日本でも2005年7月1日に正式サービスを開始したリアルタイム検索エンジン「Technorati」。米国では2002年11月よりサービスを開始し、AOLをはじめとするインターネットサービス企業との連携や大手放送局CNNとのタッグなど、意欲的なチャレンジが続いている。米Technorati創業者 兼 CEOであるDavid Sifry氏に、ブログと既存メディアや今後の展開などについて聞いた。
Sifry氏は、ソフトウェア開発分野の起業家として19年以上の経験を有する。リナックスケアのCTOおよびエンジニアリング担当のヴァイスプレジデントを兼務し、その後Wi-Fiゲートウェイを手がけるスプートニクの共同創業者兼CTOを務め、2002年にTechnoratiを創業した。リナックスインターナショナルの創設メンバーであり、ナショナル・サイバークライム・トレーニング・パートナーシップの技術支援メンバーにも名を連ねる。
私たちの競合は存在しない
--まずは、Technoratiを創立したきっかけを教えてください。
Movable Typeとの出合いに衝撃を受けて、2001年初頭からいちブロガーとして「Sifry Alerts」を開始ししたのが出発点です。それまで、自社の従業員やパートナーとはメーリングリストでコミュニケーションしていたのですが、あまりにも多いスパムなどに悩まされたこともあり、「電子メールではない、何か新しいツール」を探していました。
Movable Typeは、あまりの簡単さに驚いてしまいました。ソースコードが公開されていて自分のウェブサーバに実装もできる。ダイナミックウェブサイトも作れるし……。それにSifry Alertsを始めてからは、世界中から反応があることが面白かったのです。クローズドであるメーリングリストでは、ロシアや中国の人と意見交換できるなんてあり得ないでしょう。そんな、オープンウェブな環境でのパブリッシングというものに魅力を感じました。
さらに、「自分が投稿した記事は、他のブロガーにどう捉えられているのかな」ということが気になりだしてきて。これは、みんなも同じ気持ちを抱くだろうと思い、そのための新しいシステムが作れないかと考えたのです。例えば、どんな人が、どれくらいの人が私のブログにリンクしているかなど──そういったことをすべて分析すれば、役立つ上に楽しいサービスが提供できるのかなと。それで2週間ほど費やし、Technoratiで提供するためのサービスを作りました。
--Technoratiのサービス開始から3年が経過しています。サービスや収益の面で、Sifryさんの目標へはどれくらい達成していると考えますか。
もともとビジネスとして始めたわけではなく、単純に「自分が欲しいから」作っただけなので、実は明確な目標というものを設定していなかったんですよね。みんながTechnoratiの利点を見いだしてくれて大成功へ向かっていることに、私自身が一番驚いているほどです。
これまでを振り返って信じられなかった出来事は……いくつかあります。そのうちの1つは、開始5カ月でユーザー数が2倍になったことです。また、開始早々に多くのベンチャーキャピタルがアプローチしてきました。これまで、いくつものビジネスを手がけてきましたが、人材も資金も集めるのが本当に難しかっただけに信じられない気持ちです。そのことに慢心しないよう、常に「Knock on Wood」(運が長続きするようにの意。欧米では自慢話をすると直後に災いが起きると信じられていたため、それを避けるためのまじないとして使われてきた言葉)しています。
また、事業のためにハイクオリティな人材を捜し当てることが重要だと思います。幸いなことに事業がうまくいっているおかげで我が社で働きたいという人がたくさんいますが、現在は23名の少数精鋭のチームで運営しています。例えば「Technorati:Tags」機能。これは6日間で作りました。優秀な人材がいれば機動力も高く、すばらしいことができるのです。
--では、現時点での競合はどこだと捉えていますか。DAYPOPやblogdexと比較されることも多いようですが。
彼らはビジネスでなく、個人のプロジェクトでしょう。AOLのような大手企業が個人と契約を結ぶということはしませんから、競争相手にはなり得ません。もちろん、個人ならではの面白さがあって、毎日のようにプロジェクトに変化が生じていますから、私たちにとっても刺激になりますよ。逆に、Technoratiが彼らのプロジェクトに関わったり手伝ったりできないかと、開発者に話してみたいと思っているのです。
ブログ以外、つまり従来のウェブサイトを検索したければ、Googleをはじめとした検索サービスを使えばいいのです。Technoratiは、もっとライブなサービスを実現しているので、現段階では同じようなサービスを提供している会社は存在しないでしょうし、大手の検索サービス会社からライブサーチに関する協力を求められたら、喜んでOKするつもりです。
--GoogleやYahoo!、MSNの規模であれば、買収のオファーが来る可能性もあるのでは。
あり得るでしょうね。私がシリコンバレーでいくつもの会社を立ち上げた経験から言わせてもらえば、「(他企業に)売るためのビジネスを作る」のは不可能。いいビジネスを作って初めて、明るい未来が見えてくるものだと思います。
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