ソフトバンク、“無理せずに”通期で5年ぶり営業利益が数百億円に - (page 2)

別井貴志(編集部)2005年08月10日 22時48分

おとくラインはインボイスと提携して強化

 こうして変更した具体的な戦略の1つが、この日に発表されたインボイスとの資本・業務提携だ。インボイスは、法人向け通信総合サービスを展開している。ソフトバンクの完全子会社である日本テレコムとインボイスは、おとくラインを中心とした音声通信サービスの販売や料金請求、回収を担う合弁会社「日本テレコムインボイス」を設立し、おとくラインの販売を強化する。

 合弁会社の資本金は100億円で、日本テレコムが14.9%、インボイスが85.1%出資する。さらに、より強固な関係を築くために、ソフトバンクはインボイスの第3者割り当て増資を引き受け、約50億円(出資比率5%)出資する。この提携により、おとくラインのほとんどの代理店を日本テレコムインボイス傘下に集約し、営業体制を強化する。

 そして、おとくラインの顧客をセグメント化し営業する。利益率の高い大企業向けには、セキュリティやデータセンターなどさまざまなソリューションとおとくラインを組み合わせて、日本テレコムによる直販を行う。また、中堅・中小企業に対しては、日本テレコムインボイスを中心に代理店が顧客獲得を推進する。インボイスの既存顧客の固定回線を、おとくラインに順次置き換えることもしていく。

 もう1つ、以前から長期的視野に立って進めてきた光ファイバー接続サービスについても、おとくライン同様に「無理しない」(孫氏)ことをよりはっきりさせた。孫氏は「電柱利用に制限があることや回線引き込み工事のための道路占有手続きの手間などを考えると、事実上NTTや電力会社しか自前で回線を引けない状況が改善されるまで、大規模な先行投資を伴う光ファイバーを積極化するのは無理だ」と訴えた。さらに、技術が進歩して総合的にコストが下がり、利益を出せる環境が整うまではADSLに注力することで十分にやっていけることを強調した。

 一方で、総務省が比較審査の申請を受け付ける9月に向けてさらに準備を進めている携帯電話事業について孫氏は、「まずはデータ通信を東京で開始したあとに東名阪地域に拡大した後、通話サービスを全国展開するイメージだ」と述べた。通信容量80Gbpsの既存IPバックボーンを活用して展開する。

マクドナルド戦略とプラットフォーム化

 このように、同社では携帯電話、固定電話、ADSL、光ファイバーなど総合通信サービスの提供を目指しており、こうしたサービスの提供形態の例としてセット販売を挙げた。孫氏は「フライドポテトを日本でもっとも販売しているのは、きっとマクドナルドだろう。しかし、マクドナルドをフライドポテト販売店と認識している人はいない。こうしたことは、バリューセット戦略によるもので、これと同様の戦略だ」と言う。具体的には、7月からADSLもしくは光ファイバー接続サービスと、放送サービスのBBTVをセットにしてバリュー価格で提供しているが、新規の顧客はこうしたセットを申し込む比率が高いという。

 こうした販売戦略を、たとえばおとくラインと携帯電話サービスのセット販売などに拡大するわけだ。そのうえで、孫氏は「ドコモに続く携帯電話キャリアのKDDIは固定回線を800数十万回線持っているが、ソフトバンクは既に1100万回線有している」とした。つまり、セット販売などで価値感を高めることで、こうした固定回線のユーザーが、同社の携帯電話サービスの潜在的顧客として最初のターゲットになるわけだ。

 さらに、今回の決算発表で孫氏は、ソフトバンクのビジネスモデルの進化にも触れた。第1段階ではソフトバンクグループ内で回線やISP、コンテンツまでを一気に提供する「垂直統合モデル」だった。第2段階では、ADSLや光ファイバーサービス、固定電話、BBTV、オンラインゲームなど、新サービスをどんどん積み上げていき、顧客基盤を拡大させる「面をとって深掘りするモデル」だった。そして、今回の第3段階では、インフラや課金プラットフォームなどの利用基板をソフトバンクグループで提供し、この基盤の利用をグループ内だけではなく、他者にも積極的に提供していく「プラットフォーム化モデル」を推し進める。

 そのために、まず2004年10月1日に設立したソフトバンク・ペイメント・サービス(SBPS)に、ヤフー、ソフトバンクBB、日本テレコムの3社を始めとするグループの決済代行を委託している。この決済共通基盤を、コンテンツやサービスを提供しているソフトバンクグループ外の他者にも利用してもらうようにするわけだ。

 こうしたプラットフォームは、課金や請求、認証、決済のほかにも、会員管理、コンテンツ配信などを想定している。孫氏は「この基盤を利用する比率は、ソフトバンクグループが2〜3割、グループ外の他者が7〜8割が理想的だ」と言う。そして、この基盤を他者が利用した場合、コンテンツやサービスの価格決定権は原則としてその他者にあるが、ソフトバンクグループ企業のコンテンツやサービスと組み合わせて販売したり提供したりした場合には、ソフトバンクがその権利を有する。

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