新戦略を模索する音楽業界--サブスクリプションサービスに固執する理由

文:Greg Sandoval(CNET News.com) 翻訳校正:川村インターナショナル2009年02月12日 07時45分

 ロサンゼルス発--米国時間2月5日、Microsoftや大手レコードレーベル各社が音楽のサブスクリプションサービスのプロモーションを続けている理由は何かという疑問に対する答えが判明した。

 Universal Music Groupデジタル部門のビジネスデベロップメント担当エグゼクティブバイスプレジデントであるDavid Ring氏は、EconMusic Conferenceにおいて、レコード業界は単にダウンロード販売だけでは事業を維持することができないと述べた。

 Ring氏は自身が参加したパネルディスカッションで、聴衆に対し「われわれがやろうとしていることが1曲ごとのダウンロードなら、それは成長が可能なビジネスではない。それはレコード業界にとって健全なことではないだろう」と語った。

 Ring氏の発言の前に、Microsoftのエンターテインメント部門の幹部であるChris Stephenson氏が、「Zune」のサブスクリプションサービスの進歩を大げさに取り上げた。Zuneは2006年11月に、Appleの「iPod」に対抗するためMicrosoftが発売したデジタル音楽プレーヤーである。また、その売り上げが2008年第4四半期に54%減少したデバイスでもある。

 Ring氏の発言は筆者には非常に印象深いものだった。レコード業界が5年以上にわたり明らかにサブスクリプションサービスに取り組み続けているのは、ほかにこれといった利益を上げる手段が見つかっていないためだ。各レコード会社のリーダーたちは何であれ値引きを行う準備はできていない。99セントのダウンロードによる利幅が極めて薄いというときに値下げはできない。

 筆者は、やがてはダウンロードが音楽分野における主要販売単位としてCDに取って代わることになると思っていた。1枚のディスクに10曲あまりの楽曲を収録する代わりに、それらの楽曲を1曲ずつばら売りせざるを得なくなるだろうと考えていた。Ring氏によれば、それはレコード業界が希望する販売形態ではないという。

 Ring氏は、4大レコードレーベルで最大のUniversal Musicが検討しているビジネスモデルは、サブスクリプションサービスだけではないことを明らかにした。Universal Musicの経営陣は、1つの有効な戦略あるいは複数の組み合わせを見つけるまで、戦略を試し続けるだろう。

 有望な戦略とはどんなものだろうか。パネルディスカッションのメンバーたちは、音楽料金をインターネットアクセスの料金に組み入れるといった、ありふれたアイデアについて話し合った。取り上げられたアイデアの1つに、音楽をNetflixのようなサービスにパッケージングするというものがあった。

 EMIのデジタル部門担当バイスプレジデントCory Ondrjka氏やYahoo Musicの責任者Michael Spiegelman氏などのパネリストたちに、レコード業界はサブスクリプションサービスを活性化するための試みをいつまで続けるのかと質問してみた。コンシューマーが、音楽をレンタルするというアイデアに共感していないことは誰の目にも明らかである。

 大手レコード会社の音楽を販売し、巨額の売り上げを生み出している単一の音楽サブスクリプションサービスはない。Yahooのサブスクリプションサービスは成功せず、打ち切りとなった。Napsterと、RealNetworksのサブスクリプションサービスである「Rhapsody」はニッチオーディエンスへのアピールを続けている。人々には、料金の支払いをやめると音楽がなくなってしまうというアイデアは好まれていない。

 Ring氏に迷いはなかった。同氏はサブスクリプションが有効だと述べ、NetflixやケーブルTVを例として取り上げた。われわれの大多数が、雑誌や携帯電話、保険、インターネットアクセスなどさまざまな形でサブスクリプション料金を払っていることに疑問の余地はない。

 しかし音楽業界はまだ、人々の心をつかむようなサブスクリプションプランを作り出していない。パネルディスカッションを聴いた後で明らかになったのは、音楽業界でサブスクリプションの試みをあきらめようとしている者は1人もいないということだ。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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