変容するテキサス・インスツルメンツ - (page 2)

--Intelは2年ほど前から、携帯電話市場と家電市場に攻勢をかけています。あなたは以前、PCの時代はほぼ終わったとおっしゃいました。今後、IntelとTIの戦いはどうなるのでしょうか。

 現代はコミュニケーションとエンターテインメントの時代です。その点に、異論を差し挟む余地はありません。今年は7億5000万台のワイヤレスハンドセットが販売されるといわれています。これはPCの4倍に相当する数です。ワイヤレスハンドセットの加入者数は、年末までに世界全体で20億人に達するでしょう。4年後には40億人に到達すると見る研究者や関係者もいます。

 しかし、市場のトレンドをつかむことと、その市場のプレイヤーになることとは別の事柄です。幸運なことに、当社は25年前からDSPの研究に取り組んできました。アナログ製品にも非常に早い段階から関わってきました。顧客とは緊密な関係を築いていますし、高度なシステムスキルも蓄積しています。また、これらの能力を統合する方法も知っています。

 一方、Intelはどうでしょうか。Intelはハンドセット市場に積極的に投資し、強気の発言を行っていますが、これまでのところ、この領域における進捗はほとんどありません。

 歴史を俯瞰すると、時代のリーダーと目される企業の多くは、自らを変容させることで、次の時代でも主導権を握ろうとしてきました。Texas Instrumentsも例外ではありません。当社は50年代には集積回路、60年代には初期のLSIの分野で一時代を築きました。PCの時代のリーダーとなった企業はご存じの通りです。当社は(コミュニケーションの分野で)非常によいスタートを切り、絶好の位置を確保しつつあります。しかし、好スタートを切ったからといって、今後も盤石とはいかないのがこの世界です。

--Intelはマイクロプロセッサだけでなく、その他の関連部品も生産するようになっています。TIも同じことを、同じような規模で行うことになるのですか。

 それは未来ではなく、過去の話です。7、8年前の携帯電話には、おそらく20個から25個のICが搭載されていました。1年前になると、メインICの数は2個、3個、あるいは4個に減っています。当社はNokiaにシングルチップの携帯電話のサンプル出荷を開始しました。現在ではひとつのDSPベースバンドにデジタルRF、ラジオ機能、そして電源管理機能を集積できるようになっています。

 いま携帯電話業界で何が注目されているかをご存じですか。今年の最初の話題は3Gでした。第2四半期にはNokiaとMotorolaが40ドル、あるいは30ドルを切るローエンド電話市場の急成長に言及するようになりました。インドや中国といった市場を開拓するためには、150ドルではなく、30ドルの携帯電話機が必要なのです。当社のシングルチップソリューションは、超低コストの電話の設計と製造を促進するものとなるでしょう。このソリューションは爆発的な影響をもたらすことになるはずです。

 一方、当社はトライバンド、ベースバンド、GPSなど、5つまたは6つの周波数帯に対応したハイエンド電話機の開発にも取り組んでいます。こうした電話機には無線LANやBluetooth、デジタルテレビが搭載されるようになっています。どれも無線通信を利用するものですが、現在の携帯電話には低消費電力と集積化が求められているので、追加できる周波数帯の数には限界があります。

 今ではベースバンド回路そのものにデジタルRFを搭載することができます。これは既存の半導体製造スキルを使って、複数の周波数帯をベースバンドに集積できることを意味します。ローエンド電話機の開発に必要なスキルは、ハイエンド電話機の開発にも適用することができるのです。

--消費者が「もう新機能はいらない」という日は来るのでしょうか。

 米国を基準に考えてはいけません。米国人は、通話できれば満足なのですから。携帯電話が日本でどのように使われているかを見てください。2006年になれば、日本人は携帯電話でテレビを見るようになるでしょう。NTTドコモは携帯電話を支払い端末やRFIDリーダにすることを検討しています。4年前には、誰もがカメラ付き携帯電話を珍しいと考えていましたが、現在ではカメラの付いていない携帯電話を探す方が困難です。カメラの次はビデオカメラでしょう。1980年代末と1990年代初頭のPC業界のように、この領域では独創的な実験がかつてない規模で行われています。これは需要の減少ではなく、増加を示す先行指標と捉えるべきです。

--「TI入ってる」キャンペーンを行う予定はありますか。

 まずはDLP事業の一環として、人気の高い自動車レース「NASCAR」参戦チームのスポンサーとなり、ブランド認知度を高めていく予定です。国内の家電販売店からは、「DLPテレビを買いたい」という声をいただいています。フットボール番組でのCMも増やす予定です。OEM(original equipment manufacturer)顧客からは、DLPテレビの販売を促進するために、DLPロゴを普及させてほしいといわれています。しかし、ロゴ戦略は携帯電話には通用しないでしょう。自社の携帯電話にTIのロゴをつけることは、Nokia、Motorola、そしてSamsungの望むところではないはずです。

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