マイナビ転職編集部
2008/01/16 01:01
「面接での受け答えがどうも…」とお嘆きのみなさま! 他人の面接の徹底分析を見て、我が面接の教訓を得ようではないか。第1回の挑戦者(求職者)は、現在システム開発の契約社員として働く30代半ばの女性。収入アップ&キャリアアップを目標に、中堅システム系企業のプロジェクトリーダーを希望して面接に挑む。
田辺 愛子さん・仮名
[34歳 ソフトウェア開発会社契約社員]
業界での経験年数:7年
職務経歴:WEB系開発、クライアントサーバ系開発、DB移行などのプロジェクトにプログラマとしての参加経験あり。使用言語はUNIX/C、Oracle[PL/SQL]、Javascript、VB+MS、SQL Serverなど
現在は100人規模のソフトウェア開発会社に契約社員のプログラマとして勤務。契約更新を前にし、転職を決意。
ここは中堅システム会社の面接室(仮定)。面接官である髭さんの机には、田辺さんの履歴書と職務経歴書。田辺さんは緊張しながらも名前を名乗り、「よろしくお願いします」と挨拶をする。髭さんは履歴書を見ながら質問を始めた…。
面接官 まず卒業された学校ですが?
田辺さん グラフィックデザインの学校です。もともと興味があったので、ちょっと勉強しようと思って…。(1)
面接官 デザインもプログラムも、モノをつくる過程では似ていますね。
田辺さん 学校を出たあと、しばらくデザイン制作会社でCD-ROMの制作をしていました。そこで開発言語に触れることになって…。(1)でも給料に不満があって、それとシステム開発系に興味があって転職しました。
面接の冒頭、田辺さんは緊張のためか伏目がちだ。(2)
面接官 次の会社は?
田辺さん 100人程の規模の会社です。わりと堅い仕事が多くて、自分がやった一番大きな仕事は、区役所の住民台帳に関連する申請システムをつくっていました。
面接官 プロジェクトの規模は?
田辺さん 30人ぐらいです。
面接官 D/Bはやりましたか?
田辺さん はい。そこでは設計をやりました。
面接官 テーブル数は?
田辺さん 40近くになると思います。
その後、髭さんは職務経歴書を見ながら、次々とプロジェクトの規模と、そこでの田辺さんの仕事内容・技術力・ポジションを確認していく。そして履歴で気になる点が…。(3)
面接官 2000年に同じ会社で正社員から契約社員になった理由は?
田辺さん 給料的な部分で…。年収で50〜80万円ぐらい上がりました。(3)
面接官の髭さんは、履歴書の確認から始めている。ここでの受け答えの態度や会話の語尾、こういった社会人としての基本的な質を見られている。
「田辺さんは初め、私の目を見ていなかったんです。まず人間としての温かみに欠けると思いました。リーダー職は初対面の人とでもすぐに人間関係を築かなくてはいけないわけですから、面接でも面接官との人間関係を築く姿勢がほしいですね」と髭さん。
田辺さんの転職理由、正社員から契約社員になった理由は2つとも給与のアップ。給与のアップは正当な理由であるが、面接官は「会社への忠誠心」「仕事へのモチベーション」を推し量っている。“せっかく採用してもすぐに辞められるようでは”と考える。ここでは「スキルアップのため」と答えたあと、それに伴い給与アップしたと答えるほうがベターだ。
さらに髭さんは職務経歴書を見ながら、「使用しているD/Bは?」「プログラミングは?」「どうやって勉強したのか?」など、細かな質問が続く。田辺さんは専門職としての基礎的なキャリアがあり、システムプログラマとしても勉強熱心な人で、仕事も楽しんでいる。しかし、問われるのはプロジェクトリーダーとしてのキャリアだった…。
田辺さん D/B開発の仕事もやった経験があります。
面接官 ではPHPもサイト系ですか?
田辺さん はい。企業の新規サイトを立ち上げるということで、バックエンドからの自動更新をPHPでやりました。(4)
面接官 完全新規ですか?
田辺さん はい。医療系で電子カルテというのをつくっている企業で、業界の中では知名度もあり、すでにドメインも取得されていたんです。どうやってシステムを構築して運用していくかっていうところから始めました。
面接官 webデザインには携わりましたか?
田辺さん デザインはデザイナーがいるんで、あまり関わってはいませんでした。(5)
面接官 コンセプトづくりはどうですか?
田辺さん はい。楽しい仕事でした。(5)
面接官 どういうコンセプト?
田辺さん 非常に知名度の高い商品だったので、競合他社よりもコストが高かったんです。そこを逆手にとって、高級感、清潔感、一流企業ということを、お客様であるお医者さんにアピールして…。
面接官 文章とかは関わりましたか?
田辺さん いえ、こういう文章でお願いしますってことで…。(5)
面接官 この仕事以上に規模の大きなプロジェクトは経験されていますか?
田辺さん いえ、ありませんね。
面接官 一番得意とするものは?
田辺さん D/Bを多くやっているので、D/Bを絡めたソフトウェアづくりとか。D/Bは設計にも携わっていたので非常に強くなったと思っています。(6)
田辺さんの34歳という年齢を考えると、どの程度の規模のプロジェクトに関わった経験があるのかは大切なこと。髭さんは、「システム・インテグレーターでのプロジェクト・リーダーを望むなら、27、28歳ぐらいからキャリアプランを考えないと」と話す。
ここでの髭さんは、田辺さんがプロジェクトスタッフの一員として、全体にどう関わってきたかを細かく聞いている。コンセプトづくりを楽しんでいる点は評価できるが、ほかはあまり深く関わっていないことがわかる。「お客様に提言した経験でもあれば、その姿勢を評価しようとしたが、訴えるものがなかった。こんなときは、他のプロジェクトの話でもいいから、自分が積極的に関わった案件を話してPRする意欲が欲しい」と髭さん。
明確に得意なものについて語るのは絶対に必要だ。この点、田辺さんは自分の方向性をはっきりと答えているので評価できる。
田辺さんは、プロジェクトのメンバーの1人としてのキャリアはあるが、リーダーのキャリアはあるのか? 髭さんは面接の核心へ…。
田辺さん サイトリニューアルのリーダーをやりました。半年でやってアフターメンテナンスが3カ月でした。
面接官 何人でやりましたか?
田辺さん 下に1人です。優秀な開発者でした。
面接官 リーダーとしての経験はあまりないようですが、自分でできると思いますか?
田辺さん まぁ、できると思います。
面接官 根拠は?
田辺さん 細かい部分まで要件定義はきちんと考えて、スキルなども考えてプランを持って…。
面接官 技術的な進捗の把握はできると思いますが、お客様との折衝、スタッフのスキルの理解、人間関係、人員構成、問題解決とかありますが、その辺りはどうでしょう?
田辺さん その辺りは経験がないんですが、最優先事項を見つけていけば管理できると思います。人員を増やすっていうのは無理だと思います。(8)
髭さんはプロジェクトリーダーとしての資質を確かめるために、「お客様が求める要件が変わってきたらどうしますか?」「トラブルがあって、納期が守られなかったらどうしますか」「プロジェクトを成功させるポイントは?」と矢継ぎ早に質問を繰り出す。田辺さんは具体的な問題解決の経験を語ることはできなかった。そして人間関係についての質問では…
面接官 リーダーを目指すなら、プロジェクトの中に性格的に合わない人もいると思うんですよ。どういうふうに接しますか?
田辺さん 非常に難しいと思いますが、なるべくコミュニケーションをとって、頑張って…。
面接官 過去に合わない人がいたとき、うまくやろうと努力しましたか?
その後、髭さんは田辺さんが目指すシステム開発のスペシャリストとしての質問に変わり、面接は終了した。
髭さんは、「大きなプロジェクトのリーダーをやりたいって、いくら口で言っても、実際にやった経験がないと絶対に無理なんです。プロジェクトの規模でいうと、30人/月ぐらいの経験がないと採用はされないでしょうね」と語る。この点で田辺さんは会社が求めるキャリアを有していなかったことがわかった。
髭さんは、「田辺さんは基礎的スキルのある人」と評価していた。ここでは「数年後にリーダーになれる資質があるのか?」という質問をしている。しかし田辺さんの答えは、誰でも話せるような正論ばかりだった。
リーダーとしての基本的な資質に関する質問だ。髭さんは「田辺さんは34歳で、いろんな経験もしているようです。ただ、まとめる力、つまりマネジメント能力については高くなさそうだった。だから人間関係についての質問をしたのですが、ここでも気が合わなかった人を積極的に受け入れようという姿勢が見られなかった」と語る。ここで髭さんは不採用の判断をしている。
システムエンジニアの方で、プロジェクトリーダーを望む方はけっこう多いんです。ただ田辺さんがそうだったように、経験がないと難しいですね。それと田辺さんはメンバーとしてスタッフを引っ張っていくモチベーションを感じられませんでした。その努力も大事だし、数年後には管理職になることを求められているわけですから、マネジメント能力も問われますね。
田辺さんのやりたいことを聞いていくと、『システムの開発をやっていきたい』とスペシャリスト志向なんですよ。スペシャリストとしての資質を持っているのにプロジェクトリーダーを望むということは、ようするに自分のキャリアプランをマネジメントできていないということです。応募した会社が望む人材要件と、田辺さんが進む方向が違っていたんです。今回、田辺さんを採用すれば、きっと彼女はどこかで方向性の違いに気づいて辞めていくのではないか? 面接官としてはそういう危険性を感じます。彼女は得意なD/Bのスペシャリストとして職を探せばいい結果が得られる可能性が高いと思います。
企業側が田辺さんのような能力ある人を求める需要は充分あります。D/Bの問題を1〜2日で直してしまう会社もたくさんあります。そういった会社では、田辺さんの能力なら年収700万円くらいでもいけると思います。田辺さんの希望年収額は500万円なので、D/Bのスペシャリストになるのはさほど難しくはないと思われます。ただ、システム開発者は年収700万円が限界です。そして年齢が40歳になると、だんだん能力が落ちていくことも覚悟しなければいけません。ここは大きな節目と捉えて、長期的な視点から自分のキャリアライフを設計しなおす必要があります。

プロジェクトリーダーは「憧れ」、本当にやりたかったのは「システム開発のスペシャリスト」でした。 キャリアアップを考えるとプロジェクトリーダーだったのですが、マネジメント能力まで問われるとは考えていませんでした。 面接官の髭さんに、やりたいことを突き詰めて問われると、新しい言語を勉強したりすることも好きだし、自分はスペシャリストの道へ進むほうがいいことがわかりました。
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髭彰(ひげ あきら)さん 有限会社キャップ総合研究所代表取締役
1948年生まれ。伊藤忠テクノサイエンス株式会社にて、技術教育課長、QCサークル活動推進事務局長、人事採用研修グループリーダーを歴任。1998年独立後、キャリアコンサルティング、社員教育企画、数社の人材採用コンサルティングを手掛ける傍ら、某派遣会社のIT就職塾 塾長として大学生への就職指導、キャリアデザイン研修講師を担当。
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