日本には7つの新興市場が存在。東証のマザーズ、大証のヘラクレス、名古屋証券取引所のセントレックス、札幌証券取引所のアンビシャス、福岡証券取引所のQボード、ジャスダックが2007年11月に創設したNEO、そしてジャスダックだ。
日本証券協会によるジャスダック株放出が具体化する前から、株式市場では「新興市場なんて1つか2つで十分」との指摘が多く、再編議論は底流していた。2006年1月のライブドア事件以降、株式市場の新興企業を見る目が厳しくなっており、その視線は上場基準が比較的緩い地方市場に集中した。
株式市場が一般的に「新興市場」と呼ぶのはジャスダック、マザーズ、ヘラクレスで、「新興3市場」と総称される。セントレックス、アンビシャス、Qボードの、いわゆる地方新興企業は上場企業が少なく、上場する銘柄の流動性も乏しい。加えてマザーズやジャスダックと比べて上場基準が緩いため、より若く、未熟な企業が上場しやすくなっている。
新興3市場に上場出来ず、仕方なく地方新興市場へ上場したと言われる企業は多い。地方新興市場のなかで最も上場企業の多いセントレックスでは、上場32銘柄のうち愛知県や岐阜県といった取引所の地元に本社を置く企業は、わずかに5社。上場直後に業績計画を大幅に下方修正する企業も続出している。
さまざまな問題を抱えたまま上場する企業が多く、市場では「地方の新興市場に上場しているという事実だけで買えない」といった声もある。さらに12月に入り、証券取引等監視委員会は金融庁に対し、名証に行政処分を出すよう勧告する方針を固めた。
つまり、注目を集める市場再編議論の渦中にある新興3市場のジャスダックとヘラクレスではなく、株式市場では地方新興市場の存在意義を問う声が以前から根強く、今なおその声は“別の角度からの再編議論”を見据えた指摘であるようにも映る。
ともあれ、もちろんながら渦中のジャスダックは単独経営の方針を強く打ち出している。今期、赤字転落の要因となった先行投資によりシステム面の弱さを補うほか、再編議論に反論するように新たな方針を相次ぎ打ち出している。
その筆頭が先端企業向けに創設した新市場NEO。新興市場ブームが去ったライブドア事件以降、しかも市場再編議論が浮上してきたなかでの新市場創設には、株式市場関係者の中で賛否両論だった。NEO創設の方針を示した8月以降、ジャスダックに上場していた英会話教室のNOVA問題が浮上してきたこともあり「新しい市場を創っている場合ではないのでは」といった指摘も多かった。
ただ、創設から間髪置かずに第一号案件であるユビキタスの上場が承認され、そのユビキタスが予想を上回るスタートとなったことで、市場の見る目は変わった。ここまで電子マネーのウェブマネー、再生医療のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと先端分野の3社が株式公開しており、今後も月1社程度のペースで上場させていく方針という。とりあえず、NEOは株式市場に受け入れられている。
また、12月に入りインドのムンバイ証券取引所との協業観測が浮上。インド企業のジャスダック市場への上場などを行い、新興国のなかでも株式市場の注目度が高いインドの証券取引所と組むことで、グローバル戦略にも着手する模様だ。
これら独自経営路線示すことで、単独経営継続を猛烈にアピールしているようにも感じる。
市場再編論争は12月27日に開催される、今年最後の日本証券業協会の定例会見でひとまず、結論を向かえることになる。大証へ株式を売却し統合するのか、それとも単独経営継続か――。
大証に売却する場合、単独経営継続を主張するジャスダック側の反発は必至で、市場では「現実的ではない」とみられている。一方、単独経営を継続する場合、日本証券業協会保有株の行方が不安定であるほか、ここまできて市場再編議論が振り出しに戻ることにもなる。
株式公開している大証株を除き、投資家にとってこの再編議論は直接的には関係のない話。株式市場は、それぞれの事情、思惑が錯綜する、この正解のない市場再編議論の答えを、静かに見守っている。
最も大きな影響を受けそうなのが現在上場している、もしくはこれから上場しようとしている新興企業たちだ。日本経済活性化のカギは、新興市場に上場している、もしくはこれから上場してくる若い企業が握っていると言っても過言ではない。どういった結論を導くにせよ、市場運営側の都合ではなく、新興企業の今後の成長支援が第一に考えられた着地点にたどり着けなければ、再編議論の前提にある新興市場のさらなる発展という命題は実現できない。
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