ユーザーの好き嫌いが、次のスターの発掘につながっているコミュニティもある。
Rupert MurdochのNews Corp.に最近買収されたソーシャルネットワークサイト「MySpace」はその典型だ。MySpaceは音楽業界に絶大な影響を及ぼしており、先日は独自のレーベルも設立した。現在は50万組を超えるバンドとアーティストがMySpaceでサイトを運営し、楽曲のストリーミングやミュージシャンのインタビュー、ファンとアーティスト、あるいはファン同士を結ぶリアルタイムのネットワークを提供している。
こうしたつながりを通して、ユーザーの好き嫌いはゴシップのように瞬時に広まっていく。MySpaceのメンバーは、同じような趣味を持つメンバーを自分のネットワークに加えることもできるし、他のメンバーのお気に入りの映画やバンドを見て、そのグループを自分の「友だち」リストに加えることもできる。
規模の小さいレーベルは、MySpaceでクリティカルマスのユーザーの目に触れたことで、バンドの認知度が飛躍的に高まったと証言する。Doghouse Recordsのニューメディア担当ディレクターMatt Rubinは、自社のバンドThe Honorary Titleを例に挙げる。このバンドはMySpaceのトップページを飾った初期のグループのひとつで、これまでに「友だち」登録を依頼してきたメンバーは3万5000人を超えるという。
「MySpaceでのコミュニケーションは非常に親密だ」とRubinはいう。「若いファンには、こうした親密さが受ける。バンドは時間の許す限り、参加型の活動に取り組むべきだ」(Rubin)
メジャーレーベルの幹部も、MySpaceで認知されることは、ラジオ番組でシングルを流してもらうのと同じくらい重要だと指摘する。
「A&R(タレントスカウト)担当者の多くは、かなりの時間をMySpaceに費やしている」とEMIのKleinはいう。「MySpaceはすでにクリティカルマスのユーザーを獲得しており、すぐに使える市場調査の場となっている」(Klein)
P2Pネットワークの場合、利用できる標本グループはさらに多い。P2Pネットワークでは個人を特定することはできないが、人気ファイルのランキングといった貴重な情報を手に入れることができるからだ。Apple Computerの「iTunes」、Napster、RealNetworksの「Rhapsody」といったオンライン音楽サービスの「トップダウンロード」リストも、同様の役割を果たしている。
いずれにせよ、これはユーザーにとって朗報といえる。ユーザーはGoogleで検索するだけで、自分と同じ趣味を持ち、新しい提案をしてくれるブログやMySpaceネットワークを見つけることができる。企業やアーティストにとっては、目的に合ったコミュニティやブログ、RSS(Really Simple Syndication)フィードを見つけることが重要になる。しかし、アナログ時代の威光にしがみついている旧世代のメディア企業にとって、これは難しいことかもしれない。
「雑音は非常に多い」とトレンド分析の専門企業IconocultureのメディアコンサルタントAndrew Hawnはいう。「しかし、そのどこかに知恵が潜んでいる」(Hawn)
(次回は「wiki--集団による編集が変える報道のあり方」をお届けします)
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