マイナビ転職編集部
2008/01/16 00:18
日本のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の草分け的存在である「GREE」。その「GREE」をたった1人で立ち上げ、日本を代表するSNSにまで育て上げた男。それが、田中良和だ。
1977年、東京生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社へ入社。その後、楽天株式会社へ移り、ブログやアフェリエイトサービスなどを手掛ける。2003年4月、楽天在職中にSNS「GREE」を個人で立ち上げ、2004年12月にはグリー株式会社を設立。同時に同社代表取締役社長に就任。
昨年7月、田中氏率いるグリーはKDDIと業務提携し、モバイル分野に本格的に進出した。日本のSNSの草分け的存在である田中氏のねらいは?
次にどんなサービスがヒットするのかを考える時、一番重要なのはユーザーの変化です。例えば、2003年頃は、ブログに写真をアップして皆に公開するなんてことは考えられなかった。もちろん、テクノロジーの進歩も一因ですが、そうした使い方が日常化した最大の理由は、ユーザーの認識の変化だと思うんです。一昔前なら面倒だと思われていたことも、今のユーザーはまったく自然に使いこなしている。
そういう視点から見た場合、数年後の携帯電話はどうなっているか。確かに、今は携帯電話でインターネットを使うのは面倒だという人がまだ多い。でも、近い将来、皆が自然に携帯電話でインターネットを使う時代が来ます。というよりも、2010年にはモバイルインターネットが普通になり、PCのインターネットは、仕事で使う必要がある人か一部のパソコン好きの人のものになっていると思う。これから開発するサービスが使われる環境として僕らが想定しているのは、その時点です。
そのためには今からスタートしていなければならない。事業が大きく成長するには少なくとも3〜4年の期間がかかります。あの楽天にしても1996年から会社を始めて、飛躍的に伸びたのは1999年。だから、2010年に大きく伸びる会社になるためには、今からやっていなければ間に合わない。それが、「GREE」がモバイル分野に打って出た理由です。
田中氏とインターネットとの出会いは中学時代に遡る。早熟だった田中少年は、未来学者アルビン・トフラーの思想書『パワーシフト』を読み、漠然とだがインターネットに関わる仕事をしたいと夢見るようになる。そして、やがて米国のネットベンチャーに惹かれていった。
僕が高校生の頃、日本はバブルが崩壊した後で世相全体が暗かった。「仕事なんかしたって、どうせ何もならないよ」という空気が蔓延し、皆が生きる目標を見失っていた時代でした。そんな時に、米国のネットベンチャー企業の存在を知りました。
当時、アメリカではYahoo!やNetscapeなどが急成長していました。まだ30歳にもならない若い人たちが自分で会社を興し、何百万ドルものお金を動かしながら、世の中を変えるような大きな仕事をしていた。その様子を見て、本当にビックリしました。そして、自分もあんなふうに昼夜を忘れて仕事に没頭し、生きることを楽しみたいと思うようになったんです。
大学進学後、田中氏はインターネットの世界へ没頭。20歳の時にはインターネットの世界で生きていく決意を固める。“我を忘れて夢中になれる仕事”を求めていた田中氏の気持ちを更に強めたのは、大学4年の卒業旅行だった。
バックパックひとつでヨーロッパを回ったんです。旅をしていて思ったのは、自分でその日にやることを作らないと何もすることがないんだということでした。東京で暮らしていると、学校や仕事があったりしていつの間にかやることが決まっている。何も意識しないでもルーチンに乗っかっていれば日々は過ぎていきます。でも、バックパッカー生活では、自分で決めないと何も進んでいかない。それがとても新鮮だった。同時に、なぜ東京では同じような感覚で生きられないんだろうと思いました。
でも、考えてみれば、学校へ行くことも仕事をすることも、最初に決めたのは自分なんですね。別に、誰かに強制されてやっているわけじゃない。結局は、考え方次第だと気付いたんです。何となく日常に流されているように思っても、元を辿ればすべて自分が決めたこと。だったら、常に自ら物事を決め、行動していこう。そうすれば、自分のやることに情熱を傾けて毎日を生き生きと過ごせるはず。それは今でも僕の基本になっています。
大学卒業後、田中氏はソニーコミュニケーションネットワーク株式会社に入社した。しかし、米国のインターネットベンチャーに憧れた気持ちを抑えきれず、当時は社員数50人程度だった楽天へ転職。そして、SNSとの出会いが訪れる。
2002年の終わり頃から、アメリカでSNSが流行り始めました。その頃、楽天でブログサービスの立ち上げに関わっていたのですが、SNSを一目見てやってみたいと思いました。しかし、当時はまだブログブームすら来ていない時代です。海のものとも山のものとも分からないSNS事業に、会社が「イエス」と言うはずがない。で、自分でやってしまった(笑)。
といっても、別に一大決心とかそういう感じじゃ全然なかったですね。僕にとっては、目が覚めている時間を夢中になれることに投入できるならば、仕事だろうとプライベートだろうと関係なかった。とりあえず3カ月ぐらい寝ないで作業すればできるんじゃないかと思い、「GREE」を立ち上げたんです。
「GREE」は、サービス開始からわずか1カ月でユーザー数1万人を突破。その後も急速にユーザーは増えていった。その間、カスタマーサポートからサーバー管理まですべての仕事を田中氏は1人でこなした。しかし、やがて限界が訪れる。
ユーザー数が増えていくに連れて、1人で運営するのがだんだん難しくなってきた。1日に100通ぐらい届く問い合わせメールに全部返信しなければならないし、サーバーメンテナンスも全部自分でやらなければならない。会社から帰ってから寝ずに作業する日々が続きました。これ以上は続けていけない。でも、ここまで育てたものを突然止めるわけにはいかない。そんな時に、あるユーザーの方から「田中さんが倒れたら、このサービスはどうなってしまうんですか?」というメールを貰いました。それを見て、このままではいけないと思ったんです。
例えばブログも、動かすだけならプログラムを書けばそれで済む。でもそれだけでは、本当の意味で、サービスを作っているとはいえない。カスタマーサポートの人材は確保できているのか? サーバー費用を返せる資金力があるのか? そういうことを1つずつきちんクリアして初めて、本当のサービスになる。そこで法人化を決心したんです。設立当初のメンバーは2人、資金の大半は自分持ちでしたけどね(笑)。
現在、モバイル版「GREE」のユーザーは、破竹の勢いで急増中だ。昨年10月から開始したauユーザー向けモバイルSNS「EZ GREE」に加え、今年2月にはNTTドコモのiモード公式サービスとしても提供を開始した。たった1人でSNSを立ち上げ、ここまで成長させた田中氏の目には、一体どんな未来が映っているのだろう?
今、インターネットサービスで流行っているのは検索サービスとコミュニティですね。この2つは、今後もメインストリームとなっていくでしょう。では、インターネット自体は今後どう変化していくのか? その答えは“モバイルへの移行”だと僕は思います。
近い将来、PCで提供されているWeb2.0の様々なサービスはモバイルプラットフォームへ移行し、さらに新しいサービスが生まれてくるでしょう。そして 2010年には、携帯電話を使って誰もがいつでもどこでもインターネットにアクセスし、コミュニケートする社会が生まれる。だから、僕らはそこにフォーカスして新しいサービスを開発しています。
振り返ってみれば、いま世間で騒がれているWeb2.0のサービスの多くは、2002〜2003年にかけて生まれたものです。つまり、5年くらい前に生まれたサービスが、その後の主流になっていく可能性が高い。だから今から始めないと間に合わない。
だから今は、とにかく諦めずにやり続ける。どの業界でも同じでしょうが、諦めずに真剣にやり続けていると、たまに大ヒットが生まれるものです。それを当てられるかどうかが勝負。そのためには、まずは打席に立ち続けなければならない。バッターボックスに立ち続けた人間だけが、ホームランを打つことができるから。
インターネットの本来の目的は、世の中を変えていくことです。だからこそインターネットは面白い。これは、グリーのずっと変わらないスタンスです。今後も世の中を変えるサービスを生み出し、インターネットの可能性を具現化していきたい。常に、世の中を良い方向へ変えていくような会社であり続けたい。それが僕の願いです。
学生時代からバックパッキングで世界中を歩いてきたという田中社長に、おすすめ旅行を教えてもらいました!
■アジア(シンガポール、タイなど)
社会人になってから行きました。不法就労者に混じって500円ぐらいの宿に寝泊りしてみたりして、とにかく楽しかった。アジアの国々を歩いて感じるのは、生の躍動感です。皆が毎日を懸命に生きていて、その必死さがリアルに伝わってきます。
■ヨーロッパ(カンヌ、ニース、モナコ、コートダジュールなど)
卒業旅行で回りました。特にコートダジュールがよかったですね。石畳がきれいで、海辺がとても気持ちよかった。人々が皆幸せそうで素敵なところでした。
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