IBMの復活--DAY3 リサーチ:研究と市場の架け橋 - (page 2)

Michael Kanellos(CNET News.com)2004年07月28日 10時00分

先端研究

Day3 リサーチ:研究と市場の架け橋

 IBMの研究は主に5つの領域に分けることができる。ナノテクノロジー、データ検索、スーパーコンピューティング、大規模システム管理、そしてヒューマン・マシン・インタラクションだ。

 これらの研究はどれも、IBMのビジネスと密接に連携している。今後数年でカーボンナノチューブやスピントロニクスといったナノテクノロジーは、チップ性能の向上やマイクロプロセッサの消費電力の削減に貢献することになるだろう。

 「小型化は有効な手法だったが、限界が見えはじめている」とIBMアルマデン研究所のディレクターRobert Morrisはいう。スピントロニクスを利用してチップのオンオフを切り替えられるようになれば(つまり、ごく小さな磁場を正確に制御できるようになれば)、「50年前のトランジスタの登場に匹敵する重要性を持つことになる」とMorrisは主張する。

 また、スーパーコンピューティング分野の研究成果は、商用の大容量サーバに応用することができる。現在、IBMはテキサス大学と共同で、チップ上にスーパーコンピュータを構築する野心的なプロジェクトを進めている。うまくいけば、2010年には毎秒1兆の演算を処理できるチップが登場する予定だ。

 一方、データの検索と構造はソフトウェア部門が特に力を入れているテーマだ。企業はデータベースとサーバに巨額の資金を投じてきたが、リアルタイムで売上の状況を調べたり、同一顧客の情報を複数の社内データベースから引き出したりすることすら未だに簡単とはいえない。

 「人間はあちこちに情報を蓄積する。それが厄介なところだ」とMattosはいう。

 昨年、IBMはミドルウェアの新製品DB2 Information Integratorをリリースした。すでに約1300社が多様な場所に格納された情報にアクセスするために、この製品を利用している。また年内には機能強化版のMasalaがリリースされる予定だ。Masalaにはデータマイニング用のアドオンCriolloが搭載される。

 これまでの成果は上々だ。同シリーズのベータテストに協力したKawasaki Motorsは、販売店の部品在庫を追跡するシステムを構築し、修理に要する時間を短縮した。Merrill Lynchはこの製品をソフトウェアライセンスの追跡に利用して、コストを削減している。

 データマイニングのパイオニアAgrawalは今、顧客データをスクランブル処理し、顧客のプライバシーを完全に確保した上で、企業が購買傾向やその他のパターンを分析できるシステムの開発に取り組んでいる。

 研究所の成果はサービス部門にも活かされている。IBMはミシガン州立大学のロジスティクス研究所やその他の機関に資金を提供し、サプライチェーンの分析や人材の獲得に役立てている。

 先端研究の分野では、「自己修復型システム」の実現を目指す自律型コンピューティングの研究が進んでいる。現在の研究の中心は、人間の介入を必要とする機能の自動化だ。

 この研究を支えるものとして、IBMは機器の使いやすさの改善にも力を注いでいる。北京研究所ではアジア言語のための手書き文字認識システムや、音声で照明、警報装置、食器洗い機、コンピュータなどを操作するデジタルホームの研究が進んでいる。

 一方、米国の研究所ではEメールとインスタントメッセージングの融合や、「NotesBuddy」技術を利用したスピーチとアプリケーションの統合に関する研究が行われている。試験版ソフトウェアはすでに3万人近くがダウンロードし、IBMにフィードバックを返している。少し前なら、アプリケーションの試験は数十人程度で行われていたはずだ。

 アルマデン研究所ではIBMの研究者と人類学者、行動経済学者が協力して、職場の社会学的傾向を分析し、新しい技術をスムーズに組み込む方法を模索している。

 IBMのすべてのプロジェクトがそうであるように、IBMの研究でも実用性が重視される。

 「抽出したデータから結果を予測するモデルを構築している」とアルマデン研究所のディレクター、Jim Spohrerはいう。同氏によれば、研究の成果を購入する企業は口を揃えてこう言うという。「さあ、投資対効果を見せてくれ」

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