マイナビ転職編集部
2008/01/16 00:00
今、IT業界では、ITアーキテクトとコンサルタントが注目され、それらに関する出版物も書店の専門コーナー等でよく見かけるようになってきた。
マイナビ転職 編集部は、今回、この2つの職種の概要とキャリアパスや適性について、ITエンジニアのキャリア形成やスキルアップをテーマに書籍、Web記事を数多く執筆している『克元 亮』氏に解説をお願いしてみた。
あなたは、ITアーキテクト、それともコンサルタントのどちらを目指すべきなのだろうか? 専門家である克元氏は、以下のような興味深い情報を教えてくれた。
中国やインドなど、アジア諸国へのオフショア開発が拡大しています。情報通信白書によると、オフショア開発の規模は、2007年度は2005年度の約1.6倍、2010年には約2倍の1995億円に達するものと予測されています。大手システムインテグレータ各社は、国内の人材不足やコストメリット面から、オフショア開発を積極的に進めているのが現状です。
オフショアによって、下流工程に携わるプログラマやSEの仕事は、海外へ流出し国内は減っていくことが予想されます。一方、提案や要件定義など、ニーズを分析したり、仕様を決めていく「上流工程」は、顧客とのコミュニケーションが多くオフショアするのが難しくなっています。 1990年代から同じ英語圏であるインドへのオフショアで先行する米国では、国内のプログラマが年に10%近くも減少する傾向が続いています。日本は、同じ漢字圏である中国へのオフショアが約80%を占めており、米国とインドの関係に近い道を歩むに違いありません。
10年ほど前までは、IT業界の職種といえば、SEとプログラマ、プロジェクトマネージャの3つでした。技術やIT製品の選択肢が狭いため、何でも屋的なSEがいれば、様々な技術を抑えることができました。
しかし、ITが多様化している現状では、分野別に専門化しなければ対応できない時代になっています。また、ITを使う顧客企業では、経営の効率を上げるため、システムの開発にかかわる仕事をアウトソーシングする傾向が強まっています。このように、シーズ、ニーズの両面からITの仕事は専門化が一気に進み、プログラマからSE、プロジェクトマネージャという単線型のキャリアパスが複線化することになりました。
IT業界に入れば、普通はプログラマからスタートし、経験を積むにしたがって業務系、もしくは技術系のスペシャリストへと成長します。そして、業務・戦略指向を強めればコンサルタント、技術・戦略指向を強めればITアーキテクトへ進みます。また、コンサルタント、ITアーキテクトともマネジメント指向を併せ持っており、マネジメントを極めるとプロジェクトマネージャとなります。
情報サービス産業協会の調査によれば、この3つの職種は、IT業界でもっとも不足している人材としてあげられています。中でも、ITアーキテクトとコンサルタントは、多くの企業が業務遂行上の不足感を訴えており、需要と供給の関係から報酬レベルが高い傾向にあります。
ITアーキテクト、コンサルタントとも、システム構築プロセスの最上流工程に携わり、顧客のIT戦略やシステムアーキテクチャの立案にかかわっていく「クリエイティブ」な職種です。そのため、モデリング手法やロジカルシンキングなど、共通のスキルが多々あります。
ITアーキテクトは、多数ある技術の将来性や標準化の動向を見極めて組み合わせ、ユーザーニーズに合わせて最適なシステムアーキテクチャを描く専門家です。システムの全体骨格をデザインする建築家(アーキテクト)とも言えます。
ITアーキテクトの専門分野は、アプリケーション、インテグレーション、インフラストラクチャに分かれます。アプリケーションはユーザーサービスを実現する画面やデータなどの機能系で、インテグレーションはシステムを構成する部品やシステム間の連携、インフラストラクチャはネットワークやOSなどのプラットフォームになります。
コンサルタントは、顧客企業の経営戦略やIT戦略の課題を分析し、解決策として戦略見直しや業務改善などを支援します。顧客ニーズに合わせて最適な建物を提案する建築コンサルタントとも言えます。
コンサルタントの種類には、ビジネスコンサルタント、ITコンサルタント、ERPコンサルタントの3つがあります。ビジネスコンサルタントは戦略立案から業務改善まで、ITコンサルタントはIT戦略立案からIT製品の導入支援、ERPコンサルタントはERPパッケージを活用した業務改善支援が専門です。
ITアーキテクトやコンサルタントには、どんな人でもなれるというわけではありません。適性をあげると次のようになります。
1.共通の適性
まず、適性としてあげられるのは、幅広い視野と好奇心でしょう。技術系、戦略系としてトップの人材であるだけに、常に最新動向をウォッチし、キャッチアップしていく努力を重ねなければなりません。また、問題の本質を見極めて合理性のある解決策を導くための粘り強い思考や、様々なステークホルダーを説得して協力させるためのコミュニケーション力も求められます。
したがって、常に新しいアイデアを探して専門雑誌や専門サイトなどをよく読み、新しい技術や製品が出たときに仕組みが知りたくなる人、物事を突き詰めて考えるのが好きな人、コミュニケーションに自信のある人に向いています。
2.ITアーキテクト
ITアーキテクトは、制約だらけの中でユーザー要求とアーキテクチャの最適性を両立する解を導くという困難な問題に立ち向かうことが多くあります。そんなときでも、臆せず取り組むチャレンジ精神が必要です。また、新旧さまざまな技術がある中で、採用する技術や製品の将来性やリスクを見極めて、中立的な立場で組み合わせなければならず、バランス感覚も要求されます。
したがって、困難な状況ほど解決意欲がわく人、物事の裏側を考えるのが得意な人、多面的な視点で冷静な判断ができる人が向いています。
3.コンサルタント
コンサルティングでは、問題を突き詰めて合理的な解決策を見出していきますが、顧客企業の経営者や実務担当者の意向を無視することはできず、論理性だけではなく相手の感情面にも配慮するだけの高い共感能力を持つ必要があります。また、顧客企業の戦略や業務の視点に立ち、成果にこだわって顧客の実態に合った現実的な創造性を発揮しなければなりません。
したがって、人から感謝されることがやりがいにつながりやすい人、なんにでも目的を明確にして取り組む人、やり慣れたことでもアイデアを出して改善する人に向いています。
景気の拡大とともにシステム化の需要も急増しており、仕事を作りだす先導役として、ITアーキテクトやコンサルタントは引っ張りだこになっているのが現状です。人材募集データを見ると、一般的に報酬レベルが高く年齢面の制限も緩い傾向が見られます。
二つの職種を目指すとき、書籍やセミナーでの情報だけでは限界があり経験を積まなくてはなりません。しかし、現在の職場で機会が得られないなら、転職も含めて自分の環境を変えることも一考に値します。転職するなら、売り手市場のいまがチャンスといえるのではないでしょうか。
ソフトハウスのプログラマからキャリアをスタート。その後、システムインテグレータへ転職。ITアーキテクトやコンサルタントとして、10年以上にわたり大手製造業や金融機関へのIT適用支援、アーキテクチャデザインに携わる。現在はプロジェクトマネジメント、マーケティングに従事。
SEのキャリア形成やスキルアップをテーマに、書籍やWeb記事を企画・執筆。近著に、『ITアーキテクト × コンサルタント 未来を築くキャリアパスの歩き方』(ソフトバンククリエイティブ)、『SEの文章術』(技術評論社)、『SEのための聞く技術』(日本評論社)などがある。日々の執筆や読書を、ブログ『克元亮の執筆日記』
(http://katsumotoryo.com/)でつづっている。
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