カウチポテト族の終焉--不透明な時代に突入したテレビ業界 - (page 2)

John Borland (CNET News.com)2005年12月20日 19時16分

 テレビとインターネットを隔てるこうした障壁が急速に崩れ落ちるなかで、BrightcoveやiSeeTVのような企業にも資金が流れ込んでいる。これらの企業では、ビデオ制作者が自分の作品をオンラインで配信できるようにするサービスを提供している。インターネットを使えば、従来のケーブルテレビやネットワークチャンネルの制約に縛られることがない。

 このことがコンテンツの爆発的増加につながっており、そして検索エンジン大手のGoogleやYahoo、さらにBlinxやAOL傘下のSingingfishなどのビデオ検索企業では、ユーザーが大量のビデオのなかから観たいものを見つけ出せるように力を貸したいと考えている。

 ネットワーク自体もコンテンツの爆発的な増加に手を貸している。ネットワーク各社は現在、マルチキャストサービスの開発で初期段階にあるが、この技術を使えば通常のアナログテレビ信号1本分の容量で、デジタル信号4〜6本分の動画を送信できるようになる。

 この技術はテレビネットワークや番組制作会社の仕事に影響を及ぼすが、それがどんなものなのかを見極めることは、彼ら自身にとってもますます困難になっている。しかし、人々のメディアに対する興味が減退していないことは確かだ。Nielsenによると、現在のテレビの視聴率は、同社が数十年前に視聴率調査を初めて以来最高レベルにあり、10年前と比べても12%も増加しているという。

 しかし、視聴者が放送中のテレビ番組を観る時間は減少し続けており、、テレビそのものも必要な媒体ではなくなってきている。そのため、大手テレビネットワークですら、これまで通り視聴者との関係を維持できるかどうかを懸している。今回のDigital Entertainment and Media Expoでも、異なるメディアの垣根を越えるブランドをいかに創造するかという、お決まりの話題に多くの時間が割かれた。もはや、テレビガイドへの番組情報掲載を云々している場合ではないのだ。

 ABCが放映している「ロスト(Lost)」や「デスパレートな妻たち(Desperate Housewives)」は、同局が復活を遂げる契機となった人気番組だ。ABCの親会社であるDisneyは、これらの番組をApple Computerの「iTunes Music Store」で提供し、ダウンロード購入してコンピュータやビデオiPodで視聴できるようにしているが、この試みは今後有力なモデルケースとして注目されている。もっとも、同局の幹部は、テレビ以外の媒体を用いる試みを進めてはいても、自社コンテンツの中核媒体がテレビであることに変わりはないと強く主張している。

 Disney-ABC Television Group社長のAnne Sweeneyは、「コンテンツを視聴する媒体の主役は、現段階ではまだテレビである。コンピュータで何かを閲覧するのと、夜9時にソファに座ってゆったり(テレビを観たり)するのとでは、大きな違いがある」と述べている。

 テレビ番組が携帯電話やPDA、ノートPCなどでも観られるようになり、さらにインターネットを介して提供されるコンテンツと競合することが増えたことで、テレビ業界は試行錯誤の道を歩むようになった。だが、現実に大勢を占める消費者がどのようにして能動的な視聴者に変貌するのか、またそうなったとき彼らが現在の能動的視聴者と同じ行動を採るのかどうかは、数年後まで明らかにならない。

 このような不透明性が原因で、テレビ業界は創造期の混乱状態に陥っている。この業界では、ケーブルテレビがケーブルの敷設を始めて以来、おそらく最大の変化の渦中にあると感じているが、どのような将来が待っているかはまったくわかっていない。

 NBC UniversalのシニアバイスプレジデントSteve Schwaidは、「現在何が起こっているのかなんて、考えるだけ無駄というもの。そういったことは、現場の人間に任せておけばよい。それよりも、10カ月後われわれがどこに向かっていて、目的地に至るにはどうすればよいのかを把握するほうがもっと重要だ」と、述べている。

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