スマートモバイルクラウドを加速する鍵は、セキュリティとソーシャル--NEC講演

 NEC執行役員・キャリアサービス事業本部長である山口昌信氏は5月30日、「ワイヤレスジャパン2012」にて「ビジネスを加速するモバイルクラウドサービス」と題した講演を行った。

  • NEC執行役員・キャリアサービス事業本部長の山口昌信氏

 調査会社のシードプランニングの予測では、モバイル・クラウドソリューションの国内市場規模は2016年に1.1兆円を超えるという。山口氏は、モバイル・クラウドが隆盛する背景として、あらゆる業務のICT化が拡大し、クラウドの適用拡大が求められてきたことを挙げる。加えて、ここ数年はクラウドの活用目的の重点に転換が見られるという。「従来、クラウドはICT投資のローコスト化とハイスピード化や、災害対策、電力不足対策の有効な手段として認識されていたが、企業のビジネスを支援するための必須のツールと価値が見直されつつある」と語る。

  • モバイルクラウドとは?

 また、クラウド全般の中でもシフトが進むのは“スマートモバイルクラウド”だ。いまや携帯電話をはじめ、電子メール、SNS、スケジュール管理、ウェブ閲覧機能など、オールインワンのビジネスツールに進化したスマートデバイス。国内出荷台数は2014年度には4860万台と推計される。急速に普及が進む一方で、ビジネスでの利用拡大には、マルチデバイスでのシームレスなサービスの提供とセキュリティリスクの解消、社内SNSなどソーシャルウェア利用によるコミュニケーションの活性化が必須条件とされてきた。そして、これらの課題をクリアにするソリューションとしてうまく結びついたのがクラウドだと山口氏は解説する。

スマートモバイルクラウドのビジネス利用を加速するカギとは

  • スマートモバイルクラウド

 山口氏によると、スマートモバイルクラウドのビジネス利用を加速するカギは“セキュリティ”と“ソーシャル”にあるという。そして、セキュリティ対策に必要なのは、ウイルス・マルウェア対策や盗難紛失対策などの「端末セキュリティ基盤」、不正アクセスやなりすまし対策の「ID認証基盤」、情報漏えい対策の「スマートデバイスシンクラ基盤」の3つ。加えて、ビジネスコミュニケーションの円滑化と活性化を図る「ソーシャルデータ活用基盤」が必要だとする。社内に流れるメールやSNSなどの各種情報を収集・分析して提供し、ビジネスの効率化を促進するための基盤だ。

 クラウドと連携したICTソリューションとしてもうひとつ注目されているのが“M2Mクラウド”だ。M2Mとは“Machine to Machine”を略したもので、ネットワークにつながれた機器・装置どうしが相互に情報交換し、遠隔でも直接データの収集と制御が可能なことから、経営判断のスピード化や業務効率化など経営課題を解決するソリューションとして導入が進んでいる。山口氏はM2Mクラウドが急速に普及が進む理由について「センサやワイヤレスデバイス、伝送コストなどシステムを構成する各要素が低コスト化し、需要と供給がマッチングした結果、多くの分野で実用領域になった」と分析する。

M2Mクラウドを利用するメリットは、付加価値の創造

  • M2Mクラウドの取り組み

 M2Mクラウドに対する取り組みとして、NECではデバイスからサービスまでワンストップ、かつクラウドで提供する“CONNEXIVE”を展開する。M2Mクラウドを利用するメリットは、ビジネスの早期立ち上げだけでなく、業種間のサービスの連携・融合による付加価値の創造が期待できるとする。例えば、位置情報や気象情報、渋滞情報といったデータ基盤を共有・横連携し、物流やビル管理、環境・エネルギー、防災などの各分野にまたがる新たなサービスを容易に実現することが可能だと説明する。

 一方、クラウドサービスの前提はネットワークの安定運用にある。ネットワークの主流はモバイルにシフトし、トラフィックが5年で約20倍という爆発的な増加を続けるなか、設備増強だけで安定的かつ経済的に収容可能なネットワークが維持できるかという課題に対し、「トラフィックコントロールの導入によるトラフィックの最適化で対処している」と山口氏。

 また、スマートフォンのトラフィックには2つの特有の課題があり、個々に応じた対応が必要と説く。瞬間的に増えるトラフィックと増え続けるトラフィックの総量の2つだ。山口氏によると、設備配備による対応は投資増加などの課題が残るため、それぞれ制御信号の抑制と平滑化と、トラフィック総量の最適化により対応すべきだと提言。NECが提供する、端末に送信される映像データを視聴される時間に同期し、分割して送信する“ビデオページング”と呼ばれる技術と圧縮によりトラフィック量を約30%削減するソリューションなどを紹介した。

 このほか、多様な課金サービスを提供する“マネタイゼーション”に対する取り組みも重要だと強調。海外キャリアの課金サービスの事例を挙げ、「今後は料金体系は従量制や多段階定額制に多様化していくだろう。月額利用限度額を超過した場合にオプションを購入すると即時に帯域を拡張するなど、ネットワークの安定的な利用環境の提供に必要な収入の確保のために、多様な課金サービスを提供していくべき」と語った。

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