最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

開拓者の肖像 第17回--人と人が喜びで結びつく、 それがインターネットの本質。(トライベック・ストラテジー株式会社 代表取締役社長 小川 淳)

マイナビ転職編集部

2008/01/16 12:01  

日本最大のコミュニティサイト「ジオシティーズ」の総合プロデューサー、世界最大のポータルサイトYahoo!日本法人の営業推進部長……。まさに、日本のインターネットの本流を歩んできた男、小川淳。彼の武器は、常に物事の本質を見据え続ける眼である。

PROFILE:小川 淳●おがわじゅん

1959年、京都府生まれ。近畿大学商経学部卒業。広告代理店勤務を経て、ソフトバンク入社。その後、ソフトバンクの社内異動で日本最大のコミュニティサイト「ジオシティーズ」の総合プロデューサー、Yahoo!日本法人の営業推進部長などを勤め、2001年トライベック・ストラテジー株式会社を設立。

いまのWebサービスは十分ではない

小川氏率いるトライベック・ストラテジー株式会社では、企業のWeb戦略策定からサイト構築、運用・サポートまでをワンストップで提供している。小川氏はその中で、代表取締役社長を務める傍ら、ウェブサイト・コンサルティング・チームのプロデューサーも兼任している。

かれこれ10年以上、ネットの本質について考え続けてきました。そしていま思うのは、インターネットは、人と人を結びつけるためにあるということです。つまり人々が情報を交換し合い、お互いに利益を得るためのインフラだと思うんです。

僕は、「ジオシティーズ」で、コミュニティサイトの運営に携わってきました。その経験の中で思ったのは、100人の人がいれば、100通りの知識があるということです。どんな人でも自分の好きな分野や、自分の家の周りのことは、他の人よりも多くの知識を持っている。普通は、そうした知識は個人の中に眠っているだけです。埋もれている知識を表に引っ張り出して、他の人に渡す。そうするともっと楽しくてすてきな世の中が生まれるんじゃないか。そしてそれがインターネットの本質ではないか、と。

そう考えたときに、いまの世の中にはインターネットを使って人々を結びつけ、かつそれをビジネスとして成立させているサービスはほとんどないように思えました。ユーザーにも喜ばれ、企業にも利益を生むWebサービスを実現したい。そんな思いで会社を立ち上げました。

企業のWeb戦略を成功させる鍵は、徹底してユーザーの視点から考えることです。ブログにしろSNSにしろ、あくまでも道具なんです。いま、Web2.0 が騒がれていますが、僕は“Web0.0”の時代からコミュニティサイトをやってきた(笑)。以来、常にユーザーにとって楽しく、企業にとってメリットのあるWebサービスをどうやって作るかを実践してきました。その目から見ると、いまのWebサービスはまだまだ十分ではないと感じているんです。

ジオシティーズの成功

小川氏の経歴を語る上で外せないのが、日本最大のコミュニティサイト「ジオシティーズ」の成功である。当時、氏は総合プロデューサーとして「ジオシティーズ」のテコ入れに注力していた。この体験が、“徹底してユーザー視点から考える”というスタイルを確立する。

1997年の半ばでした。当時はソフトバンクで孫正義さん直轄の部署で働いていたのですが、突然「ジオシティーズのコミュニティサイトを何とかしてくれ」と言われたんです。

それまでの「ジオシティーズ」は、米国のサービスをローカライズしたものに過ぎませんでした。そこで、ユーザーインターフェースを日本人の感覚にマッチするように作り変えました。使い勝手やサイト上の表現をすべて洗い直したんです。もう1つやったのは、簡便にホームページをアップできるツールの提供でした。当時はファイルをFTP(File Transfer Protocol)でアップする仕組みだったのですが、初心者にはどうにも使いづらかった。そこで、インターネットが分からない方でも簡単にホームページを作成してアップできるツールを作ったんです。

これが功を奏して、「ジオシティーズ」の個人ホームページは、毎週倍増のペースで増えていきました。同時に、ユーザー同士のコミュニケーションもどんどん活発になっていった。インターネットというと、どうしてもバーチャルな世界のように考えられてしまう。でも、本質的には、インターネットは、現実に生きている人々が感じるリアルなニーズに応えるための道具でしかないんです。この時の経験が、僕のスタイルの基礎になっています。

コミュニティサイトの広告ビジネスモデルを創出

トライベック・ストラテジー株式会社 代表取締役社長 小川 淳

1年後、「ジオシティーズ」の会員数は100万人を突破。日本最大級のコミュニティサイトの座を獲得する。しかし、小川氏の前進は止まらない。すぐさま次のステップへと進んだ。

次に考えたのは、コミュニティサイトで、どうやってビジネスを展開していくかということでした。そこで、まず一般的なバナー広告のビジネスモデルをやってみました。しかし「ジオシティーズ」は個人ホームページのコミュニティサイトですから、広告を出した商品について何を書かれるかわからない。ですから広告主は個人のホームページにバナー広告を載せることに、あまり乗り気じゃなかった。これを何とかしなければならなかったんです。そこで思いついたのが、特定の商品に興味を持っているユーザーたちのページを集めて、その商品のファンサイトとして紹介し、ユーザーの口コミを利用してプロモーションを行うという手法でした。

最初にこの手法を適用したのは、当時の某自動車メーカーのモデルチェンジのプロモーションでした。メーカーのサイトとファンのホームページの両方に遷移できるバナーを作って配布したんです。もちろん、ファンサイトには、いいことばかりが書いてあるわけじゃない。けれど、それが逆に良いんです。実際に車に乗っている人たちの言葉は、メーカーの宣伝コピーよりもずっと強く消費者の心に深く刺さる。この時期に、インターネット・マーケティングの本質について深く考えることが出来ました。

孫正義氏との出会い

ソフトバンクでの経験が与えたのは、マーケティング手法やコミュニティサイト運営のノウハウだけではない。ソフトバンクの総帥(そうすい)、孫正義氏の直近で働くという経験は、氏の仕事に対する姿勢にも大きな影響を与えた。

孫さんとの出会いは、僕のビジネスマン人生にとって間違いなくエポックメイキングな出来事でした。とにかく、仕事に対する情熱がケタ外れなんです。それまでに会ったどの経営者とも違っていた。まず、相手が誰であろうと偉そうに構えるところがまったくない。新米社員であっても、直接話しかけ、真剣に話を聞く。そして、時には相手が誰であろうと顔を真っ赤にして怒る。とにかく真っ直ぐなんです。

今でも思い出すのは、1995年頃に開かれたある会合です。大手の量販店やメーカーの社長さんを1000人ぐらい集めて孫さんが話をしたのですが、その時に孫さんが「ビジネスでメールを使っている人は手を挙げてくれ」と言ったんです。ところが、手を挙げたのは約15、6人だった。当時のインターネットといえば、まだ始まったばかり。誰もいまのような世の中になると予想していませんでしたから無理もない。

ところが、孫さんは顔を真っ赤にして滔々(とうとう)と語りだしたんです。「これからはソフトもネットで流通する世の中になる。だから、みんな真剣にインターネットに取り組んでください」と。あの時の孫さんの顔は、いまでもハッキリと思い出せます。いま、世の中は孫さんの言った通りになっている。孫さんのそういう嗅覚はずば抜けていました。そして嗅覚以上にすごいのは、ピュアさです。語る言葉に嘘偽りがない。真剣にそう思っているから顔を真っ赤にして話す。リーダーとは自分が良いと信じたことを、本気で相手に伝えることができる人物なんだということを学びました。

企業にもユーザーにも喜ばれるWebサービスを提供する

その後、小川氏はYahoo!の営業推進部長などを経て、トライベック・ストラテジー株式会社を設立。当初7人だった会社も、現在は37人になった。まさにインターネットの本流を歩んできた小川氏。その氏が目指すものは?

当社はようやく軌道に乗ったばかりです。会社を立ち上げて2年ぐらいは常に不安でした。マンションの1室でやっているような、Web制作プロダクションで終わってしまうのかと思った時期もありました。僕はあまり悩んだりするタイプではないのですが、さすがにあの頃は辛かった。これでいけると思えるようになったのは、つい最近のことです。

それでも設立以来、我々のポリシーは一貫して変わっていません。いかにしてお客様の良き相談相手になるか。ホームページの制作者でもなく、コンサルタントでもない、お客様の相談役。ユーザー視点を忘れずに、上流の市場分析からサイト構築、コンサルティング、マーケティングまで一貫して提供することにより、お客様がやりたいこと、やるべきことにマッチしたWebサービスを提供することです。

その先は、独自開発した技術を使って、日本の企業にマッチした独自のサービスを確立していきたい。CRMやCMSといった手法は、ほとんどが米国発です。いまの日本では、それをそのまま企業に当てはめているのがほとんど。その発想自体をゼロベースで考え直し、個々の日本企業に本当に馴染むサービスを提供してみたい。地に足をつけ、企業にもその先のユーザーにも喜んでもらえる、Webサービスを実現していきたいです。

小川社長宅のアクアリウム

小川社長のおすすめ水草2種

アクアリウムが趣味と言う小川社長に、心休まる美しい水草を教えてもらいました!

■リシア
水槽の中が、芝生を敷き詰めたようになる美しい水草です。もともと水面に浮いている植物なのですが、それをわざと水の中に沈め、強い光と二酸化炭素を与えることで、水中で繁茂させるんです。見ているだけでウットリしてしまいますよ。

■クリプトコリネ
この水草はすぐ溶けてしまうので育てるのが難しいです。それだけにキレイに葉が開いたときの喜びはひとしおです。アクアリウムは、地球上にある生態系を水槽の中で再現するという、ロマンのある遊びなので本当にオススメです。


バックナンバーへ >>

特集

「ソーシャルメディアキャンペーン」の半数は失敗--アナリストが指摘する理由
多くの企業がソーシャルメディアキャンペーンを計画している。しかし、ガートナーによると、キャンペーンを始める理由が明確になっていなければ、失敗に終わることになるという。
人工知能による会話マーケティングの可能性
日産NOTEのウェブサイトがおもしろい。人工知能を用いて、ユーザーの質問にCMでおなじみのキャラが反応してくれる。裏側で実現しているのは、PtoPAが開発したソフトウェア「CAIWA」だ。同社はこれをウェブマーケティング分野でも活用しようとしている。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能
近年のウェブサイトリニューアルプロジェクトでは「ユーザビリティテスト」を実施することが当たり前になってきたようです。今回は、単なる「使いやすさ調査」を超えた「ユーザー行動観察調査」の効果・効能を紹介します。
“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」
香港や中国のケータイショップでは、「おぉっ!こりゃかなりいける!」とワクワクしてしまう怪しいトンデモケータイに出会うことがある。そんな魅力あふれる製品の1つが、今回ご紹介するケータイである。
ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念
日経平均が約4年10カ月ぶりに1万円の大台を割り込む中、ソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
村上敬亮 情報産業の未来図ネットワーク型産業構造への衣替え?
村上敬亮 情報産業の未来図
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

IT業界(笑)最底辺層生活オトナになるということ
IT業界(笑)最底辺層生活
夢幻∞大のドリーミングメディア福祉国家の失敗〜40年前の「断絶の時代」を読む(3)
夢幻∞大のドリーミングメディア
Life with Mac and more.さあ来い!Silverlight 2
Life with Mac and more.
コミュニケンシュワ
コミュニケン

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

金融不安の市場に、IR活動は何を頼るか!?
CMS未導入企業300社へのアンケート 担当者のホンネを徹底追求

■調査発表

【ゲームクリエイターの方へ】攻めの開発体制を敷くAQインタラクティブ社の中途採用・求人情報をレポート
Alibaba JAPAN、カー用品店に関する調査 カー用品専門店の認知、利用ともトップは「オートバックス」
調査結果「携帯OS『Android』認知度調査、6割が『知らない』 〜ユーザー期待のメーカーは?」

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

自動車の未来を垣間見る--2008年パリモーターショーのコンセプトカー

2008年度グッドデザイン賞が発表--環境を意識した新基準も

GMのハイブリッドカー「Chevrolet Volt」、パリモーターショーに登場

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。