logo

上場1年、セイコーエプソンの株価がいまひとつ重いわけ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 昨年6月に大物上場として鳴り物入りで新規公開したセイコーエプソンの株価の動きがいまひとつ鈍く、上値の重い状態が続いている。前2004年3月期の連結経常利益が、前々期に比べて76.7%増の736億円と大幅増益を達成するなど順調な業績推移をみせているうえに、次世代薄型ディスプレイとして注目を集める有機EL(エレクトロルミネッセンス)で世界最大となる40インチの試作品開発に成功するなど、好材料が豊富であるにもかかわらず、なぜ株価の推移が芳しくないのか。株式市場の評価の背景を探った。

 同社の2004年3月期の連結決算は、売上高1兆4132億4300万円(前々期比6.9%増)、経常利益736億8800万円(同76.7%増)、純利益380億3000万円(同3倍弱)の大幅増益となり、純利益は株式上場前の2001年3月期を上回り、3期ぶりに過去最高益を更新した。インクジェットプリンターの世界的な販売価格下落が響き、情報関連機器部門は微増収減益となったものの、電子デバイス部門は携帯電話のカラー化・高機能化の進展が追い風となり、営業損益ベースで前々期比700億円近く改善した。

 ところが、今2005年3月期の連結業績見通しは、売上高1兆4790億円(前期比4.7%増)、経常利益750億円(同1.8%増)、純利益430億円(同13.1%増)と連続最高益更新を見込むものの、その増益幅は小幅に止まっている。準大手証券のアナリストは「今期の利益見通しが、事前の市場予測のコンセンサスに比べてかなり小幅に止まった。これは、会社側が今期もインクジェットプリンタのさらなる価格低下を見込んでいるうえに、電子デバイス事業でも携帯電話のカラー化比率の上昇と、プロジェクションテレビの普及に伴って利益面ではピークアウトすることも、業績が停滞する要因といえそうだ」としている。

 前3月期の利益が大幅増益となったものの、今期の業績見通しが小幅に止まったことから、株価は決算が引け後に発表された4月27日の4730円から下落傾向となり、5月17日には3650円と短期間に23%もの下落となってしまった。翌5月18日の取引時間中に「40インチの有機EL開発を発表」との情報が市場に伝えられ、株価はようやく反転上昇の兆しをみせはじめたが、戻りは鈍く4000円前後の水準に止まっている。

 同社は昨年6月24日に新規上場を果たし、初値は3690円でスタート。売上高が1兆4000億円超の超大物企業であるうえに、プリンタ、半導体というIT関連の事業内容や知名度の高さから、大きな話題を集めての上場となった。しかし、株価はその大きな期待に応えきれず、昨年8月には3000円割れ寸前まで下落した。その後は業績の好調見通しと、全体相場の回復に支えられるかたちで株価は上昇し、今年1月5日には5100円の上場来高値をつけた。しかし、その後1月29日に、前3月期連結第3四半期(2003年10〜12月)決算を発表。携帯電話向けカラー液晶ディスプレイなどを手掛ける電子デバイス部門は堅調だったものの、シングルファンクション(単機能)プリンタの単価下落やインクジェットなどの消耗品が伸び悩んだことで情報関連機器部門が落ち込み、営業利益が前年同期比3.3%減の318億9800万円となったことが嫌気され、株価は2月25日に3590円まで下落した。つまり、これまでの株価の動きを振り返ると、それまで順調に回復していた株価が決算発表をきっかけに下落するというパターンを繰り返していることがわかる。

 外国証券のアナリストは「わかりやすくいえば、これまで利益成長を支えてきたプリンタ、電子デバイスともに販売数量は拡大基調にあるものの、価格の下落により採算が悪化しているということだ。さらに、今期についてはこうした価格下落に対応するため、製造・販売面でのコスト引き下げに取り組むための経費を織り込んでいる面もある。また株価面では、規模や事業内容からキヤノン、リコーなどが比較対象になるため、両社の株価水準によって上値が抑えられている面もあるようだ。今後は、2007年3月期に連結売上高1兆7700億円、売上高経常利益で9%以上を目指すという中期計画を達成できるかどうかに焦点が移ってくる」としている。

 さらに、その次の段階で注目されそうなのが、同社が世界で初めて開発に成功した40インチ型フルカラー有機ELディスプレイだ。有機ELディスプレイは液晶に比べ、高コントラスト、広視野角、高速反応であるうえに、自発光材料の使用で薄型軽量化が可能なため、次世代のフラットディスプレイとして注目されているが、従来は大型TFT基板上への有機層の成膜が困難とされていた。同社では独自のインクジェット技術を応用し、大型TFT基板に対応した有機層成膜のインクジェットプロセスを開発、世界最大規模となる40インチのフルカラー有機ELディスプレイのプロトタイプを開発したもので、2007年の製品化を目指しているという。

-PR-企画特集