サービスを急拡大させるグーグル、そのスピードの秘密と狙い - (page 2)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:林信行、写真:津島隆雄
2005年12月07日 08時00分

--日本にはGoogleの買収対象となるような企業はないのでしょうか。

 あると思いますよ。米国だけにそういう革新的な会社が集中しているとは思っていません。

 ただ、我々も今のところ人的リソースなどが限られており、米国以外の企業をきちんと見ている余裕がないというのが実情です。さらには、買収して新たに迎えるスタッフをどうやって受け入れるかという問題も解決が必要です。

--ウェブメールのGmailでは広告の表示を始めましたね。しかし、自分のメールの中身をもとに広告を表示するという仕組みを嫌がる人たちもいます。まるでメールの中身を覗かれているようだと。

 ええ、それはあると思います。ただ、Googleのポリシーは単純かつ明快です。そういったデータを収集する際、どのデータがどの人のものかといったことは一切わからない形になっています。また、そういった情報を第三者と売買することも絶対にありません。

 Gmailの問題に関して言えば、広告を載せるか否かに関わらず、ウェブメールを利用する以上、どこかのメールサーバに情報を預けてしまっていることには変わりはありません。そういった技術的な背景や仕組みがわからないと、Gmailだけが何か特別なことをしているように思えて心配なのかもしれません。しかし、実際にメールの内容をのぞくことは我々のポリシーにも反しますし、そもそもできない仕組みになっているんです。

 ここで、ちょっとGoogleのプロダクト開発に対する考え方について話をさせていただくと、私たちは何よりも自分たちが欲しいと思っているサービスをつくることを心がけています。逆に、自分たちがされて嫌だと思うようなものは絶対に作りません。

 自分のメールを他人に覗かれていいとは我々も思いませんし、ポップアップ広告を排除しているのも同じ理由です。

 例えば、地図系のサービスでは、「Googleが自宅住所を覚えて、それを起点にいろいろな情報を表示してくれると便利だ」という意見をたまに耳にします。しかし、Googleではプライバシーの侵害を嫌がる社員が大勢います。こういった社員は自分の住所などがウェブページに表示されることに抵抗があるようで、今でも実現していません。

 もちろん、どこで線を引くかという点は時代とともに変わっていくこともあるでしょう。ユーザーの使い方も意識も変わっていくものです。だから今、提供していないサービスでも、今後登場する可能性はあります。ユーザーからのフィードバックは継続的に受け付けていきます。

--はてなではサービスを出す時に、最初から完璧な状態を望まず、50%の状態で出してからユーザーの反応を見てサービスを改善するという手法を採用しています。Googleの開発手法も近いのではないでしょうか。

 それは日本の会社としては革新的なことですね。確かに、Googleも同じかもしれません。ただし、我々の場合は特に明文化したルールはありません。

 Googleでは製品を開発すると、まず社内で利用して反響を聞き、その上でGoogle Labsに出します。社内での反響が悪くてやめた企画もいっぱいあります。Google Labsに出た製品は、ユーザーの利用状況やフィードバックを参考にベータ版としてリリースするかどうかを決めます。

 もちろん、ベータ版でもサービスとしてある程度のクオリティを要求していますが、そこであまりにも完璧を目指してしまうとサービスとしての開発が遅れてしまいがちですよね。で、そうなると開発者も考え込みすぎてしまうんです。時間ばかりかかってしまうので、やはりどこかでサービスを形にしていく必要があります。

--ベータ版から正式版になるにはどの程度の期間がかかりますか。

 その判断はプロダクトによりますね。技術的な要素なども含めて判断します。例えば電卓機能の場合、日本語版が始まるまでには時間がかかりましたが、米国ではすぐにリリースとなりました。1人のエンジニアがつくったものを周りの社員に見せたところ、「お、これいいじゃん。おもしろいよ」と盛り上がって、すぐに製品に取り入れられました。逆に、Gmailのように数年かかったプロジェクトもあります。

--ユーザーインターフェースはベータ版の時点ですでに洗練させていますね。

 ええ、ユーザーインターフェースのデザインというのはGoogleの中でもかなり重要な位置付けにあります。その道のエキスパートの人たちが、1つのボタンを左に置くか、右の置くかという問題で30分くらい議論をしていたりする姿をよく見かけます。

 また表現の言葉選びも非常に慎重に行っています。それが多言語対応となると、さらに複雑さは増すようで・・・。

--多言語対応のタイミングはどのように決めているのですか。

 製品が英語版で出てから多言語化されるまでの期間はどんどん短くなっています。Google Searchでは、去年の年末に新しい機能を45言語で同時リリースするという恐ろしいこともしました(笑)

 一方で、そのまま他の言語に対応させても意味がないと感じるものもあり、一概には言えません。

 ただ、ユーザーの立場から見ると、新サービスは米国と同時にリリースしてほしいと思うでしょうし、そのタイミングでサービスをリリースできないことを残念に感じることも多いですね。

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