Wearable Tech Expo 2015

クアルコムが見透す--ARとVRが作り出す次世代モバイルコンピュータのあり方

 9月7~8日開催のウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」。今年は、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)と仮想現実(VR)を軸としてテーマに基調講演やトークセッションが展開された。

 「モバイルのビジョンを超えて:ウェアラブルのためのARとVR活用」と題したセッションでは、クアルコムジャパンのビジネスデベロップマネジャーの李申氏より、拡張現実(AR)エンジンの「Vuforia」をもとにしたARテクノロジの先進事例やウェアラブルにおけるAR活用についての議論が展開された。

 チップメーカーとして知られているQualcommは、モバイルテクノロジに関する研究開発にも力をいれている。最近では、人工知能やIoTなどの領域にも積極的に投資している。ウェアラブル分野も将来の事業戦略にとって大きな位置付けだと見据えており、新たな研究開発に乗り出しているという。

李申氏
クアルコムジャパン ビジネスデベロップマネジャー 李申氏

 そうした考えのもとに生まれたのが、スマートフォン向けARアプリケーション開発プラットフォームのVuforiaだ。すでに、これまでにQualcommをもとにしたチップセットは日本のキャリアから販売されているモバイル端末のほとんどに搭載されているほど、モバイルに対する技術力は高く、Vuforiaもモバイルデバイスのために作られた新しいプラットフォームといえる。

 「Vuforiaでは、チップセットの性能向上により、ビジョンベースのさまざまな認識技術が搭載されている。文字認識や立体円柱認識、立方体認識、画像認識、マーカー認識、クラウド認識、ARのためのターゲット画像がカメラから外れてもARコンテンツが継続して実行される拡張トラッキングなど10もの認識技術が搭載している」(李氏)

 Vuforiaのソフトウェア開発キット(SDK)にはすでに5000人以上ものデベロッパーが登録。レゴの3DカタログやNASAの探査機のARなどにも使われており、日本での画像認識系のARアプリの多くにはVuforiaが採用されている。

 すでに2万以上ものアプリに使われており、アプリの総インストール数は2億を超えているという。Vuforiaを搭載したアプリがAWE(Augmented World Expo)でもベストARツールとして3年連続で採択されるなど、大手企業や有名ブランドでも使われている。

 「Vuforiaが活用される3つのシーンがある。1つ目が例えば車のカタログで画像をスキャンすると目の前に飛び出したりするような、インタラクティブをもとにしたユーザー体験を提供するもので、メーカーやマーケターなどに愛用されている。2つ目はショッピングにおいて買う前に3Dモデルで可視化したり、家具やテレビ、冷蔵庫などの家電を家のどこに配置するかをシミュレーションしたりといった、ショッピング体験のデザイン。3つ目はスマートグラスなどと掛けあわせた教育シーンでの利用だ。こうしたさまざまなシーンに最適な開発環境を提供している」(李氏)

 VuforiaのSDKはモバイルだけでなくデジタルアイウェアなどにも対応している。iOSやAndroidなどの複数のプラットフォームにも対応。また、ゲームエンジンのUnityにも対応済みだ。デベロッパー向けに理解しやすいAPIを提供して開発者の支援環境を整えている。

 近年では、大企業がARやVRのソフトウェアを開発している企業やスタートアップに対して積極的に投資する事例が増えてきた。Appleも2015年にAR開発のMetaioを買収し、本格的な参入への準備を進めている。

 Google Glassなどのデジタルアイウェアでも、OculusなどのVRへの注目が集まりつつあることで次世代のコンピュータプラットフォームとしての可能性を示し始めた。李氏は、ARとVRを合わせたミックスリアリティの可能性が今後の市場全体の大きな方向性の一つだと話す。

 「VRは次のメガテックテーマになりうる。素晴らしいアイウェアがあれば、もはや大きなスクリーンはいらない。リビングにいるだけでも最新の情報が手に入る。数時間カフェで過ごしても、ラップトップはいらない。アイウェアだけあれば目の前の机がバーチャルなキーボードになる時代がもうすぐ来る。それは、スマートフォンを置き換えるだけのポテンシャルがあり、次なるモバイルコンピュータの可能性を示している。そこにVuforiaは挑戦していく」(李氏)

 ARでは、ナビゲーションの新たな形をデザインできる可能性がある。ARに重要なのは、いかにして現実世界と融合した情報を提供できるためのユーザーインターフェース(UI)になるかだと李氏は話す。VRは現実世界にはない広がりとともにいかにして没入感を演出するかが重要となる。ARとVRのそれぞれの可能性をより引き出しながら、次世代のプラットフォームとして進化を続けるために開発していく、と李氏は話す。

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