Mike Yamamoto(CNET News.com)
2004/04/19 10:00
中国へアウトソースするインド企業
こうした事象やデータを捉えて「バブル」が生じつつあると予測するのは時期尚早だが、インドでの賃金上昇がこのまま続けば、世界のほかの地域にアウトソーシング先を変える企業が増えることも考えられる。実際すでにインド企業のなかには、賃金のずっと安い中国に自社の仕事をアウトソースし始めたところも見られる。
「Tata Consultancy Servicesは、ソフトウェアの輸出額の点で、インドのなかでも四大大手のひとつに数えられているが、同社ではすでに国外へのアウトソーシングが始まっている」とAmerican Electronics Associationは先頃発表したレポートのなかで述べている。「2005年までに、同社は中国で3000人のソフトウェアエンジニアを雇用する予定だが、この数は同社全体の15%に相当する」(同レポート)
中国もインドと同様に、米国を上回る数の学生が(ソフトウェア)エンジニアリングを専攻している。ところがIT分野の賃金上昇率を比較すると、中国はインドの半分程度にすぎないとHewittの調査は述べている。ちなみに、米国での同分野の賃金上昇率は、過去最低となる3.3〜3.5%だった。
また東欧諸国も海外アウトソーシング先として魅力が高まるかもしれない。昨年9月に出されたある調査報告によると、ルーマニアではソフトウェア開発を専攻した新卒学生を年間6500ドルで雇えるという。また、エンジニアリング専攻学生が米国より多いロシアも、有力なアウトソース先候補となるだろう。
「コストをめぐる激しい競争が起こっており、インドはますます割高になっているとの見方がある」と同報告を発表したPierre Audoin Consultantsの調査ディレクターPete Fosterは述べ、さらに「欧州には素晴らしい機会があり、またリソースを見つけられる新たなエリアもあるが、しかし英国ではこのことがほとんど無視されている」と付け加えた。
しかし、たとえ他の国々にアウトソーシング先を変える企業が現れようとも、インドのIT業界が苦況に陥ることは決してないだろう。インドのアウトソーシングビジネスは他の国と比べてはるかに高度化しており、また英語という共通の言語から西洋的な起業家マインドまで、インドにはさまざまなメリットがあると指摘する企業幹部やアナリストが、米国にもアジア諸国にもみられる。たとえば、インドのIT企業のほとんどがストックオプションや他の業績連動型の報酬を支給している。
「インドの教育制度や文化は、リスクをとることを勧めるものだ」とGeorge Gilbertは指摘する。現在Tech Strategy Groupというコンサルティング企業のマネージングパートナーを務める同氏は、以前Credit Suisse First Bostonで市場アナリストとして働いていた経験を持つ。「さらにインドには資金的な支援もあり、またバンガロールやニューデリーのような核となる地域もある」(Gilbert)
またインドのIT産業の将来が、アウトソーシング・サービスの分野に限られているわけではない。インド企業で働く幹部のなかには、過去10年間の政治的な変化で、IT産業の独立性が増し、単に米国などでつくられたもののサービスを行うのではなく、独自の技術開発を進められるようになったという者も多い。こうした変化の結果、インドがグローバルなIT経済のなかで「知識の集約地」になると見るビジネスリーダーもいる。
「インドは一連の改革を経て、グローバル化の流れや海外からの投資に門戸を開いており、それが技術革新やビジネスの機会創出、さらには国民の雇用創出につながっているが、これらは過去には見られなかったことだ」とAmerican Electronics Associationの報告書には記されている。「改革前のインドは、海外からの投資を歓迎しなかった。保護貿易政策を展開し、知的所有権の保護も疑わしかった」(同報告書)
だが同時に、政治的な要因がインドの対外的なビジネスにマイナスの影響を及ぼし、一層の賃金増加に歯止めがかかる可能性もある。先頃、テロリストが隣国パキスタンの現政権に対する攻撃を呼びかけ、印パ国境沿いでの紛争を求めたとのニュースが伝えられたが、同地域へのアウトソーシングを検討していた企業がこのニュースを受けて計画を見合わせることも考えられる。
「海外アウトソーシングの80%はインドで行われている。このことから、『もし(インドで)大惨事が発生したら、自社の利害をどう守ればいいか』という問題が生じる」というのは、Meta Groupというコンサルティング企業のDean Davison。同社でアウトソーシングに関する主席アナリストを努めるDavisonは、「海外アウトソーシングにともなうリスクは実際にはそれほど大きくないかもしれない。だがそれでも、大きなリスクを抱えていないと見られたいがために(アウトソース先として)国内ベンダーを選ぶ企業が、今後たくさん出てくるだろう」と述べている。
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