ウィジェットをめぐる経済システム

文:David Hornik 翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、平本尚美2007年05月24日 15時21分

 スペインで開かれたChris Shipley氏がプロデューサーを務める「Innovate! Europe」カンファレンスでスピーチをして、今日帰りの飛行機に乗った私は、自分がまたしてもウィジェットのことをあれこれと考えているのに気づいた。ウィジェットの分野には、実に多彩な動きがある。最大のニュースはもちろんPhotobucketがMySpaceに売却されたことだが、その間にも、SlideとRockYouは「世界最大のウィジェット企業」の座をめぐって熾烈な戦いを繰り広げているし、新しいウィジェット企業や新しいウィジェットも毎週のように生まれている。このウェブサービスの世界は、Web 2.0の基盤としてFred Wilson氏が長い間支持してきたものであり、今も急速に進化し続けている。しかもその進化は、見ていると目が離せないほど興味深い。例えるなら、Will Wright氏の「Spore」で自分のキャラクターが進化する様子を観察するのと似たところがある。そう、何かが選択されると、相互作用や予想外の出来事が起き、ついには本質的ではっきりとした変化が生じるのだ。

 2007年の初めに開催されたDEMOカンファレンスの展示館のフロアを歩き回ってみて、「ウィジェットをめぐる経済システム」が突きつけている難題がかなり明確になった。私は展示館でたくさんの企業と話をしたが、中でもさまざまなウィジェットプロバイダーには特に引きつけられた。しかし、写真や動画の共有サービスや動画サービスといった最新世代のメディアプラットフォーム企業と話していて痛感したのは、今後それらの企業は、自社サービスのトラフィックの収益化という面で、深刻な問題に直面するだろうということだった。その問題とは、こうしたサービスが帰属する「ホスト」サービスとの、不安定な関係から生じる思いがけない結果だ。両者の関係が共生的であれば、その複合組織は大いに成長する。ところが、一方が他方に寄生する関係だと、宿主(ホスト)は将来的に自身を存続させるために寄生者を追い出す必要が生じるかもしれない。

 あるウィジェットとホストサービスとの関係が共生的か寄生的かを判断するには、数種類の要素について検討するのが妥当だ。その中で最も広く認められている要素は、もちろん収益化だ。もし、ウィジェットがホストサイトのトラフィック(たとえば、「Flickr」の写真が「MySpace」に掲示される場合など)から収益を得る手段をとっていないなら、そのウィジェットはニュートラルと考えてよいだろうし、ことによると、ホストサイトの機能性を無償で高めているという点で、共生的と見なしてもいいかもしれない。一方、もしウィジェットがホストサイトの閲覧者を利用して(たとえば、広告や商標入りのボイスメールなどで)収益を得ようとするものなら、ホストはそのウィジェットを寄生的と見なす可能性がある。このような関係はもちろん、特定のホストサービスに集まるユーザーの関心を収益化するということをめぐって、ゼロサムゲームが成り立つことを前提としたものだ。したがって、ユーザーの関心の一部をウィジェットが実際に収益化している場合、ホストはその分だけ収益を得る機会を失っていることになる。こうした見方をするホストサービスは相当数にのぼるのではないかと思うが(MySpaceやFacebookが示す反応はことごとくそうだ)、私の見解は違う。つまり、あるサービスにさまざまなウィジェットが貼り付けられた結果として、そのサービスの機能性が著しく向上しているなら(例えば、MySpaceのユーザーエクスペリエンスは、「Photobucket」と「YouTube」の機能によって初期の段階から大幅に向上した)、ウィジェットがもたらすユーザーエクスペリエンスは常に共生的であり、収益化の有無がどうあれ、トラフィックを利用した見返りとして機能性を高めたと主張してよいと思っている。

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