Wearable Tech Expo 2015

エプソン、業務用ヘッドセット「BT-2000」で作業現場の“高齢化”を支える

 9月7~8日に開催されたウェアラブル、IoT、VRをテーマとしたカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」の2日目。エプソンは同社のスマートヘッドセット「MOVERIO Pro BT-2000」の開発経緯などを解説した。


MOVERIO Proを解説したエプソン販売の蟹沢啓明氏

新しいMOVERIOは高齢化社会に向けた支援策の1つに

 エプソンは、グラス型のウェアラブルデバイス「MOVERIO」シリーズを2011年から提供している。講演したエプソン販売の蟹沢氏は、「かつてのソニーウォークマンと同じように、映像を気軽に持ち歩いて、人々のライフスタイルを変えたい」という思いをコンセプトとしていたと説明。初代BT-100と現行のBT-200は、いずれもAndroid OSを搭載し、カラー画像を視界に表示するコンシューマ向け製品に位置付けていた。

 ところが新しいBT-2000は、一転、業務用デバイスとして発売することになる。これは、同社がコンシューマのエンタメ市場を軽視しているというよりも、「2060年には高齢化率が40%になってしまう」(同氏)という社会構造の問題が大きいからと言えるだろう。


作業現場での高齢化が進む

 同氏は、高齢化によって物作りの現場、作業現場も高齢化し、労働人口、果ては熟練工までもが減少してしまうという現状の課題を挙げる。日本の各業界ではこれに対して、「経験の浅い作業員の早期戦力化」や「外国人労働者の採用」、あるいはデジタル化によって製造業の変革を目指すドイツの「インダストリー4.0」に習ったIT化などを推し進めようとしているが、こうした取り組みを支援するためのデバイスとして、同社はBT-2000を売り込む狙いだ。

 業務用スマートヘッドセットであるBT-2000により現場作業員をIT武装し、「コンピューターやクラウドとつながることで作業現場を革新していく、その手助けをしたい」と同氏は語る。かつてオフィスでは、IT機器によるデジタル化によって手書き書類中心だったワークスタイルの変革を促したように、作業現場もウェアラブルによって変えていきたいと意気込む。たとえば、従来は大量の紙マニュアルを見ながら作業していたが、BT-2000を使うことで、目の前に電子マニュアルをビジュアル表示して効率的に作業することが可能になる。


スマートグラスのセグメント分け。MOVERIO Proは両眼で高解像度

 ここで同氏は、現在市場にある業務用スマートグラスのセグメント分けについて解説した。スマートグラスは、主に両眼(両目ディスプレイ)方式と単眼(片眼ディスプレイ)方式に分類され、使われる液晶パネルの解像度でさらに細かく分類される。単眼方式は、解像度が低ければ一般的に安価であり、軽量、小型化に向いている。もう一方のBT-2000をはじめとする両眼は、コストとしては若干高くなる傾向にあるものの、視認性の面で大きなアドバンテージがある。

 BT-2000は両眼方式で、かつ周囲の視界も確保できるシースルーのディスプレイを採用。960×540ドットと比較的高解像度なのが特徴で、4m先に64インチ相当の画面を表示できる。視認性はもとより、高い堅牢性、防水性、装着安定性を目指して開発したといい、従来のBT-100やBT-200シリーズのようなグラス型ではなく、頭部で固定するヘッドギアを備えたヘッドセット型としたのは、長時間装着した時の疲労度軽減を目的としたものだと強調した。


新しいMOVERIO Pro BT-2000

 こうした従来モデルからの大きな変化・進化は、従来モデルを流用して業務利用に向けた数々のトライアルを実施し、そこから得たフィードバックを開発に生かしたからだと同氏は話す。「作業の手を止めない」「作業効率向上」「永続的な業務効率化」という3点が特にフィードバックの中で多かった要素だとし、装着性の改善、視線移動をできるだけ発生させない仕組み、業務の改善活動をしていくための高精度な位置情報把握、といった性能や機能がとりわけ重要とされた。

  • さまざまな業界でトライアルを実施、フィードバックを開発に生かした

  • 業務利用に必要とされた3つのポイント

 これら数々の要望に対して、同社は他の製品づくりで培った最先端技術を4つ用いることで対応した。1つは小型のプロジェクタを実現するマイクロディスプレイ技術、1つは超微細加工技術「MEMS」によるジャイロセンサと加速度センサを用いた高精度センシング技術、もう1つは40ワードを認識可能な音声認識・音声コマンド技術、最後の1つは500万画素のステレオカメラだ。

  • マイクロディスプレイ技術

  • 高精度センシング技術

  • 高精度センシング技術により、位置情報などの誤差は劇的に低下した


音声認識・音声コマンド技術

 特に最後のステレオカメラについては、高精細な画像を作業者の手元から遠隔に届け、リモートからその映像を見ながら指示を出せるという点だけでなく、距離測定ができる点も大きな特徴の1つだとした。


測距も可能なステレオカメラを搭載

 同社の親会社は、時計の製造を中心事業とするセイコーエプソンであり、エプソン自体、セイコーの時計を作る工場から始まった会社であることから、「小さくする、省電力にする、精密にするといった要素技術は今までも必要とされてきた」と同氏。こうした基礎的な技術があったからこそ業務用スマートグラスを生み出すことができたといい、「最先端のコア技術が満載された業務用スマートグラスをうまく使うことによって、作業者のIT武装化を図り、作業現場の革新に貢献していきたい」と結んだ。

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