マイナビ転職編集部
2008/01/16 00:16
インターネットに初めて触れたのは10年前。SE、プロデューサー、社長と立場は変わっても、ネットの無限の可能性を信じる気持ちは揺るがない 。
1974年、東京生まれ。青山学院大学理工学部電気電子工学科卒。在学時代から、同学の学生たちで立ち上げたベンチャー企業「電脳隊」に参加。システム開発や運用業務に携わる。その後、株式会社博報堂へ入社し、大手企業のWebサイト構築などにプロデューサーとして関わる。2003年、同社を退社し、株式会社antsを設立した。
松尾氏率いる株式会社antsでは、従来ブラウザでは不可能だったリッチなコミュニケーションを実現する独自のプラットフォームアプリケーション『GIZMO』を提供している。そのねらいとは?
企業のコミュニケーション戦略において、インターネットの重要度はますます高まっています。しかし、生活者に対して、それぞれの企業が希望どおりのコミュニケーションを実現できているかどうかは疑問です。これはきっと、誰もが心の奥では感じているんじゃないでしょうか。元来、Webブラウザは、あらゆる情報をHTMLという決まった構造に落とし込むことによって、すべての人に公平に情報が行き渡り、共有する為のソフトウェアです。それ自体便利なものですが、情報にブランドなどの付加価値を加えたいような企業にとっては、その公平さが弊害になってきます。
最近、差別化やブランド色を出すことを目的に、Flashなどの動的コンテンツを利用したサイトが増えてきていますね。しかし、Webサイトは、基本的には決まった時間軸を持たない構造を持ち、ユーザーは自分の興味に従って好きなページを好きなペースで見ることが前提です。そこにいきなりリニアな時間軸を持つ動的コンテンツが現れると、どうしても違和感が生まれてしまう。思うままにページを飛び移っていたのに、動画になるとコンテンツの時間軸に合わせて、見る人が待つ必要が出てくるからです。また、動画を見ながら他の情報を参照しようとすると、動画のウィンドウが背面に隠れてしまう。このため、ユーザー自身が、ウィンドウサイズやコンテンツの位置を調整しなければならない。つまり、現在のブラウザは動的コンテンツを見せるプラットフォームとして不十分なんです。
企業がインターネットを活用する目的は様々に考えられますが、ブランドイメージを向上させ、顧客のロイヤリティを高めようとする意思は常について回ります。その思いをどこまでも追求したい。ユーザーにとっても、企業にとっても、ワクワクするようなインターネットサービスを実現したい。それが、僕らが『GIZMO』を作った理由です。
ユーザーと企業の双方がワクワクするようなネットワーク社会をつくりたい。想いの発端は、ブロードバンドに初めて出会った時の感激である。
大学4年の時、同じ大学の人が立ち上げた「電脳隊」というベンチャー企業に参加していました。しばらくすると、NTTアドという広告代理店の支援で、 45Mbpsの専用線を使わせてもらえるようになったんです。めちゃくちゃ感動しましたね。当時のインターネットといえば、28.8Kbpsのモデムを使った環境が一般的。そんな時代に1万2,000倍の環境を体験したわけですから、本当に興奮しました。
それまでのインターネットでは、単純につながることが面白かった。でも、ブロードバンドを手に入れて「共有する面白さ」を発見したんです。そして、世界中全てのデータをネット上に置きたいという衝動に駆られたんです。当時、僕は競馬が好きだったので、競走馬の情報を公開しませんかとJRAにアプローチしたこともありました。あっさり断られましたけど(笑)。とにかく、あの頃はネットの可能性に興奮しっぱなしで……、コンピューターやプログラミングなどの技術を、家にも帰らず夢中で勉強したことを覚えています。あれが僕の基礎になったんだと思います。
「もっと面白いことができないか?」 インターネットの可能性に急速に目覚めていった松尾氏にさらに拍車を掛けたのは、広告代理店の博報堂での体験だった。
大学の卒業を間近に控えた頃、業務で博報堂に半常駐することになりました。同じフロアで仕事をするようになって驚いたのが、博報堂の人たちのインターネットに対する真摯さです。常駐した部署は30代のメンバーで構成されていたのですが、皆話がおもしろく、頭もいい。さらには自分よりも人生経験豊富な人たちが、インターネットでどのように面白いことを実現するかについて、日夜アイデア出しを続けているんです。これはかなわないなと思いました。そしてその会話に参加したいと思い、博報堂に入社しました。
入社後もこんなことがありました。いきなりあるテーマについて、アイデアを100案出せという課題を与えられたんです。必死でアイデアを捻り出して箇条書きにして持っていったんですが、相手にしてもらえないんですね。何でだろうと思っていたら、ある人が1ページ1案にして持っていってみなよ、と教えてくれた。最初は「紙がもったいないじゃん!」と思ったけど、そこが違うんですよね。そうやって見た方が案の1つ1つの味わいや印象が伝わってくる。そう見られる前提で考えると、書き方にも甘えが許されなくなって、再考の余地が出てくるんです。企画をいかにして生み出し、それをどう相手に伝えたらいいのか? アイデア自体はもちろん、その見せ方にまでこだわる姿勢。本気で「面白さ」を追求する人たちの真摯さに多くのことを学びました。
時代はまさにネットバブルの頃。ネットベンチャーが華やかに取り上げられ、日本中がインターネットに熱い視線を注いでいた。しかし、インターネットビジネスの実情を見るにつれ、松尾氏は次第に違和感を抱き始める。そして、違和感はやがて使命感へと変わっていった。
インターネットが珍しいものから当たり前のものへと変わっていき、さまざまな企業がホームページの公開やネットイベントの実施などを行うようになっていたわけですが、現場は毎日がトラブルの連続でした。理由は、インターネットをきちんと理解している人があまりにも少なかったからです。自分たちで企画して受注したのに、途中で「やり方がわかりません」と言い出す制作会社や、海外製のソフトを日本に持ってきて開発を進め、本番直前になって「日本語に対応していませんでした」と言うSIとか、まるでギャグみたいことが日常茶飯事になっていました。
確かにインターネットやデジタルの技術は、ほとんどがアメリカから来ているため、把握や理解はしづらい。でも、ネットの本質を理解する努力もせずに、声高にビジネスだけ叫び、かつそれで成功してしまう企業がある状況には疑問を持ちました。一方で、制作現場では寝る間を惜しんで働いている人たちがいて、そういう一部の人たちの個人的な努力でネットビジネスの世界は支えられていた。この状況は今もあまり変わっていないと思います。
いくらビジネスが成功しても、社会が豊かになったり、そこで働く人が幸せになったりすることに繋がらなければテクノロジーの意味がない。そこで僕が出した結論は、世の中にはインターネットでビジネスを展開するための、インフラがまだ出来ていないというものでした。それなら、ネットの力で百姓一揆を起こしてやろう。自分たちの手で社会を変えてやろうと思ったんです。それが、起業を決心した理由でした。
2003年6月、松尾氏はついに株式会社antsを立ち上げる。最初に手掛けた仕事は、博報堂時代に自ら手掛けた企画だった。図らずも、これが『GIZMO』の原型となる。
創業時に思っていたのは、「ネットワーク社会の礎となることをしよう」ということでした。でも、何をやるのかは決まっていなかった(笑)。そんな時、博報堂時代に手掛けたオンラインDPEサービスの企画がとおり、既に会社は辞めていたのですが、行きがかり上、関わることになりました。
WebブラウザベースのオンラインDPEは、ブラウザの仕組み上、注文する写真を1枚ずつアップロードしなければならず、とても不便でした。そこで僕らが作ったのが、キャラクターに写真のファイルをまとめてドラッグ&ドロップすれば、一括で発注できるアプリケーションでした。キャラクターなどを使った、自由なインターフェースのアプリケーションを作りたいと常々思っていたんですが、やってみるとこれがすごく大変だった。このときの経験をベースに、Webコンテンツと同等の制作工数で、アプリケーションを制作できる開発環境を構想していきました。そして、試行錯誤の末辿りついたのが、『GIZMO』なんです。
2004年9月。株式会社antsは『GIZMOコミュニティ』を世間に公開。FLASHベースの『GIZMO』の登場は一躍注目された。しかし、松尾氏のねらいは単にミニアプリを作ることではない。
現在、『GIZMO』は僕らがやりたいことを実現するためのプラットフォームを作っている段階です。グーグルやヤフー、マイクロソフトでもウィジェットやガジェットと呼ばれるミニアプリを使ったサービスの提供が開始されています。いずれもアメリカ産です。インターネットの世界ではこれまでどうしてもアメリカが先行してきましたが、僕らは日本発の『GIZMO』で世界をリードしていきたい。
そこでまずは『GIZMO』というプラットフォームを世間に提示するところから始めようと思ったんです。我々だけでサービスを名乗ってしまうと小さなビジネスになってしまう。ならばネットに公開し、賛同してくれる方を集めよう、と。そして、多くのパートナーと一緒に『GIZMO』を成長させてきました。でも、本当の挑戦が始まるのはこれから。目指すは脱ブラウザによるインターネットの革新です。
インターネットはこれからもどんどん進化していきます。僕がインターネットに出会った頃は、実現が難しかったようなサービスも、ブロードバンドによってその多くが実現可能になっています。巷ではWeb2.0が喧伝され、グーグルがインターネットの最終形であるかのように言われているけど、インターネットの可能性はそんなに小さくはない。グーグルの成功はこれから始まるネットワーク社会の端緒でしかないんです。すべてはこれから始まる。幕はまだ開いたばかりなんです。
土日は子供の世話で大忙しの松尾社長。
息抜きにピッタリの東京都内の公園を教えてもらいました!
■鍋島松濤公園 東京都渋谷区松濤2丁目
通常の遊具スペースの他に池があります。渋谷の真ん中ですが、池にはアヒルや亀がいてかなりほのぼのします。
■菅刈公園 東京都目黒区青葉台2丁目
横幅の広い滑り台や芝生があって楽しいです。横幅が広いので落ちそうになることは無いのですが、滑っている間に上下逆さまにひっくり返ったりするので注意が必要です。
■代々木公園 東京都渋谷区代々木神園町2丁目
言わずとしれた公園ですが、奥の方に補助輪付き自転車をレンタルできるスペースがあるので、子供と一緒によく練習しています。
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