[NEO誕生]“元祖ベンチャー市場”の意地見せるJASDAQの挑戦 - (page 2)

島田昇(編集部)2007年11月08日 22時41分

 また、「これまでは株式公開をお待ちするという姿勢が強かったが、これからはわたしたちの方からいい企業を発見しに行くことにも力を入れていく」(同)としており、積極的に新興企業の成長を支援していく姿勢を打ち出すことで、マザーズやヘラクレスとの違いを訴えている。

賛否両論の市場関係者たち

 ただ、市場関係者の反応は芳しくない。

 当時、ナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)の立ち上げに携わったある人物は、「結局のところ、当時のナスダック・ジャパンがやろうとしていたことと大差ない。むしろ、流動性を高めるためにネット系も入れつつスギ薬局のような大きいところも入れるというようなやり方をしたナスダック・ジャパンの手法と比べて見劣りする」との見方を示す。

 また、某準大手証券会社の現場担当者も「正直、ユビキタスの上場承認で新市場が本当にできるという事実を知った。話を聞いてみても、成長性がキーワードのマザーズと比べ、イノベーションがキーワードというのは理解できない。本質的にはイノベーションを持って成長性を実現するわけだから、やはりマザーズとバッティングしてしまい、新市場を創設する理由が見当たらない」と手厳しい。

 その一方、「マイルストーン開示」の導入については肯定的な意見も聞こえてくる。技術開発型の新興企業においては、その技術を事業化するまでに時間がかかり、その実現までの計画を損益計算書上では表現しづらいケースもあるためだ。「今の会計制度の限界を補完する仕組みに発展する可能性も含めて注目している」(監査法人トーマツのパートナー、LSGシニアアドバイザー兼TMTグループシニアアドバイザーである北地達明氏)。

 しかし、開発に年月を要する企業はバイオ系のベンチャーなど限定的であるという見方もあり、特に現時点で上場が決まっている2社を含めたIT関連企業としてのメリットが感じづらいという課題は残る。

時価総額バブルを超えて

 長く株式市場の動向を見てきたある新聞記者は、「ライブドアショック」に端を発した新興市場の長期低迷を「これはネットバブルの崩壊ではなく、時価総額バブルの崩壊だった」と振り返る。

 前出の準大手証券担当者も「利益も大して出ていないのに時価総額が1000億円を超えるなどという事態は、本来であればありえない。正直、JASDAQ以下の新興市場は投資家に見向きもされないという中で、子供が大人と喧嘩をするときのように、いつの間にか“反則”をして時価総額を吊り上げるという流れが横行してしまった」と指摘している。

 株式分割などで流動性を高めようとした市場とこれを悪用した企業。その予備軍を送り込み続けてしまった証券会社と監査の行き届かなかった監査法人。投資家の信頼を損ねてしまった時価総額バブルの根っこには、市場関係者すべての責任が存在する。

 昨今、将来の日本経済発展に寄与しうる技術開発型ベンチャーの必要性が指摘されている。その実現に向け、「マイルストーン開示」などの一歩踏み込んだ仕組みを導入し、まだ“汚れていない新市場”が誕生したことは、「単純に喜ばしい」(北地氏)。

 今後、ジャスダック証券取引所は魅力的な企業の誘致を促しつつ、市場関係者にNEOの魅力を十二分に伝えていく営業努力が必要だ。その一方で、すべての市場関係者がこのまだ汚れていない新市場を大切に育てていこうとする意識も欠かせない。

 2007年度の決算が発表される2008年夏以降、市場関係者が「ライブドアショック」の反省をいかに受け止め、改善に務めてきたかの答えが見えてくる。市場関係者たちの暴走による虚像の創出は、二度と許されない。NEOに求められるのは、虚像ではない、真の技術開発型ベンチャーを育てる土壌作りだと言える。

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