バーチャル世界の相互運用性--IBMやシスコが主導する取り組みの意義

文:Daniel Terdiman(CNET News.com) 翻訳校正:大熊あつ子、長谷睦2007年10月23日 16時00分

 カリフォルニア州サンノゼ発--自分のアバターを空飛ぶ絨毯に乗せ、「Second Life」と「There.com」の世界をシームレスに移動できる、そんな日がやってくるかもしれない。「World of Warcraft」や「EverQuest II」の世界で、現実世界の通貨であるドルやユーロを使って甲冑や金の装備を買う、あるいは、バーチャル世界プラットフォーム開発企業のMultiverse Networkが提供するツールを使って作った3Dモデルをひっさげて、「Gaia Online」に出かけてみるといったことも、実現する可能性がある。

 こうしたことを実現するのが、バーチャル世界の相互運用性だ。相互運用性が確立されれば、これまで厚い壁に隔てられていた多くのバーチャル世界が、コンテンツや通貨、あるいはその中の住人までも共有できる時代が訪れるかもしれない。これらはすべて「エンドユーザーの利便性向上」という美名のもとに行われているが、実際には、事がうまく運べば、数あるバーチャル世界をビジネス目的に利用しようとする企業にもプラスになるのではないか、との思惑もある。

 だが、相互運用性という響きに目を輝かせた人には申し訳ないが、これは今すぐに実現するという話ではない。しかし、現実世界で最大規模にして最強の勢力を誇るテクノロジ企業が数多く集まり、バーチャル世界の有力な開発者とともに、さほど遠くない将来に現状を打開しようと、取り組みを始めている。この試みには、IBM、Cisco Systems、Intel、Microsoft、Motorola、Google、ソニーなどのテクノロジ企業、およびSecond Lifeを運営するLinden Lab、Multiverse Networks、MindArkなどのバーチャル世界開発企業が名を連ねている。

 その口火を切る形で、Linden LabとIBMは米国時間10月10日、バーチャル世界のユーザーが一度作ったキャラクターを他のサービスでも使用可能にする計画を発表した。

 両社の発表は、サンノゼで開催されていた「Virtual Worlds Conference and Expo」(10月10〜11日)に合わせて行われた。同カンファレンスには、バーチャル世界をビジネス、エンターテインメント、教育などの目的に活用しようと考える人たちが数多く参加した。

 しかし、実際の活動は、同カンファレンス初日の前日にあたる9日にすでに始まっていたと言っていい。この日、23の企業および団体が集まり、バーチャル世界の相互運用性実現にあたって必要な事柄を調査する目的で、会議を開催していたからだ。このテーマをめぐる積極的なムードは、11日に行われたCiscoのネットワーク化仮想環境担当チーフアーキテクトChristian Renaud氏による基調講演にも顕著だった。

 この相互運用性確立の取り組みには、正式なリーダーがいない。しかし、この試みを現時点で主導している人物を挙げるなら、少なくとも米国では、CiscoのRenaud氏、およびIBMのエマージングテクノロジおよび標準グループで上級技術スタッフを務めるPeter Hagger氏ということになるだろう。

 「われわれは、数多くの企業、そしてもちろん顧客とも何度も議論を重ね、さまざまなバーチャル世界を結ぶ相互運用性を求めるニーズと要望があることを把握した。われわれは、相互運用性について話し合い、ともかく導入して、どれほどの興味関心があるのかを確かめてみることに決めた(中略)。(9日の会合では)非常に良い議論ができた。共通のテーマは、相互運用性と(それを)支える標準化、および各バーチャル世界ならびにウェブとの統合だった」と、Hagger氏は述べている。

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