ユーザーコミュニティに「ハッキング」を勧めるLEGO

Daniel Terdiman(CNET News.com)2005年10月03日 16時34分

 LEGOの幹部は先頃、有名な同社のブロックを愛好する大人のファンらによって、新たに提供したデジタルデザイン用の開発ツールが改変されていることを発見した。そして、幹部らは驚くべき行動に出た。なんと、このハッキング行為に声援を送ったのだ。

 この寛大な振るまいも、実はそれほど難しいことではなかった。つまり、LEGOの最も熱心なファンたちは、何かをかすめ盗ろうとしているわけではなく、逆に同社の製品を改善しようとしており、しかもそれがおそらくは同社のデザイナーでさえ思いつかなかったようなやり方だったから、それを理解するだけでよかったのだ。

 「この種の事柄に対して好意的な反応を示さない企業があることは知っていたので、最初は少し心配だった」と、マサチューセッツ州ストウ在住のソフトウェアエンジニア、Dan Malecは言う。同氏はLEGOコミュニティの熱心なメンバーだが、このグループにはLEGOが大好きで、たいていの人が見慣れているような子供のつくるモデルよりもはるかに手の込んだ高度なモデルを組み立てる大人が集まっている。

 ある玩具業界の観測筋によると、ハッキング行為に対するLEGOのこの前向きな反応は異例のものだという。

 「オモチャの世界は基本的にこれまで『何でも好きなことをしていい』ところだったので、こうした例はほかに思いつかない」と、NPD Groupでエンターテインメント業界を担当するアナリストのAnita Frazierはいう。「最終的に知的財産を傷つけず、さらに(ユーザーらが)商標や核となる財産を改変しているわけではまったくないので、(LEGOは)この行為を無害なものと見なしている」(Frazier)

 LEGOが先月立ち上げた「LEGO Factory」は、ユーザーが独自にカスタマイズしてユニークなモデルを組み立てられるようにするサービスだ。猫や自由の女神、木など、このサービスではどんなものでも選ぶことができる。

 ユーザーがLEGO Factoryでモデルをデザインし、そのデータをアップロードすると、LEGOはそのモデルの組み立てに必要なブロックをユーザーに配送する。また、LEGO Factoryのサイトではほかのユーザーが考えたモデルのデータも公開されており、ユーザーはそれをつくるのに必要なブロックを購入することもできる。

無限の組み合わせが可能に

 LEGO Factoryの中核部分では「LEGO Digital Designer」という無償でダウンロード可能な3Dモデリング用プログラムが動いており、ユーザーがこれを利用して、自分のデザインしたユニークなモデルを組み立てるためのブロックのセットを選べるようになっている。このソフトウェアを使えば、ユーザーは頭の中で描いたどんなものでもつくることができる(ただし、3Dモデリングに関するスキルが許す範囲での話だが)。

 しかし、LEGO Factoryは最初、一部の技術に明るいハードコアユーザーが出してくる要望に正確に応えることができなかった。

 LEGOモデラーのコミュニティに参加する一部のメンバーらは、このブロックのセット--彼らが「パレット」と呼ぶもの--に問題があったという。つまり、このLEGO Digital Designerのセットには、ユーザーが本当は必要としないブロック片がたくさん含まれていることがよくあり、彼らはそうしたものを選ばざるを得なかった。同時に、モデル作成に不可欠なブロック片が欠けていることもあった。そのため、ユーザーは自分の必要とするすべてのブロック片を集めるためにいくつかのパレットを購入し、多くのブロック片を無駄にしなければならないことが頻繁にあった。

 そのせいで、モデルのデザインや購入に多額のコストがかかってしまっていたと、ユーザーらは説明する。

 「パレットのなかには数百個のブロックを含むものもある」とMalecは言う。「そのうち2つのブロックだけを使いたい場合にも、丸ごと全部を買わなくてはならないし、いったい何個の余分なブロックが送られてくるかもユーザーにはわからない」(Malec)

 このやり方では効率が悪いほか、ブロックが散らかる可能性もあった。

 しかし大人のLEGOファンらは、各パレットのなかにいくつかのブロックの袋が入って送られてくることを知っていた。Malecと他の数人のLEGOユーザーらは、そのことが頭の中にあったので、自分たちが選択させられるパレットのサイズを切りつめる方法がないものかと思案し始めた。同氏によると、1パレットに含まれるブロックの数を減らすことで、モデラーらがより少ない数でもブロックを買えるようにし、全体のコストを削減するのが狙いだったという。

 Malecや、IBMのソフトウェアアーキテクトでLEGOの熱心なユーザーであるLarry Pieniazekなどのユーザーは、自分たちの取り組みを協調させることで、LEGOが提供する各セットのなかに実際にどんな袋が入っているかを記録していけばいいと考えた。そして、この情報を元に、特定のブロック片を集めるためにはどのバックを購入する必要があるかがわかるデータベースをつくれると彼らは思った。

 Malecの説明によると、同氏らは、ユーザーがLEGO Digital Designerのなかで目にするパレットをリストアップした実際のデジタルファイルに変更を加えることができたという。その結果、ユーザーはパレット単位ではなくバックごとに注文できるようになった。これにより、ユーザーは前よりも少ない数のバッグを買えば済み、モデルの製作コストも少なくなったと同氏は言う。

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