絶好調楽天の拡大戦略に死角はないのか

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 楽天は19日、非常に好調な2004年6月中間期の連結決算を発表し、これまで積極的に展開してきたM&A(企業の合併・買収)戦略が正しかったことを証明した。三木谷浩史社長は、今後も個人向けのローンサービスへの進出に意欲をみせるなど、従来の「仮想商店街」の運営から完全に「総合ネット企業」への発展方針を明確にしている。果たしてこの“三木谷シナリオ”に死角はないのか。

 19日に発表された6月中間期の連結業績は、売上高206億2300万円(前年同期比2.7倍)、営業利益71億4900万円(同4.1倍)、経常利益73億1400万円(同4.3倍)と急増した。これは、昨秋に傘下に収めた宿泊予約サイト「旅の窓口」やオンライン証券のDLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)が連結決算に加わったためだ。しかし、最終損益は旅行サイトへの出資などに伴うのれん代の償却を行ったため、86億5000万円の赤字(前年同期実績4億1600万円の黒字)となった。

 また、同社の第2四半期(4〜6月)の連結業績は、主力の仮想商店街の「楽天市場」を主力とするEC(電子商取引)事業や、楽天証券を中心とした金融事業などが好調で、売上高108億3300万円(前年同期比2.6倍)、営業利益37億6600万円(同2.5倍)、経常利益38億800万円(同4倍)と非常に好調な決算となった。ただ、中国で航空券予約事業などを行う旅行サイト最大手「シートリップ・ドットコム」への出資に伴うのれん代の一括償却に伴う持分法投資損失などを計上したため、最終損益は90億6700万円の赤字となった。

 今回の決算の特徴について外国証券のアナリストは「本業のEC事業での着実な成長はもちろんのこと、三木谷社長の積極的なM&A戦略によって傘下に収めた宿泊予約サイト「旅の窓口」や旧DLJ証券などがいずれも収益拡大に大きく貢献していることがあげられる。したがって、三木谷社長は積極的なM&A戦略による“総合ネット企業”への脱皮に自信を深めている。ただ、短期間での相次ぐ買収によって財務面ではかなりの懸念が発生していることも確か」としている。

 この財務面での懸念というのは、短期間に大型のM&Aを加速してきたことに伴って発生してきたものが多い。例えば、それまで無借金経営を誇っていた同社が、旅の窓口の買収に伴って銀行から借入れをしたことで、175億円の負債が生じた。さらに、DLJ証券の買収の際に500億円弱の公募増資を実施したものの、今年6月末の長短借入金の残高は225億円に達している。さらに、特徴的なのは2002年12月期までは90%前後と非常に高い水準を維持していた株主資本比率は今年6月末の時点では10%強にまで低下してきている。

 さらに、決算で最終赤字が継続していることにも不安が残る。M&Aの積極化で売上高、営業利益は飛躍的な拡大をみせているものの、そのM&Aによって発生したのれん代の一括償却が続き四期連続の連結最終赤字となっているのが現状だ。今回明らかにされた個人向けの消費者ローンビジネスについても、一から立ち上げる可能性は少なく、M&Aによる参入の可能性が高い。したがって、しばらくはM&Aに伴う償却負担が増加する傾向が続き、最終赤字からの脱却は先送りとなりそうだ。

 楽天の株価は4月16日に年初来高値94万3000円を示し、一時は時価総額が1兆円を超える時期もあった。その後株価は調整に入っていたが、8月4日には58万7000円で底打ちして出直り歩調となり、70万円台へと回復してきている。(超眼)

※のれん代:各企業が持つ「ブランド」「ノウハウ」「顧客との関係」「従業員の能力」など、無形固定資産のこと。無形固定資産を多く保有する企業は、さほど保有していない企業と同じ条件で競争をした場合に、無形固定資産を保有する分だけ収益を上げることができるとされている。企業が他社を買収する際にかかる金額には、買収する企業の純資産総額に加えてのれん代がかかるとされている。つまり「買収金額−買収される企業の純資産総額=のれん代」と定義される。無形固定資産の形成は、企業の地道な活動の積み上げによって作られるものであり、長い時間が必要とされる。のれん代を支払う意義は、無形固定資産を作るための時間を買うことであるとされている。企業会計原則では、のれん代は、一定期間で償却するように求められている。

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