企業カルチャーとITの深い溝

木村裕之 (ベリタスソフトウェア社長)2003年11月06日 10時00分
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 ストレージなどの管理ソフトウェアを提供する企業として、「競合はどこか」といった質問をよく受ける。ベリタスソフトウェアではマルチベンダーをサポートする総合的なソリューションを提供しているため、分野別の競合企業は存在しても、トータルな視点から同じ土俵で戦える企業は他にないと自負している。

 似たようなソリューションを提供している競合企業より、われわれには形として見えない大きな敵がいる。それは今のビジネス環境、つまり「企業カルチャー」だ。

 これは主に日本企業に当てはまることなのだが、日本ではITが経営に結びついていないことが多い。米国の企業にはCIO(最高情報責任者)が存在し、そのCIOが企業戦略に結びついたIT戦略を決め、企業全体のソリューションを見つけてくる。実績を上げたCIOがCOO(最高執行責任者)となるケースもまれではない。

 一方日本では、企業のITが組織に依存したものとなっている場合が多い。たとえば、プロジェクトごとにITインフラの構築をSIerにアウトソースするため、企業全体としてのITがまとまった形で存在しないのだ。ひとつひとつのプロジェクトにおいてITの最適化は進んでいるが、それを企業全体から見た場合、すべてがばらばらに存在している。さらには、ITインフラがアプリケーションとサーバの結びつきといった点でのみ語られ、ストレージやデータを管理するという視点で見られていないのが現状だ。だが、データを管理して企業全体の戦略がどこにあり、それをITとどうリンクさせていくのかを把握することは非常に重要だ。企業全体のビジネスインフラとしてITを構築し、そのうえで企業戦略を立てるべきである。ITが経営のサポートをできないようでは、企業は競争力をつけることができない。

 現在、企業合併や海外進出などがさかんに行われ、多くの企業でグローバル化が避けられない状況となっている。ITインフラもワールドワイドなレベルで管理しなくてはならないわけだが、基本的に企業にはさまざまなプラットフォームが存在し、IT管理者は異機種混在のIT環境を何とか管理せざるを得ない。この混在したプラットフォームを全て捨て、1ベンダーのプラットフォームに入れ替えてしまえば管理も容易になるだろう。だが、厳しい経済状況が続く中、これは現実的な話ではない。たとえそのようなことができる企業が存在したとしても、それで競争力がつくとは思えない。そこで、既存のリソースを活用しつつ、システムを柔軟に統合することが求められている。しかも、迅速にそれを実行しなくてはならないのだ。そこに目をつけたベンダー各社がこぞって「ユーティリティコンピューティング戦略」を打ち出しているのはそのためだ。

 多くのベンダーで3年後、5年後を見据えたユーティリティコンピューティング戦略が徐々に出てきているが、ベリタスソフトウェアではすでにソフトウェアを使って異機種環境でのIT基盤統合を実現するユーティリティコンピューティングツールを用意している。だが、いくらわれわれベンダーがシステム統合のお膳立てをしても、企業カルチャーが変わらないのでは話にならない。

 今の状況では、ITが企業にとってお荷物となっている。死んでいるITプロジェクトやシステムを抱えている企業も多いはずだ。このような状況の中で、誰がシステム全体を理解できるだろう。たとえば、ストレージをひとつ追加する際、企業のITインフラ全体に対してどのような影響を与えるのか完全に理解している人はいるのだろうか。自社のシステムのことも理解できていない企業が、勝ち残っていけるのだろうか。

 企業の中でのITの位置づけを変える、これが勝ち残るための第一歩だ。これが変われば、IT業界にも大きな波がやってくる。この波は必ず来るもので、また来なくてはならないものだ。

 日本企業もそれなりに企業の歴史やカルチャーを作ってきたため、一歩を踏み出すのは大変だろう。だが、グローバル社会で日本企業が勝ち進んでいくためには、その一歩が重要なのだ。企業もそれに気づきつつあり、変革も徐々に起こっている。そして、企業が歩き始めたとき、その歩みをサポートする準備はこちらで既に整えている。われわれは、そのような企業が動き出すのを待っている。(談)

木村裕之
ベリタスソフトウェア代表取締役社長。サン・マイクロシステムズにて営業開発統括本部、本部長やエンタープライズ営業統括本部で本部長を経験した後、同社常務取締役を経て、2003年1月より現職。

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