座右の銘は「原理原則」--教育の変革目指すトーマツイノベーション29歳・濱野さん

 この連載では、現在28歳の筆者が、同じく20代で活躍する大企業の若手社員と、同世代ならではの共通点や仕事への思い、さらには休日の過ごし方や好みの本など幅広いテーマについて語り合うことで、大企業や若手ビジネスパーソンの実態を明らかにしていきます。

 今回はトーマツイノベーションの濱野智成さん、現在29歳です。2007年にステーキハウスチェーンのアウトバック・ステーキハウス・ジャパンに入社。同社のマネージャを経て、2010年にトーマツイノベーションに転職しました。2013年4月に同社の東京支社長に就任し、現在は事業開発本部長を務めています。1月から提供している内定者向けのモバイルラーニングツール「モバイルナレッジ for freshers」(モバイルナレッジ)の総責任者でもあります。


トーマツイノベーション 事業開発本部長の濱野智成さん

ステーキハウスからコンサルティング企業へ転身

――まず、コンサルティングや教育業界を選んだ経緯を教えて下さい。

 少し話が長くなってしまうのですが、中学3年生の時に父親が経営していた会社が倒産したことがきっかけです。私は小さい頃から本気でプロ野球選手を目指していたのですが、親の会社が倒産したことでその夢が絶たれてしまい、家庭崩壊寸前になりました。その後は、高校にも行っているのか行っていないのか分からない状態になっていたのですが、自分はこの先どうしていきたいのかを考えた時に、経営者を支える仕事に就きたいと思ったんです。また、当時父親が弁護士の先生を頼っていたこともあり、自分も弁護士になりたいと思い大学への進学を決めました。

 大学に入る際にはいくつか有名校にも受かっていたのですが、なんせ貧乏でお金がなかったので特待生で入れる獨協大学に進学を決めました。ただ、学費はかからないのですが、もう家は出ていたので自分で生活費を稼がないといけない。そこで、アウトバック・ステーキハウス・ジャパンでアルバイトをすることにしたんです。大学2年生までは、弁護士になるための勉強とアルバイトを両立していたのですが、やはり弁護士になるためにはダブルスクールをしなければいけません。ただ、その分学費もかかりますし、働きながらだとどうしても勉強時間が削られてしまい、徐々に他の生徒との勉強量にも差が出てきてしまいました。

 このまま実家にも帰れないしどうしようと悩んでいた時、当時のアウトバック・ステーキハウス・ジャパンの社長に、なぜ弁護士になりたいのかを聞かれたんです。「自分と同じような家庭を作りたくないし、父親みたいな経営者の救いになりたい」と話したのですが、「別に弁護士でなくてもできるじゃないか、お前が本当にやりたいことは何だ」と、かなり深いところまで聞かれて。そこで「世の中を元気にしたい」と伝えたら、それならホスピタリティ(おもてなし)でもできるじゃないかと言われて、いろいろなキャリアプランを提示されました。ようは口説かれたんです(笑)。そこまで言うんだったらと、大学を3年生の時に辞めて、アウトバック・ステーキハウス・ジャパンに入社することにしました。

――学生時代から苦労をされてきたんですね。その後、アウトバック・ステーキハウス・ジャパンからトーマツイノベーションに転職したと。

 アウトバック・ステーキハウス・ジャパンにはマネージャとして入社して、仕事にもとてもやりがいを感じていたのですが、その一方で休みが平日なのでなかなか他の社会人の方と交流できないなど、産業の狭さを感じることもありました。また、1年間の短期プロジェクトでオーストラリアへ行って、現地の企業を訪問しながら外食産業について勉強させていただく機会があったのですが、客観的に日本をみながら改めて自分が何をしたいのか考えた時に、中小企業をターゲットにしたビジネスや、コンサルティング、教育という切り口で仕事をしていきたいと思いました。そして現地からそれらのテーマで検索したところ、たまたま見つかったのがトーマツイノベーションだったんです。

――そして、そのまま転職したんですね。他の企業は探さなかったんですか。

 大手のコンサルティング会社などからもお声がけをいただいていました。ただ、トーマツイノベーションのウェブサイトに載っていたこだわり、当時は「DNA」と書かれていましたが、これが18個ほどあって、そのひと言ひと言が私が外食産業でマネジメントをしていた時に大切にしていたこととすごくフィーリングが合って、「この会社だな」と直感的に感じたんです。なので、残念ながら他の会社はお断りさせていただき、トーマツイノベーションを選びました。

入社からわずか3年で東京支社長に

――なるほど。ただ、外食産業とコンサルティング・教育事業では、仕事内容がかなり異なりますよね。入社後はどのようなことをしてきたのでしょう。

 入社当時はすべてが刺激的で、最初はスーツを着ることにすら感動しました(笑)。ただ業種の違いで苦労することはなかったですね。仕事内容としては、新規開拓営業をゼロからスタートして、1日100~200件の電話営業をしていました。通常だと半期で18社と言われているところを約50社ほど受注いただいて、半年間で従来の受注記録をダブルスコア以上で塗り替えました。2年目からは営業チームとコンサルティングチームのグループリーダーを1年半ほど担当し、さらにグループリーダーをまとめる東京支社長を1年間務めました。

――いきなり高成績を叩きだしていますね。コンサルティングや教育事業が向いていたのかもしれませんね。

 もちろん向き不向きはあると思うのですが、どんな仕事でも本気で向き合えるかどうかが大切だと思います。私は後天説派なので、世の中で天才と言われている人たちは、初めから天才なのではなくて、人一倍努力をしているからそう呼ばれているのだと思っています。なので、人より2倍、3倍と経験していけば、勝手にそれなりの能力はついてくるのだと思います。

――耳が痛い話です……。ところで、ホワイトボードに書き出すのは職業病ですか。

 そうですね、弊社の行動指針でもあるのですが「ホワイトボード上手はコンサル上手」だと考えていて、基本的に書き出すようにしています(笑)。


事あるごとにホワイトボードを使って説明する濱野さん

――以前取材させていただいたモバイルナレッジのセミナーの際も、数十人の前でホワイトボードを使って説明されていましたが、登壇する機会は多いんですか。

 そうですね、年に100回以上はあります。一番多いのは管理職の方々に対してマネジメントのテクニックや考え方を研修することですね。あとは課題解決のセミナーや研修だったり。

――これまたすごい数ですね。登壇される際に気をつけていることやこだわりがあれば教えて下さい。

 顧客目線ですね。これは営業やサービス開発も同じだと思うのですが、顧客の期待を超えることが大事だと思っています。なので、まずセミナーや研修の際にお客様の期待値は何なのか、この時間に対して何を期待しているのかという仮説を立てて、その後に期待を超えるための手段を考えるようにしています。

内定者を即戦力化する「モバイルナレッジ」

――モバイルナレッジについて、改めてサービスが生まれた経緯を聞かせて下さい。

 研修の限界を感じていたことが背景にあります。リアルの研修だけでは、どうしても一過性で終わってしまうので、企業からもあまり効果を感じられないという声をいただいていました。そこで学びを自発性なものにしたり、効果の高いものにするにはどうしたらいいかと考えた時に、スマートフォンを使ったモバイルラーニングはすごく良いソリューションになると思ったんです。

 私は事業コンセプトを作る時に、Who(誰に)、What(何を)、How(どうやって)、Why(なぜ)という4つの切り口から深堀りするようにしているのですが、モバイルラーニングはあくまでもHow(どうやって)でしかないと思っています。じゃあ、誰のためになるのかと考えた時、それはスマートフォンの保有率が高い新入社員だと思いました。そこで、企業が新入社員に対して悩んでいることを調べたら、なかなか即戦力にならない、基本的なことを知らないといった課題を抱えていることが分かったんです。そこで、モバイルラーニングと反転学習を組み合わせたモバイルナレッジを提供することで、企業の課題を解決できると考えました。

 ※反転学習とは……従来の説明型の授業をオンライン教材化して自宅などで予習し、逆に教室ではこれまで宿題とされていた応用課題を対話的に学ぶことで、学習効果を高める授業形態のこと。


内定者向けのモバイルラーニングツール「モバイルナレッジ for freshers」

――実際にテストに参加した内定者からの評判も良かったそうですね。

 サービスやコンテンツについては、内定者やスマートフォン世代の意見は真摯に受け止めました。ただ、彼らの意見をそのまま鵜呑みにして具現化していくだけでは事業として成功させることは難しいと思います。先程もお話しましたが、常に顧客の期待を超えていくことが大事ですし、そこは我々の腕の見せどころだと思いますね。

――新卒入社の人たちは、私たちより5歳以上年下ですけど、彼らと接してみて感じたことはありましたか。

 まずネットリテラシーが違いますね。ほとんどの方がスマートフォンを持っていますし、アプリの操作にしても、マニュアルがなくてもスイスイ使えますよね。それとよく「最近の若者は」と言われますが、彼らと話してみるとすごくいろいろと考えていますし、野心も持っています。なので、これからの時代を支えていく若い世代に期待をしていきたいですし、社会としてもそうなってほしいですね。

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