APNICに移行してもIPアドレスの番号変更は不要で、すでに割り当てられているIPアドレスはそのまま利用できる。このため、価格差がありすぎるとJPNICから割り振りを受けている企業がAPNICに流れかねない。国内でもソフトバンクBBなど一部の事業者はAPNICから直接割り振りを受けている。
JPNICはその収入の3分の2を上位10社に依存しており、大手事業者がAPNICに移行すれば大打撃となる。そうなる前に手を打ちたいというのがJPNICの本音なのだ。
JPNICではAPNICの価格水準に合わせるため、3年後の2008年度をめどに維持料の見直しを行う。/15以下までの事業者の料金が安くなる見込みだ。「可能であれば2007年度などに前倒しで料金を引き下げたい」(佐藤氏)
さらにJPNICでは会員へのインセンティブとして、2007年度までの3年間、維持料を一律10万円減額する。実はJPNICの会員は年々減少しており、会費収入の減少が大きな問題となっている。「JPNICの会費収入は2001年から毎年4000万円ほど減少している」(佐藤氏)。これは企業のIT投資の抑制が続く中、各社が支出の抑制に動いているため。JPNICは会員を優遇する姿勢を打ち出すことで、会費収入の減少を食い止めたい考えだ。
割り振り基準の適用も緩やかに
JPNICではAPNICに事業者が流れないようにするため、料金以外にもさまざまな事業見直しを行っている。JPNICでは今までAPNICに比べて割り振り/割り当て基準が厳しいといった批判があった。そこでJPNICでは現在、一度に割り振る量を増やすとともに、審議対象の割り当て件数も減らしているという。
「APNICとJPNICは同じ審理基準を利用している。しかしJPNICもAPNICから割り振りを受けているため、APNICの基準に通そうとして多少厳しめに適用していた。また、APNICと適用基準をすりあわせる時間もあまり取れていなかった。そこで2003年度は我々の職員2名をAPNICに派遣し、足並みを揃える努力をした。現在は、APNICと比べて適用が厳しいといったことはない」(前村氏)
2003年度の実績を見ると、1回あたりの平均割振量は前年比76%増となり、審議対象割当数も0.74%と前年に比べ44%少なくなった。事業者の利便性は確かに高まっているようだ。
気になるのは収入の減少がJPNICの運営に与える影響だ。2003年度のIP事業収入は4億4132万円だが、新料金体系を導入した2005年度の収入は2億6043万円にまで減る見通しだ。この点について前村氏は、「次期レジストリシステムが稼働すれば経費が大幅に削減できる」と話す。今までIPアドレスの割当業務は手作業が中心だったため、自動化で収入減少分は吸収できるという考えだ。
2008年度以降は維持費の引き下げによってさらなる収入減となるが、「今後IPアドレスの総数は確実に増えるだろう。しかしアドレスが増えても運用コストはさほど変わらない」(前村氏)と話し、経費削減や手数料の増加によって運営費はまかなえるとの見通しを立てている。
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