ハリウッドの大立者、「白鳥の歌」を唄う

John Borland(CNET News.com)2004年07月08日 10時00分

 流麗な弁舌で、約60年にわたりハリウッドの声をワシントンDCに代弁してきたJack Valenti。彼の映画産業を代表するロビイストとしての日々は終わろうとしている。

 先日、Valentiは後任が決まり次第、全米映画協会(MPAA)の会長兼最高経営責任者(CEO)の職を辞する予定であることを発表した。映画業界は今、テクノロジー業界と泥沼の愛憎劇を繰り広げている。シリコンバレーが生み出した数々のツールは、映画制作の世界に革命を起こし、「ロード・オブ・ザ・リング」や「シュレック」、一連のPixar映画のような大ヒット作品の制作を可能にした。

 その一方で、インターネットで映画ファイルを交換したり、DVDの違法コピーを作成したりする人々も登場した。ハリウッドの映画会社はこうした人々を、トロイの町になだれ込み、片端から略奪を繰り返したギリシャ人になぞらえる。映画会社の幹部は自分たちのビジネスモデルが音を立てて崩れる恐怖におびえ、音楽業界が数年前から陥っている苦境と同じ状況が自分たちの業界にも及ばないことを祈っている。

 ここ数年、Valentiはデジタル技術を使った違法コピーを阻止あるいは妨害する包括的な技術的措置の法制化を米連邦議会に訴えてきた。MPAAが提出した著作権保護提案のうち、もっとも大がかりなものは却下されたが、残りの大半は米連邦通信委員会(FCC)などで取り上げられ、取り組みが少しずつ前進している。

 ロビイストというより、ハリウッドの脚本家の手で仕立てあげられたかのような名演説で名高いValentiは、ハリウッドの華やかで魅惑的なイメージを体現してきた。彼はもっとも古典的な意味で、映画の魅力を信じている人物だ。観る者をこれほど物語にひきこむことのできるメディアはほかにないとValentiはいう。

 しかし、彼の名は野放図に広がる違法コピー技術(家庭用ビデオから今日のPtoPツールまで)と何十年にもわたって闘い続けた人物として記憶されることになるだろう。会長との別れが近づくなか、MPAAは先日、インターネットを利用した映画ファイル交換の監視を強化することを発表し、個人のコンピュータユーザーを相手取って訴訟を起こすことも辞さない構えを見せた。

 CNET News.comはValentiにインタビューを行い、ハリウッドとテクノロジーの変わりゆく関係について、また彼が長年MPAAで果たしてきた役割について話を聞いた。

--MPAA会長から退かれるということですが、映画業界は違法コピーやテクノロジーに対抗できるようになったのでしょうか。あなたや音楽業界が進めてきた法制化の取り組みは成果を上げたのですか。

 やるべきことはまだたくさんあります。アナログテープやCDの著作権侵害に関しては、いくつかの前進がありました。しかし、インターネットに関しては・・・これからが正念場です。インターネットは今後、深刻な問題となるでしょう。たとえば、カリフォルニア工科大学 (CalTech)やInternet2、その他のハイテク研究機関が参加して、(ダウンロード)時間を競い合うに実験を行っていますが、CalTechはDVD1枚分のデータのダウンロードを5秒で完了したそうです。Internet2は1分でした。つまり、いずれものの数分でDVDをダウンロードできるようになる--早ければあと18カ月、遅くとも2年半といったところでしょうか。われわれはこのときに備えて行動しています。

 しかし、私は米国の技術力を信じています。IT業界の良心的な人々も協力してくれていますから、あと18カ月もすれば、必ずや映画に丈夫な保護服を着せられるようになる--私はそう楽観しています。

--連邦議会や政府機関の理解を促すにあたって、あなたは大きな役割を果たしてきました。この問題に対する国--特に連邦議会と司法省--の対応には満足していますか。

 連邦議会は--少なくともその大部分は--知的財産が米国の重要な輸出品であることをはっきりと理解しています。知的財産は米国の国内総生産(GDP)の5%以上を占めています。映画の制作、配給、あるいは小売ビジネスに関わっている人は100万人に上ります。つまり、知的財産は米国の経済成長を支える強力なエンジンなのです。今後、このエンジンが衰えたり、収縮したり、あるいは分裂したりすることは彼らの望むところではありません。ですから、連邦議会は知的財産の保護を十分に理解し、支持しています。

--あなたの在任中にテクノロジーは大きく変化しました。それは違法コピーのテクノロジーに関しても、映画の制作や配信のテクノロジーに関しても同様です。シリコンバレーとITコミュニティ、そしてハリウッドの関係はどのようなものになっていくのでしょうか。

 両者の関係はもっと協力的になっていくと思います。この点に異論はないでしょう。ほんの数週間前、カリフォルニアで、米国のIT業界を代表する人々と映画関係者が集う会議が開かれました。これは実に実り多い会議で、私の見方では、とても啓示的なものでした。私は両者の関係に非常に満足しています。両者の協調的な努力によって、この関係はさらに進化していくでしょう。

--「シュレック」、そしてもちろんPixar作品など、現在の大ヒット映画の多くはハリウッドの産物であると同時に、テクノロジーの産物だということもできます。

 映画がですか。

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