ネットラジオサービスのPandora、「音楽の発見」を支援してファンが急増

文:Stefanie Olsen(CNET News.com) 翻訳校正:大熊あつ子、吉武稔夫、長谷睦2006年07月21日 23時08分

 サンフランシスコ発--Tim Westergren氏は、多くのリスナーがおそらくは初めて耳にする音楽CDでいっぱいの袋をかついだ、現代のサンタクロースのように思われているのかもしれない。

 「音楽発見エンジン」とも呼ばれる新サービス「Pandora」を7カ月前に立ち上げたWestergren氏は、町から町へと旅しながら、サービスのファンのために時間を割き、自身のストーリーを語っている。ファンたちは、Westergren氏のサービスのおかげで、新しい音楽に出会う喜びを再発見したと話す。

 Westergren氏は、ルイジアナ州ニューオリンズ、テキサス州オースティン、オレゴン州ポートランド、ミシシッピ州ビロクシなど、全米の町を訪ねては、各地の「流行の仕掛け人」から提供された袋いっぱいのCDをカリフォルニア州オークランドのPandora Media本社へ持ち帰る。これらのCDに収められた楽曲が、Pandoraのインターネットラジオに採用されるのだ。Pandoraのネットラジオ局は、主に口コミで評判が広まり、開設から7カ月という短い期間で250万人もの登録リスナーを獲得した。

 Westergren氏は米国時間7月19日の夕方も、サンフランシスコでPandoraのサービスのファンを中心とする約200人に向けて、「わたしがこの会社を始めた理由を要約するなら、わたしにとって新しい音楽を発見することは宗教的な体験だから、ということになるだろう」と語った。Westergren氏は2月以来、タウンホールでの会合や親睦会を約25回開催しているが、この日の集まりはその中でも最新のものだ。

 「皆さんは、ありがたいことにわれわれのサービスを率先して受け入れてくれた。こうした会合には、サービスを使っている人に大きな感謝を伝える意味もある」(Westergren氏)

 この日の聴衆も、Westergren氏と同様の感情を抱いていた。

 オークランドから足を運んだBrendahさんは、「わたしはPandoraが大好き。今では自分のCDをかけなくなってしまったほどだ」と話した。Pandoraを運営する人たちに会ってみたいとの気持ちから、会合に参加したのだという。

 Pandoraの仕組みは、一見シンプルだ。会員は無料で、自分専用のラジオ局を最高100局まで作成できる。それぞれの局は、自分のお気に入りの曲やアーティストを指定すると、そのサウンドをもとに設定される--たとえば、The Beatlesの「Blackbird」や、より簡単に「Princeの曲」といった具合だ。ひとたびシステム内にアーティストや楽曲が見つかると、ラジオ局は数秒のうちにリズムやサウンドの似た音楽をインターネットを通じてストリーム配信する。ライセンスの制約があるため、Pandoraはリスナーが指定する特定の曲を配信することはない。

 新しい曲がかかるたびに、気に入った場合は「thumbs up」、気に入らなかった場合は「thumbs down」のアイコンをクリックすることで、以降の選曲の傾向を自分の好みに合わせて調節できる。また、曲のバリエーションを広げるために、新しい曲やアーティストを追加するようリクエストすることも可能だ。

 Pandoraには、ミュージック・アナリストと呼ばれる従業員が42名いる。その多くはミュージシャンで、音楽理論の素養があったり、正式な教育を受けたことのある人たちだ。アナリストたちは1曲につき20分から30分を費やしてその楽曲の「DNA」を記録する。Westergren氏によると、楽曲の約10%については、正確を期すため二重に記録を取ることにしているという。現在Pandoraは50万曲の「遺伝子」を保有しており、その数は毎月約1万曲ずつ増えている。

 シリコンバレーのIT起業家の多くと同じように、Westergren氏もスタンフォード大学で学んだ。しかし、同氏がほかの起業家と違うのは、10年間にわたり、Yellow Injunctionというバンドの一員としてツアーに参加した経験を持つ点だ。一時はツアーの移動に使うワゴン車に寝泊りする生活だったという。この10年の間にバンドは「有名になりかけ」たが、そこでWestergren氏は音楽ビジネスの明白な真実に気づいた。つまり、成功できるのはほんの一握りの人間にすぎないということだ。

 2005年にリリースされ、音楽市場調査会社のNielsen SoundScanに登録された新作CDは2万7000タイトルに及ぶが、そのうち売上高を計上したものは約5000タイトルにすぎない。

 そこで、Westergren氏は音楽の世界における中流階級的存在とでも呼ぶべき、なかなか光の当たらない楽曲を人々に紹介する方法を見つけなくてはならないという思いに駆られた。同氏は2000年、Savage Beast Technologiesという会社を設立し、Music Genome Projectに着手した。Music Genome Projectが、そして今ではPandoraが商用サービスとして目指しているのは、それぞれの楽曲について、構成やベースライン、リズムなど400もの属性を分析し、体系化することだ。分析された楽曲やミュージシャンは分類され、ラテン、ジャズ、カントリー、ロック、ゴスペルといったジャンルの垣根を越えて「同類の音楽」を見つけることも可能となる。

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