採用、システム開発、オフィスなど、新しいサービスを立ち上げるときに必要なすべてを支援しています」(金子氏)。

 金子氏は、ネットエイジキャピタルのコアコンピタンスとして「インターネットビジネスにフォーカスした投資」「新規に事業を起こすための支援」「事業経験豊富な投資チーム」「業界でのネットワーク」「魅力的なポートフォリオ企業群」を挙げる。金子氏をはじめとした6名チームの4名がベンチャー企業経営の経験者であり、他社がリーチしていないアーリーステージの企業を好んでアクセスしている。投資額は、3000万〜1億円。起業したばかりの企業への投資は、3000〜5000万円から始まり、継続的に資金支援をしているという。

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